レクリエーション 中中編
十一時になり、米三合が配られた。
「これだけなんですか?」
「そうだが」
「あの、おかずとかは?」
「ない、欲しかったら自分たちで取るんだ」
妙にサバイバル要素を入れてくるのは何なんだ?
さすがに日本人でも米だけはキツイ、しょうがない食べれそうなのを探そう。
私は手温井さんと心ちゃんに事情を話した。
「ええ、お米しかないの? テントと言いなんか厳しくない」
すると心ちゃんが立ち上がる。
「どうしたの心?」
「ちょっと、お花摘みに行ってくる」
「わかった」
「どうする、手温井さん何か食べたいものとかある?」
「あるけど、全部ここにない奴だよ」
「じゃあ、無難に魚でも取る」
「そうだね、それしかないね」
心ちゃんが数十分で戻り、私たちは近くにある川に向かった。
当然他の生徒もおかずがないため食材を取りに川に来ている。
そしてどうしてこうなったのか、私の周りに食材を取った男たちが群がっていた。
アユ、イワナ、ヤマメ、ウナギを持っている男たちが差し出しながら私にひざまずく。
「どうぞアユです」
「僕はイワナです」
「僕は人間です、ヤマメを献上します」
「俺、ウナギさばけねぇからよ、お前にやるよ」
ウナギは普通に欲しいけど、私も捌けない、それにうる覚えだけど確か毒があったはず。
どうすれば。
私が葛藤している所に魚を一生懸命に取っている心ちゃんと手温井さんが映る。
心ちゃんが必死に魚を取りに行くが逃げられる、もう一度と取りに行きバランスを崩し川に倒れ込む。
それを支えようとした手温井さんが心ちゃんを支えるが耐えきれず二人して倒れてしまった。
心ちゃんを下に手温井さんが押し倒したようになっている。
二人は恥ずかしそうにしている、手温井さんが先に立ち下にいた心ちゃんに手を差し伸べ起こし。
楽しいのか二人で笑い合っている。
それを見て私は思い出した、手温井さんがテントの時に言った言葉を、きっぱり断ろう、まだ諦める時じゃない。
決して今すぐあそこに混ざりたいとか、魚を受け取ったら終わってしまうとかの理由じゃないから。
「ごめんなさい、私自分の力で成し遂げたいの」
固まっている男子どもを押しのけ川に向かった。
早く私も一緒に。
だが今の二人のいい雰囲気を壊す男子の一言が放たれた。
「読眼、話が違うじゃんか、食糧を渡せば、百合神様が喜ぶって」
その一言を皮切りに男たちが言葉を浴びせ始める。
「どうしてくれんだよ頑張ってイワナになったのに」
「そうだ、俺なんて兄貴に頼んで最高級のウナギを買ったんだぞ」
「俺は百合神さんの笑顔のため、先生方にばれないようマグロを買ったんだぞ」
それはバレるだろ。
「私はドリアン」
「私はシュールストレミング」
「ごめんなさい、百合神さんが喜んでくれると思って」
「僕はキャビアを」
「俺はフォアグラ」
「拙者はトリュ ドフゥ」
私は怒号の中にまぎれた、心ちゃんの言葉を聞き逃さなかった。
私のためにやってくれた、それを私は無下にして、それに加え心ちゃんが攻められている。
こんなことがあっていいわけがない。
「ごめんなさい、心ちゃんがやってくれたことだと気づかなかったの、全部いただくわ」
すべての食材を貰い、お礼に一人一人に握手をした。
普通なら顔目的で近づいてきた男の握手は嫌悪感しかわかないが、心ちゃんが私のために集めてきてくれた男と思うだけで少し幸福感が生まれた。
そう私のためにこんなに、私のため、私のため、私が好きで、私が大好きで、へへ。
ようやく気付いた、心ちゃんが私にあんな態度を取っていた理由を。
心ちゃんはツンデレなんだ。
食材を抱え、七往復し、テントに帰った。
「奈々子ちゃん本当に全部食べるの」
「うん、心ちゃんが私にくれたものだしね」
ドリアンもシュールストレミング臭く感じない。
すべてを食べつくし、心ちゃんの愛を全て受け止めることが出来た。
「ごめんなさい、百合神さんが喜ぶと思ったの」
「全然大丈夫だよ、めちゃくちゃ嬉しかったし」
本当にうれしい、こんなに幸せでいいんだろうか。
心ちゃん心ちゃん心ちゃん。
「気持ち悪い」(聞こえない)
心ちゃんは私をゴミを見るような目で何かをぼそっとつぶやいていた。
まぁツンデレの心ちゃんだから、ありがとう大好きみたいなことを言っていたのだろう。
「違げぇよ」(聞こえてほしいけど聞こえない)




