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11/21

マネジャーになった、追い出された

 放課後私は早速、野球部に体験入部する。


「来てくれたか百合神」


「はい、体験ですけど」


「それじゃあ、百合神はブルペンを担当してもらうよ、最初は覚えることが多いと思うけど安心して、カレンがついてるから」


「はい」


 つい大きい声を出してしまった。


 案内をしてくれている那九瑠先輩の後ろをついて行く、だが放課後那九瑠先輩を見に来ているファンの女の子たちが私を親の仇のように見てくる。


 断っても嫌われ、承諾しても嫌われる、私は嫌われる定めなのだろうか。


「ここがブルペンだよ」


 校庭の隅にある不自然な建築物、緑の芝生、茶色い土、緑の網。


 この不思議物件はこうなっていたのか、私は少し観察する。


「うおおおお、那九瑠の奴本当に連れてきやがった」


「やる気が出ますね」眼鏡スチャ


「俺の百六十六キロが火を噴くぜ」


「日本記録越してますよ」


 騒ぎを聞いたのかカレン先輩が奥から顔を出した。


 名前の通りカレンで美しい、見慣れたジャージもカレン先輩が着るとドレスのように見える。


「カレン、ちょうどよかった、体験入部の百合神だ」


「よろしくお願いします」


 カレン先輩から返事はない、屍なのか?


「おいカレン、挨拶は」


「ごめんなさい、少しボーとしてたわ、よろしくね百合神さん」


 顔を合わせたが、あまり好まれていないようで目が笑ってない、そして出ていけオーラを全開にしていた。


「それじゃあ、百合神に仕事教えてくれよ」


 那九瑠先輩は練習に戻っていた。


「あの、私は何をすればいいでしょうか?」


「まず、ドリンクを作って」


「はい」


 ポッカリスエットを作った。


「出来ました」


「それじゃあ次は、眼鏡と、ムキムキを見てなさい」

「休憩に入ったらドリンクとタオルを渡して、何かあったらアイシングを持って行って」


「はい」


 私はだるそうに投手達を観察する。


 なんか思ってたのと違う、もっとキャッキャウフフしながらやると思ってたけどすごい地味。


 私が嫌われてるからなのかな?


 だが投手達は奈々子がいることにより気合が入り絶好調のようだ。


 ボールが捕手のミットに轟音を響かせる。


「しゃー、今のは百六十六キロいただろ」


「残念、百五十五キロだ、でもキレは最高だったぞ」



「私のスライダー、変化量三パーセント更新です」


「そうか、あんま変わらない気がするが」


 つまらな過ぎた私は那九瑠先輩を見る。


 やはり綺麗なホーム、そこから放たれる速球、だと思うほど早いナックルカーブ、しかも変化量も大きい、素人の私でもすごいとわかる。


「おい、那九瑠記録百四十三キロ出てるぞ」


「そうか」


「おいもっと喜べよ」


「いや、もっと早くできる」


 五十球を投げ終え皆休憩に入る。


 ボーとしていたため私は出遅れる。


「おーい、百合神、こっちにドリンクとタオル持ってきてくれよ」


 しゃがみながら手を振る那九瑠先輩、そのそばにすでにカレン先輩がおりドリンクとタオルを差し出してた。


「あ、カレン、何突っ立ってんだ、名草(なぐさ)と林道(りんどう)に早く渡してやれよ」


 あれは最低だ、だがカレン先輩が黙って去ってしまっため、私が那九瑠先輩の元に行くしかなかった。


「ぷはー、いつもよりうまく感じる、元気出て来た、よし練習再開だ」


 私はまた定位置に戻り眺めていた、そしてカレン先輩に呼び出された。


 男子は入れないマネージャ室、カレン先輩と二人きり、何も起きないはずもなく。


 カレン先輩は私に壁ドンする、だが一切ドキドキしなかった。


「あんた、まじめにやってた?」


「やってませんでした」


「あんた、やる気はあるの」


「ありません」


「でしょうね、あんな態度で、早く出て行ってちょうだい、ここは本気の人が集まってるの、遊びじゃないの、人生をかけてる人もいるのよ、あんたみたいな中途半端な奴がいていい場所じゃない」

「私は那九瑠が中学の頃からサポートしてたの、あいつの野球やってる姿が好きで」

「それなのになんで、あいつはあんたを選ぶのよ」


 カレン先輩は涙を流していた、私が間違っていたんだ、浮ついた目的で来てしまった私が。


「わかりました、短い間でしたがお世話になりました」


 下を向きながら歩く、そして那九瑠先輩とぶつかってしまった。


「おい、マネージャの仕事はどうした?」


「やめました」


「早すぎだろ、もうちょっと続けろよ」


 私はここに何しに来たのか、ただカレン先輩を泣かせただけ……最後に一つだけカレン先輩のために。


「いえ、つまらな過ぎてやめただけです」

「ただボール投げてるだけで何が楽しいんですか?」

「無駄な時間でした、それではさようなら」


 ここまで言えばさすがに嫌われるだろ、那九瑠先輩のアイデンティティである野球を貶したんだから。


「お前、優しいんだな」


「は、なんですか」


「いや、なんでもない」


「それじゃあ二度と私に関わらないでください、最後にみじめたらしく私をその眼球に焼き付けてろ」


 私は学校を出た。


 これでよかった、努力した人が報われないのが一番悲しいことだから。

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