第23話『悪徳公爵の失脚と、国王陛下からの超破格のご褒美』
国政夜会の中央で泡を吹いて倒れ伏したロゼンジ公爵。
会場を覆う静寂を破ったのは、玉座から静かに立ち上がった人物――王国を統べる国王陛下その人であった。
「……見事だ、ヴァルハイト公爵夫人エレノア」
重厚な声が広間に響き渡る。
近衛兵たちがすぐさま踏み込み、失神したロゼンジ公爵とその一味を手錠で拘束して引きずっていく。
「我が国の癌細胞とも言える存在を、完璧な証拠とともに白日の下に晒してくれた。ロゼンジ公爵家は即刻改易とし、全財産を差し押さえる!」
「「「おおおっ……!!」」」
会場の貴族たちから、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
国王陛下は優しげな笑みを浮かべ、私の目の前まで歩み寄ると、堂々とした口調で告げた。
「国家の危機を救った最大級の功労者よ。エレノア、お前に望むままのご褒美を与えよう。金品でも、新たな領地でも、どのような爵位でもよい。望みを言ってみよ」
(ご、ご褒美……!?)
目の前にぶら下がった、国王陛下直々の「何でも願いが叶う券」。
会場の貴族たちが「凄まじい権力を手に入れるのでは」と息を呑んで見守る中、私は姿勢を正し、ハッキリと胸を張って答えた。
「国王陛下。私に対する最大のご褒美として……【今後一切、私を公的な役職や国家の仕事に勧誘・打診しないという「永久不介入の勅命」】を頂戴したく存じます!」
「「……は……????」」
国王陛下をはじめ、会場にいた全員がポカンと口を開ぐり、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「え……権力や金品ではなく……『仕事を頼むな』、というか……?」
「はい! 私は公爵領の離れで、美味しい紅茶を飲みながらのんびりお昼寝をする『平穏なニート生活』を何よりも愛しておりますので!」
堂々と「ニート宣言」を放つ私に、国王陛下は一瞬呆気にとられた後――
「ハハハハハ! 破格の功績を挙げながら、望むものが『平穏な休日』とは! 実に欲のない、天晴れな『数字の魔女』だ!」
と腹を抱えて大爆笑された。
「良いだろう! 約束する! 勅命をもって、お前には永久に一切の国家公務を免除し、ヴァルハイト公爵領での最高級の安寧を保障しよう!」
「感謝申し上げます、陛下!」
(やった―――!! ついに手に入れた!! 完全なる合法ニートの権利!! 前世の過労死から始まった私の人生、今日ここで完全勝利ですわーーー!!)
私が心の中でガッツポーズを決めていると、隣にいたヴィンセント様が、愛おしくてたまらないといった表情で私を横抱き(お姫様抱っこ)にした。
「きゃっ……!? だ、旦那様!?」
「見事だったよ、エレノア。君が何を望もうと、私はそれを全力で叶えると決めていた」
ヴィンセント様は会場の視線など一切気にせず、私の額に優しく口づけを落とした。
「さあ、邪魔な悪党も消え、陛下からの『お墨付き』も得た。……屋敷へ帰ろう。今日からは誰にも邪魔されず、君が呆れるほど二人きりで甘い時間を過ごそうじゃないか」
「~っ! 嬉しいですけれど、皆さんの前で抱きかかえるのは恥ずかしいですわー!」
顔を真っ赤にする私と、嬉しそうに私を抱きしめて歩き出す溺愛公爵。
会場には、二人を祝福する温かな笑い声と拍手がどこまでも響き渡るのだった――。




