第22話『王都の国政夜会(※悪徳公爵への爆速ガサ入れ開幕)』
王都の城内で開催された、年に一度の【国政夜会】。
会場には王国中の高位貴族や各国の大使が集い、絢爛豪華な雰囲気に包まれていた。
その中央で、とりわけ傲慢な態度で周囲の貴族たちを従えている男がいた。
――筆頭公爵、ロゼンジ公爵である。
「ハハハ! 我がロゼンジ公爵家が支える限り、この王国の財政も安泰ですな!」
勝ち誇った顔でワイングラスを傾けるロゼンジ公爵。
自分が裏で操っていた闇組織『ブラック・ウォール商会』が壊滅したことも知らず、自分に不都合な証拠などすべて消去したと高をくくっていた。
そこへ――静かに会場の扉が開いた。
「ヴァルハイト公爵閣下、ならびに同夫人、ご入場――!」
アテンダントの声とともに現れたのは、黒のシックかつ気品溢れるドレスに身を包んだ私と、軍服風の礼服を完璧に着こなしたヴィンセント様だった。
あまりの美しさと圧倒的なオーラに、会場の視線が一瞬で釘付けになる。
「……フン、破産寸前だった田舎公爵が、運良く小金を得て浮かれておるか」
ロゼンジ公爵は舌打ちをし、嫌味な笑みを浮かべて私たちへと近づいてきた。
「やあ、ヴァルハイト公爵。新事業が好調だそうだな? だが、調子に乗って王都の政界にまで顔を出すとは……分を弁えたまえよ」
「……分を弁える、ですか」
ヴィンセント様が冷ややかな視線を向け、低く澄んだ声で応じる。
「ロゼンジ公爵。分を弁えるべきなのは、国の血税と領民の財産を貪り食っていた……あなたの方ではないのですか?」
「なに……!?」
ロゼンジ公爵の顔が引きつる。
周囲の貴族たちがざわめき立つ中、私は優雅に一歩前へ進み出た。
「皆様、今夜の素晴らしいパーティの余興として……私からロゼンジ公爵へ【特別なプレゼント】をご用意いたしましたの」
私はパチンと指を鳴らした。
すると、控えていたアルフが、重厚な革張りのバインダーを国王陛下の御前、そして会場中央のテーブルへと運び入れた。
「な、なんだその不気味な書類は……!?」
「これは、ロゼンジ公爵家が過去15年間にわたり、暗黒街の『ブラック・ウォール商会』を経由して行っていた【巨額脱税および裏金洗浄の完全決算書】ですわ」
「「「な、なんだとーーーーっ!?!?」」」
会場全体に雷が落ちたかのような衝撃が走った。
「バ、バカなことをぬかすな! 根拠のない出鱈目だ! 警備兵、この不敬な女を捕らえ――」
「根拠? ええ、山ほどございますわ!」
私はバシッと資料の第一ページを開き、通りやすい声で凛と告げた。
「あなたがペーパーカンパニー『アルファ貿易』へ送金した架空のコンサルティング料、年間金貨80,000枚! そのお金がどこへ消えたか……複式簿記の『仕訳データ』と『銀行口座の突合(照合)』により、すべて解明いたしました!」
「ひっ……!? し、仕訳データ……!?」
聞き覚えのない会計用語と、完璧すぎる不正の金額に、ロゼンジ公爵の額から滝のような冷や汗が噴き出した。
「さらに! あなたが闇組織から吸い上げた違法金利の収益、累計金貨500,000枚! これらは一切申告されておらず、明確な【意図的な所得隠し(悪質な脱税)】にあたります!」
前世で国税局の査察部とともに悪徳企業を完封してきた私の『査察(ガサ入れ)ロジック』が、筆頭公爵の嘘を完璧に木端微塵へと打ち砕いていく!
「さあ、ロゼンジ公爵殿」
私は悪魔のように美しく眩しい笑みを浮かべ、追い打ちをかけた。
「我が国の法律に従い……脱税額の重加算税を含めた【金貨1,000,000枚の即時追徴課税】、ならびに全財産の差し押さえを受け入れていただきますわね?」
「ぐ、ぐはぁっ……!!??!?」
あまりの恐怖と完璧なファクトの前に、ロゼンジ公爵は泡を吹き、その場に崩れ落ちたのだった――!




