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第21話『押収された裏帳簿(※真の黒幕は、まさかの……!?)』

闇の金融組織『ブラック・ウォール商会』が一夜にして解体され、王都の地下街は静まり返っていた。


押収された大量の裏帳簿や不法証拠は、近衛騎士団によって公爵邸へと運び込まれ、私とヴィンセント様は執務室でそれらの解読にあたっていた。


「……ふむ。表面上はただの闇金融の見せかけて、資金の流れ(マネーフロー)が妙な場所へ集約されていますわね」


私はメガネを指でクイッと上げながら、複雑な裏帳簿の送金ルートをペンで辿っていった。


架空のペーパーカンパニーを何重にも経由し、資金が洗われている(マネーロンダリング)。

一見すると追跡不能に見える資金の暗号化。……だが、前世で数々の悪質企業の粉飾決算を解き明かしてきた私にとっては、ただの「初歩的なパズル」に過ぎない。


「送金手数料の端数処理と、決算期ごとの不自然な一括送金……。ふふ、尻尾を出しましたわね」


私が最終的な振込先の口座名義を特定した、その時だった。


「……エレノア、その顔は……黒幕が分かったのか?」


隣で心配そうに私の顔を覗き込んでいたヴィンセント様が尋ねてきた。


「ええ。我がヴァルハイト公爵家を破産寸前まで追い込み、闇組織を使って王国全体の経済を裏から支配しようとしていた『真の黒幕』……その正体が判明いたしましたわ」


私は指先で、一枚の羊皮紙をトンと叩いた。


そこにあったのは――王立貴族院の重鎮であり、国王陛下の側近でもある【ロゼンジ公爵】の名だった。


「なっ……ロゼンジ公爵だと……!?」


ヴィンセント様が息を呑んだ。


「王家にも深い繋がりを持つ筆頭公爵家だぞ……! 彼が裏社会のヤミ金組織と手を組み、我が家の旧側近を買収して莫大な借金を背負わせていたというのか!?」


「ええ。ロゼンジ公爵は、王国の主要な利権と貴族たちの弱み(裏債権)を闇組織に集めさせ、裏から王国全体を経済的に支配する【暗黒の国家構想】を描いていたのですわ」


「くそっ……! 王国の重鎮が、己の私腹を肥やすために国を害していたとは……!」


ヴィンセント様が激怒し、拳を強く握りしめた。

そして次の瞬間、彼は私の肩を両手で力強く抱き寄せると、真剣そのものの瞳で私を見つめてきた。


「エレノア。相手は筆頭公爵だ。国王陛下への影響力も強く、生半可な手出しをすればこちらが逆賊に仕立て上げられかねない。……危険すぎる。この件からは君を引かせ――」


「旦那様」


私はヴィンセント様の言葉を遮り、優雅に扇子を広げてクスリと笑った。


「何か勘違いをなさっていませんかしら? 相手が筆頭公爵だろうが何だろうが、やっておることは【脱税と不正会計と詐欺】ですのよ?」


「え……?」


「前世の会計士のプライドにかけて……そして何より、私の平穏なお昼寝時間を脅かす悪党を、見過ごすわけにはまいりませんわ!」


私の瞳にメラメラと灯る「悪役顔」の決意の炎を見て、ヴィンセント様は一瞬ポカンとした後――心底愛おしそうに破顔した。


「ハハッ……! そうだったな。君はそういう強くて格好いい女性だった」


ヴィンセント様は私の手に優しく口づけを落とすと、極上の甘い笑みを浮かべた。


「分かった、我が愛しき妻よ。ロゼンジ公爵の悪事を暴く戦い……私も全力で君を支えよう。ただし、危険な目にだけは絶対に遭わせないと約束する」


「ふふ、頼りにしていますわ、旦那様」


王国の頂点に君臨する悪徳公爵 vs 元・公認会計士ヒロイン。

国家の命運と、公爵夫妻の平穏な未来を賭けた最後のスカッと大バトルが、今まさに始まろうとしていた――!

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