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第20話『闇のオークション潜入! 違法金利を爆速論破』

王都の華やかな街並みの地下深く。

重厚な鉄扉の奥に広がっていたのは、黒装束の参加者たちが怪しげな笑みを浮かべる【闇のオークション会場】だった。


「エレノア、私の手から離れるなよ」


黒いフード付きローブで身を包んだヴィンセント様が、私の腰を抱き寄せるようにして護衛している。変装していても、その溢れ出る高貴な覇気と圧倒的なイケメンぶりは隠しきれていない。


「大丈夫ですわ、旦那様。……しかし、想像以上に悪趣味な空間ですこと」


会場の中央では、裏社会の金融シンジケート『ブラック・ウォール商会』の首領――首に太い金のチェーンを巻き、肥満体を揺らす男、ガボールが壇上に立っていた。


「ヘッヘッヘ! 皆様、ようこそお越しくださいました! 本日の目玉商品は……破産した貴族たちから没収した『莫大な債権と利権』でございます!」


ガボールは下品に笑いながら、壇上の羊皮紙を掲げた。


「例えばこちら! 東方の伯爵家から買い叩いた鉱山利権! 元金金貨1,000枚に対し、当商会の特別金利【トイチ(10日で1割)】を適用し、わずか半年で利息を含め金貨50,000枚の借金へと膨らみました! 払えない伯爵家からは鉱山を丸ごと差し押さえですギャハハ!」


会場に下品な歓声と笑い声が沸き起こる。


(……トイチ!? 10日で1割なんて、年利に換算したら【365%】を超える超絶違法な暴利(ヤミ金)ではありませんか!!)


前世で悪徳ヤミ金融の被害者を何度も救済してきた私の血が、フツフツと激しく煮えくり返る。


「さあ! 続いては……噂のヴァルハイト公爵家が過去に発行した秘密の裏債権だ! これを落札した者は、あの『数字の魔女』エレノアを借金奴隷として好き自由に指図できる権理が得られますぞ――」


「ちょっと待ちなさいな」


静まり返った会場に、凛とした通る声が響き渡った。


私がゆっくりとフードを脱ぎ捨て、優雅にステージ前へと歩み出ると、場内が騒然となった。


「なっ……お前は……ヴァルハイト公爵夫人、エレノア……!?」


ガボールが目を丸くする。


「ガボール殿とおっしゃいましたか? あまりにもお粗末な違法計算に、頭痛がしてまいりますわ」


「な、なんだと……!? 違法だと!?」


「ええ。王国出資法第28条『年利20%を超える金利契約はすべて無効とし、超過して支払われた利息は元本へ充当、もしくは全額返還しなければならない』……ご存じありませんの?」


私は胸元から、王立財務院および法務院の最新の【利息制限法・法定上限金利規定書】をバシッと突きつけた。


「あなたが伯爵家から騙し取った年利365%の借金など、法的効力は【ゼロ】! むしろ、これまで過払いさせた金貨30,000枚を今すぐ伯爵家へ返還する義務が発生しておりますわ!」


「「「な、なんだと……!?!?」」」


会場の闇貴族たちがザワつき始める。


「く、口出しかでたらめを吐くな小娘が! ここは裏社会だ! 王国の法律など通用するか! 力でお前を拘束して――」


「力、ですか?」


私の隣で、ヴィンセント様がバサッとフードを脱ぎ捨てた。

同時に、寒気がするほどの凄まじい「氷結」の殺気が会場全体を包み込む。


「私の妻に触れようとする者は、誰であろうとこの場で叩き斬る」


「ひっ……!? ヴ、ヴァルハイト公爵本人……!!??」


「さらに!」


私はガボールの逃げ道を塞ぐように、冷酷な笑みを浮かべて畳みかけた。


「あなたが裏で管理していた【二重帳簿】および【脱税口座の暗号データ】。先ほど我が家の元会計士のネットワークを使い、王立会計監察院と近衛騎士団へ『全データ転送』を完了いたしましたわ」


「なっ……!? な、なぜ非公開の地下金庫の暗号帳簿を……!?」


「複式簿記の『お金の流れ(送金ルート)』を追えば、サーバー……いえ、裏口座の場所など簡単に特定できますわ。あと3分で、この会場は近衛騎士団によって包囲されます」


「ひ、ひいいいいいいっ!!??!?」


ガボールは泡を吹いて倒れ込み、裏社会の闇貴族たちはパニックになって蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始めた。


「……ふぅ。本日も過払い金の請求とヤミ金撃退、無事完了ですわね」


私がパチンと扇子を閉じると、ヴィンセント様が後ろから愛おしそうに私を固く抱きしめてきた。


「見事だエレノア! 君は本当に凄まじいな……だが、危険な場所に飛び込むのはもう終わりだ。屋敷へ帰ったら、たっぷり私に甘えてもらうからな」


「ちょっと旦那様! 抱きしめる力が強すぎますわー!」


こうして、裏社会の巨大金融シンジケートは、エレノアのたった【5分】の法的・会計的論破によって一夜にして崩壊したのだった。


――しかし。


崩壊したガボールの金庫から押収された書類の中に、【王国の『ある高貴な人物』が裏社会と結託していた恐ろしい黒幕の証拠】が眠っていることを、二人はまだ知らなかった――!

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