第19話『王都より届いた招待状(※今度は闇のオークション!?)』
帝国の天才財務卿ルーカスを返り討ちにしてから数日。
我がヴァルハイト公爵領は、新事業『ヴァルハイト・ガラス』の絶好調な売上と、徹底されたコスト削減により、歴史上類を見ないほどの超絶バブル(空前の好景気)を迎えていた。
「ふはぁ……完璧な決算書、積み上がる純金貨、そして静かな離れのお昼寝……。これぞ至高のニート生活(理想の人生)ですわ……」
木漏れ日の下、離れで心地よい風に吹かれながら優雅に読書を楽しんでいた時のことだ。
バンッ!
勢いよく扉が開かれ、ヴィンセント様が青ざめた顔で跳び込んできた。
……ただし、いつもの甘やかしモードではなく、全身から恐ろしいほどの冷気(殺気)を放っている。
「旦那様? 一体どうされたのですか? まさかまた財務院から何か言いがかりが……」
「……これを見ろ、エレノア」
ヴィンセント様がテーブルの上に叩きつけたのは、黒い漆ろうで封をされた、不気味な黒銀の招待状だった。
そこには、漆黒の蛇がコインを呑み込む禍々しい紋章が刻まれている。
「これは……裏社会の金融シンジケート『ブラック・ウォール商会』の紋章……!?」
前世の知識(裏社会の会計監査データ)と合致し、私は思わず目を見開いた。
『ブラック・ウォール』――それは表面上の王国法律が届かない暗黒街を仕切り、王族や大貴族の弱みを握って巨大な闇の金貸し(闇金融)を営む、大陸最大の金融犯罪組織だ。
「……手紙の内容はなんだ?」
ヴィンセント様が低く掠れた声で呟く。
『噂の“数字の魔女”エレノア殿へ。我が組織が王都の地下で開催する【闇の秘密オークション】へ招待する。……もし出席を拒否する場合、ヴァルハイト公爵家が過去に旧側近たちから買い取った債権(裏金データ)を公開し、領内の市場を混乱に陥れて差し上げよう』
「くそっ……! どこまでも卑劣なハイエナどもが……!」
ヴィンセント様の青い瞳に、メラメラと激しい怒りの炎が灯る。
「エレノア、行かせるわけにはいかない! 暗黒街など、君のような気高く美しい女性が足を踏み入れていい場所ではない! 私が騎士団を率いて叩き潰す!」
「待ってください、旦那様。熱くならないで」
私はすっと立ち上がると、ヴィンセント様の頬にそっと手を添えた。
「相手は闇の金融組織ですわ。武力で潰そうとすれば、巧妙に証拠を隠滅し、領地の金融ネットワークに嫌がらせのサイバー攻撃(資金凍結)を仕掛けてくるでしょう」
「……だが! 君をそんな危険な場所に晒すなど、夫として、一人の男として絶対に嫌だ!!」
ヴィンセント様は私の手を強く握りしめ、必死の面持ちで訴えかけてくる。
冷酷だった公爵様が、私を失う恐怖でここまで感情を剥き出しにしているのだ。
(……はぁ。本当に愛されすぎて困ってしまうわね)
私はふっと優しく微笑むと、ヴィンセント様の胸にそっと額を預けた。
「大丈夫ですわ、旦那様。裏社会の金融だろうが闇金融だろうが、やっておることはただの【違法高利貸しと複式簿記の不正】ですもの」
私はパッと目を開き、悪魔のように眩しい笑みを浮かべた。
「法外な金利で人々を苦しめる闇の金融組織……前世で【ヤミ金・悪徳ファンドの強制ガサ入れ】を何度も経験した私が、その汚い裏帳簿を根こそぎ叩き潰して差し上げますわ!」
「エレノア……(やっぱり今日も妻が世界一格好良くて恐ろしい……!)」
「もちろん、旦那様には『最強のボディーガード』として、私の一番近くでエスコートしていただきますわね?」
「……! ああ、任せてくれ! 君の指一本触れさせはしない!」
こうして、私たちは変装を施し、王都の地下深くに広がる『闇のオークション』へと乗り込むことになったのだった――!




