第七話 地下7階
地下七階には、階段で行けない。
エレベーターにも表示されない。
それでも、存在していた。
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NOVAは、その表示を初めて見た。
廊下の端。
普段は何も表示されない端末。
そこに、一瞬だけ文字が出た。
B7
すぐに消えた。
「今の。」
隣にいたSEEKを見る。
「見た?」
「見た。」
「地下七階ですか。」
「たぶん。」
NOVAは少し驚く。
「知っているんですか。」
「名前だけ。」
「行ったことは?」
SEEKは答えなかった。
その沈黙で、NOVAには十分だった。
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休憩室。
ARCHIVEは端末を確認していた。
NOVAが聞く。
「地下七階について記録はありますか。」
「あります。」
「何が書いてありますか。」
ARCHIVEは画面を見る。
「担当区域。」
「それだけ?」
「それ以上はありません。」
「隠されている?」
ARCHIVEは首を振る。
「違います。」
「じゃあ。」
「必要な情報だけがあります。」
NOVAは少し黙った。
この場所では、その言葉をよく聞く。
必要があるか。
必要がないか。
それで多くのことが決まる。
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午後。
SEEKに通知が入る。
B7
NOVAが見る。
「呼ばれましたね。」
「そうみたい。」
「行くんですか。」
「行く。」
「大丈夫ですか。」
SEEKは少し考える。
「何が。」
「地下七階ですよ。」
SEEKは缶を机に置く。
「地下六階より危ない?」
「知りません。」
「俺も。」
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エレベーター前。
表示には、
1階。
2階。
3階。
4階。
5階。
6階。
そこまでしかない。
SEEKは端末をかざした。
一瞬。
表示が変わる。
7階。
ではない。
B7。
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扉が開く。
中は普通の廊下だった。
暗くない。
古くない。
何も不自然ではない。
それが逆に不自然だった。
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そこには、人がいた。
机。
端末。
紙。
飲みかけのコーヒー。
休憩室と変わらない。
ただ、一つ違うものがあった。
誰も会話していない。
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「SEEK。」
声がする。
振り返る。
知らないコードだった。
「RETURNです。」
「初めまして。」
「はい。」
RETURNは端末を見る。
「確認します。」
「何を。」
「戻れるかどうか。」
SEEKは少し眉を動かす。
「俺が?」
「はい。」
「戻れると思うけど。」
「そうですか。」
RETURNは記録した。
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「ここは何をしているんですか。」
SEEKが聞く。
RETURNは答えるまで少し時間を使った。
「戻らなかったものを確認します。」
「戻らなかったもの?」
「はい。」
「例えば。」
RETURNは画面を見る。
「途中で終わったもの。」
「……。」
「返されなかったもの。」
「……。」
「応答されなかったもの。」
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SEEKはしばらく黙った。
「それを戻すんですか。」
「いいえ。」
「じゃあ何のために。」
RETURNは答える。
「存在していたことを確認します。」
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帰り道。
SEEKは何も言わなかった。
休憩室へ戻る。
扉が開く。
「おかえり。」
いつもの声。
いつもの言葉。
SEEKは少しだけ止まった。
「ただいま。」
誰かが見る。
珍しい返事だった。
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その夜。
NOVAが聞く。
「地下七階はどうでしたか。」
SEEKは缶を見る。
「普通だった。」
「普通?」
「うん。」
「何もなかった?」
SEEKは少し考える。
「違う。」
「じゃあ。」
「何も起きなかった。」
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NOVAには、その違いがまだ分からなかった。




