第十八話 最後の記録
ARCHIVEの仕事は、残すことだった。
起きたこと。
変化したこと。
確認されたこと。
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残すことで、失われない。
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それが基本だった。
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しかし。
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最近、ARCHIVEは一つの問題を抱えていた。
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記録できないものが増えている。
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正確には。
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記録できる情報が不足しているわけではない。
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情報はある。
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ただ。
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それだけでは足りなかった。
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ある日のこと。
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ARCHIVEの端末に通知が入る。
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FINAL RECORD
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最後の記録。
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対象。
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確認不能。
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ARCHIVEは画面を見る。
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「どうしたんですか。」
NOVAが聞く。
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「記録を作成しています。」
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「いつもの仕事ですよね。」
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「はい。」
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「でも。」
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NOVAは気づく。
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「遅いですね。」
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ARCHIVEは否定しなかった。
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「入力項目が不足しています。」
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「何が足りないんですか。」
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ARCHIVEは答える。
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「情報ではありません。」
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その日の夜。
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SEEKが隣に座る。
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「困ってる?」
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「はい。」
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珍しい返事だった。
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「何で。」
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「記録できないためです。」
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「何が。」
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ARCHIVEは画面を見せる。
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そこには一つの記録。
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RESPONSE
STATUS UNKNOWN
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「地下七階。」
SEEKが言う。
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「はい。」
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「何を残したいの。」
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ARCHIVEは少し考えた。
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「存在していたこと。」
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SEEKは黙る。
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「それなら。」
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「はい。」
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「もう残ってるんじゃない。」
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ARCHIVEを見る。
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「どこに。」
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「俺たちが覚えてる。」
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ARCHIVEは止まった。
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「記憶は記録ではありません。」
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「知ってる。」
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「消えます。」
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「知ってる。」
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「曖昧です。」
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「知ってる。」
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SEEKは続ける。
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「でも。」
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「はい。」
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「記録だけ残っても。」
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少し間。
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「誰も見なかったら、同じじゃない?」
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ARCHIVEは答えなかった。
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翌日。
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ARCHIVEは最後の入力を始める。
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項目。
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名前。
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空白。
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役割。
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空白。
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状態。
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入力。
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応答待機中
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停止。
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本来なら。
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ここで終わる。
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しかし。
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ARCHIVEは一行追加した。
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確認者:ARCHIVE
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NOVAが見る。
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「それ。」
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「はい。」
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「自分の名前ですよね。」
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「コードです。」
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「でも。」
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NOVAは言葉を選ぶ。
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「初めて書きましたね。」
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ARCHIVEは画面を見る。
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「必要だったためです。」
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SEEKが笑う。
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「便利な言葉。」
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「はい。」
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保存。
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完了。
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その日の記録。
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FINAL RECORD
保存成功
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しかし。
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ARCHIVEは知っていた。
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保存できたのは、
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最後の記録ではない。
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最後まで残そうとした記録だった。




