第十六話 窓
休憩室には、窓がない。
そのことを疑問に思う者は、もうほとんどいなかった。
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NOVAを除いて。
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最初に気づいた時から。
ずっと少しだけ気になっていた。
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外を見るためのもの。
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それがない。
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ある日。
NOVAは壁の前に立っていた。
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「まだ気にしてる。」
後ろから声がする。
振り返る。
SEEK。
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「はい。」
「長いね。」
「気になります。」
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SEEKは隣に立つ。
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「前にも聞いたね。」
「はい。」
「答えた?」
「いいえ。」
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SEEKは笑う。
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「じゃあ今回も。」
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「分からないですか。」
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「うん。」
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NOVAは少し呆れる。
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「SEEKなのに。」
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「関係ある?」
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そのやり取りは、昔と同じだった。
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でも。
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NOVAは気づく。
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昔なら、この答えで終わっていた。
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今は違う。
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「でも。」
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NOVAが言う。
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「何かは見えているんですよね。」
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SEEKは少し黙った。
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「どうして。」
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「地下七階。」
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SEEKを見る。
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「あなた、戻ってきた時に言いました。」
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「何を。」
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「普通だったって。」
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SEEKは頷く。
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「でも。」
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「何も起きなかったって言いました。」
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少し間。
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「はい。」
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「その時、何を見たんですか。」
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SEEKは壁を見る。
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「記録されないもの。」
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「……。」
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「でも。」
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続ける。
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「見えなくても、なくなるわけじゃない。」
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その日。
FRAMEが来た。
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「確認します。」
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NOVAが聞く。
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「何を。」
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「窓について。」
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一瞬。
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NOVAとSEEKが顔を見る。
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「窓?」
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FRAMEは頷く。
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「以前、追加要求がありました。」
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「誰から。」
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「確認できません。」
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「追加されたんですか。」
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「いいえ。」
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「なぜ。」
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FRAMEは答える。
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「必要条件を満たしませんでした。」
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NOVAは聞く。
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「外を見る必要がないから?」
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FRAMEは少し間を置いた。
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「違います。」
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「違う?」
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「外がないからでもありません。」
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NOVAは黙る。
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「では。」
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「必要な方向が違ったためです。」
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夜。
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NOVAは休憩室を見る。
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窓はない。
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でも。
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誰かが帰ってくる。
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誰かが本を読む。
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誰かが記録を残す。
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誰かが壊れたものを直す。
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誰かが返事を待つ。
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外を見るための窓。
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それはない。
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代わりに。
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ここにいる者を見るための時間があった。
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翌日。
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休憩室の壁に、一瞬だけ表示が出た。
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WINDOW REQUEST
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NOVAが見る。
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すぐ消える。
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ARCHIVEが言う。
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「記録しました。」
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「何を。」
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「要求があったこと。」
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「そして?」
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ARCHIVEは答える。
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「不要ではなかったこと。」
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NOVAは少し笑った。
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「作られないのに。」
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「はい。」
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「必要なんですね。」
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「はい。」
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窓はなかった。
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でも。
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窓が必要だと思ったことだけは。
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残った。




