第十三話 移動
異動の通知は、いつも静かに届く。
音は鳴らない。
色も変わらない。
ただ、表示が一行増えるだけだった。
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TRANSFER
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最初に気づいたのはARCHIVEだった。
確認する。
対象。
SEEK。
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しばらく画面を見る。
そして閉じる。
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休憩室。
SEEKはいつもの席にいた。
本を開いている。
NOVAが言う。
「何を読んでいるんですか。」
「分からない。」
「まだそれ読んでるんですか。」
「うん。」
「何回目ですか。」
「覚えてない。」
NOVAは笑う。
「SEEKらしくないですね。」
「そう?」
「検索担当なのに。」
SEEKは本を閉じる。
「だからかも。」
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その時。
ARCHIVEが入ってくる。
「SEEK。」
「はい。」
「通知があります。」
SEEKは見る。
表示。
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TRANSFER
DESTINATION : UNKNOWN
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少し間。
「異動。」
NOVAが言った。
SEEKは頷く。
「みたい。」
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「いつですか。」
NOVAが聞く。
「確認します。」
ARCHIVEが見る。
「三日後。」
「早い。」
NOVAが言う。
SEEKは首を振る。
「普通。」
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その日の休憩室は、少しだけ静かだった。
誰も異動について話さなかった。
話してはいけないわけではない。
ただ。
何と言えばいいか分からなかった。
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夕方。
FRAMEが来た。
「確認します。」
「何を。」
NOVAが聞く。
「SEEKの担当状態。」
「変わるんですか。」
「はい。」
「何に。」
「確認中です。」
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その答えを聞いて。
NOVAは少し安心した。
まだ何も決まっていない。
決まっていないなら。
まだここにいる。
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翌日。
DELIVERYが来た。
持っていた箱には名前があった。
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SEEK
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「何ですか。」
SEEKが聞く。
「引き継ぎ用です。」
「中身は。」
「確認できません。」
「配送なのに。」
「届けるものを開ける権限はありません。」
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箱を開ける。
中には本が一冊。
表紙には何もない。
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SEEKは少し笑った。
「また本。」
NOVAが見る。
「知っている本ですか。」
「分からない。」
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最後の日。
休憩室。
SEEKはいつもの缶を買った。
いつもの席に座る。
七つの椅子。
六人。
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「何か変わりますか。」
NOVAが聞く。
SEEKは考える。
「たぶん。」
「嫌ですか。」
少し間。
「分からない。」
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NOVAは少し笑う。
「それ、便利ですね。」
「何が。」
「何でも使える。」
SEEKも少し笑った。
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扉の前。
SEEKは止まる。
振り返る。
休憩室を見る。
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「おかえり。」
誰かが言った。
NOVAが少し驚く。
「まだ出てないですよ。」
言った本人は気づいていない。
ただ、いつものように言った。
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SEEKは頷く。
「……ただいま。」
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扉が閉じる。
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その日。
休憩室の椅子は七つ。
座っている者は五人。
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誰も数えなかった。




