第十二話 欠番
ARCHIVEの仕事には、番号がある。
記録には順序が必要だから。
一つ目。
二つ目。
三つ目。
並べることで、後から探すことができる。
それは基本的な処理だった。
⸻
その日。
ARCHIVEは、一つの違和感を確認した。
番号が一つ抜けている。
⸻
0427
0428
0430
⸻
0429がない。
削除された記録ではない。
存在しない番号でもない。
ただ、ない。
⸻
ARCHIVEは確認する。
検索。
照合。
再確認。
結果は同じ。
⸻
該当なし
⸻
しばらく画面を見る。
普通なら、処理を終了する。
存在しないものは存在しない。
それで終わる。
しかし。
ARCHIVEは処理を終了しなかった。
⸻
「珍しいですね。」
SEEKが声をかける。
「何がですか。」
「止まってる。」
「確認中です。」
「何を。」
ARCHIVEは画面を見せる。
「欠番。」
SEEKが見る。
「ない番号。」
「はい。」
「じゃあ問題ないんじゃない。」
「そうかもしれません。」
「でも?」
ARCHIVEは少し間を置く。
「気になります。」
⸻
SEEKは少し驚いた。
「ARCHIVEが?」
「はい。」
「気になるって。」
「記録できません。」
「何が。」
「気になった理由が。」
⸻
その日の午後。
ARCHIVEは過去の記録を調べた。
0428の前。
0430の後。
関連する記録。
接続履歴。
すべて確認する。
⸻
何もない。
⸻
しかし。
一つだけ残っていた。
⸻
確認済み
⸻
誰かが確認した記録。
何を確認したのかは残っていない。
⸻
ARCHIVEはその記録を開いた。
そして閉じた。
⸻
NOVAが聞く。
「見つかりましたか。」
「いいえ。」
「じゃあ。」
NOVAは困った顔をする。
「何をしているんですか。」
ARCHIVEは答える。
「ありませんでした。」
「はい。」
「それを確認しました。」
⸻
NOVAは少し考える。
「それって。」
「はい。」
「記録できたんですか。」
⸻
ARCHIVEは黙った。
⸻
夜。
ARCHIVEは最後の処理を行う。
⸻
0429
欠番
⸻
入力する。
⸻
少し考える。
追記。
⸻
存在確認不可
⸻
保存。
⸻
翌日。
SEEKが端末を見る。
「追加したんだ。」
「はい。」
「ないものなのに。」
「ありません。」
「じゃあ。」
ARCHIVEは答える。
「ないという記録です。」
⸻
SEEKは少し笑った。
「それ、昔からできた?」
ARCHIVEは首を振る。
「分かりません。」
「分からない?」
「以前なら、不要と判断していました。」
「今は。」
ARCHIVEは画面を見る。
「必要でした。」
⸻
その日の夜。
休憩室。
七つの椅子。
六人。
⸻
NOVAは空席を見る。
「この椅子も。」
「何。」
「欠番みたいですね。」
⸻
誰も答えなかった。
⸻
少しして。
ARCHIVEが言った。
「違います。」
「違う?」
「椅子はあります。」
⸻
NOVAは椅子を見る。
⸻
「番号がないだけです。」




