↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/110

合同課程ロードマップ 

ここからいったん更新を1日一回 10時に戻させていただきます。

お読みいただいていることを励みに頑張っていきます。

――翌日、午前。

合同課程1年生の教室は、授業開始前のどこか落ち着かないざわめきに包まれていた。あちこちで数人ずつが集まり、小声で何事かを囁き合っている。


「昨日さ、森の外れで見たんだよ。あれ、絶対1年の誰かが狩りに行ってたって」

前方の席で、琉生(るい)が声を潜めながら身を乗り出していた。


「え、また? 最近多くないか?」

隣の悠真(ゆうま)が眉をひそめる。


「だって危険度1なら、今の俺たちでも十分行けるって話だし……」

朔太郎(さくたろう)が口を挟んだその時――。


――ガラリ。


小気味よい音を立てて教室の扉が開いた。

現れた教官の姿を認めた瞬間、それまで充満していた熱っぽい空気は文字通り一瞬で霧散し、静寂が教室を支配する。全員が弾かれたように自分の席へと戻っていった。


「……全員、席につけ」


教官は教壇に立つと、鋭い視線でゆっくりと教室を見回した。その重圧に耐えかねるように、数名の生徒が小さく肩をすくめる。


「どうやら、事前に配ったパンフレットだけでは不十分だったかもしれんな」

教官は低く、地響きのような声で切り出した。

「なにやら、勝手に森へ狩りに出かけている血気盛んなやつらもいるらしい」


ざわ……と、教室の空気が小さく揺れた。

琉生たちが「やっぱり誰か行ってたんだ」という顔で視線を交わし合う。

ミナトとランドは互いに目配せをした。その後、ランドは、誰が見ても「俺じゃないですよ」と言いたげな顔で前を凝視していた。その横で、リーンだけがいつも通り、ただ淡々と前を見つめている。


「勘違いするな。違反とは言わん。学園外での実戦経験自体は推奨されるべきものだ」

教官はそこで一度言葉を切り、全員を諭すようにゆっくりと告げた。

「だが――“順番”というものがある。この合同課程は、ただ目先の力をつけ、強くなるだけの場所ではない。……生き残り、“強くなり続けるための方法”を学ぶ場所だ」


強くなり続ける方法。その言葉の重みが、ずしりと胸に落ちてくる。


教官は教壇の机に、ドサリと分厚い紙束を置いた。

表紙には大きく、《合同課程:学生向け概要パンフレット(別紙E)》と印字されている。


「改めて説明しておこう。お前たちがこれから歩む合同課程というのは、概ね“こういう流れ”で進むことになる」


教官はその中から一枚の大きな用紙を取り出すと、背後の黒板へと迷いなく貼り付けた。


◇


黒板に貼られた大判の用紙を、教官は手のひらで無造作に叩いた。


「まず1年次。お前たちはまず、『成立に必要な基礎知識』を徹底的に叩き込まれる。魔術、武技、戦術、魔物、地形……必要なものは全部だ。頭の悪い奴から死ぬ。文字通り叩き込め」


悠真、おと、新の目が見開かれる。陽菜がふぃっと窓の外を見る。


(基礎は大事だな、うん)

ミナトは手を握り締めて前腕屈筋群を押さえる。


教官の冷徹な声が教室に響く。


「次に、体力づくりと基礎技術。走る、跳ぶ、殴る、避ける。小細工を弄する前に、まずは生き残るための強靭な身体を作ってもらう。……そして」


ガタッと音が鳴り、ランドが口を開ける。そして聞こえないほど小さな声でつぶやいた。

「やっぱ筋肉……」


「くすっ」

さやかがそれを拾って小さく吹く。


教官は一度言葉を切り、黒板のある一点を強く指差した。

「――5日間の森林サバイバルだ。4から5名で一班を編成し、最低限の装備だけで森の中で生活してもらう。これについては後で詳しく説明する」


森の中で5日間。その過酷な響きに、生徒たちの間からヒュッと息を呑む音が漏れた。ランドですら、ゴクリと唾を呑み込んでいる。陸斗が今度桜都(おと)の方をちらっと見る。その今度桜都(おと)は、ノートを書いている。はるなは、教官の方を見直した。


「それが終われば、何でもありの一対一トーナメント戦だ。武器あり、魔術あり、不意打ちあり。文字通り何でもありだ。お前たちの現在地をここで文字通り炙り出す」


しっ、ふぅという息が漏れる。


教官はそこで不敵な笑みを浮かべ、黒板のさらに先へと指を滑らせた。

「ここまでが1年次の『基礎』だ。そして、ここからが本番だ」


トン、と教官が黒板を指の背で叩く。


「合同戦。年次も性別も職業も種族も、一切関係ない。完全混合チームで戦ってもらう。これをもって、本当の意味での『真の合同課程開始』とする」


ミナトは息を飲み、はるなはミナト、レンをチラリとみる。


さらに教官の口から語られる言葉は、熱を帯びていく。

「そして2年次以降は――『五大大会』だ。W1C、Squad、霧中議、戦術技大会、魔術演武大会。己の力を世界に示したい者は挑め。ただし、相応の実力と推薦が必要だがな」


五大大会。その最高峰の舞台の名が告げられた瞬間、生徒たちの目は一斉に輝きを帯びた。

「W1C……最強決定戦」ランドがそうつぶやいたとたん、

「へぇ、誰が何やるんだろうねぇ」琉生がいい、「これが、世界」と新が続く。

「ん、部屋の風が熱い……」ニーコスがゆっくりと呟く。


夢を見る者、圧倒的なスケールに怯える者、反応は様々だったが、誰もがその熱量に圧倒されていた。

「さらに、合同開始後は随時『実戦』に出てもらう。危険度3から4の案件だ。ただの演習ではない。ここで『死なない戦い方』を骨の髄まで覚えてもらう。そして『任務』。街の困りごとを解決する。冒険者はただ戦うだけの存在ではない。社会を回すのも仕事だ」


「稼げるってことか!」

「死ななきゃな」

「ぶっとばしゃ勝だろ?」


生徒たちの目が輝く者、にやりと笑うモノ、息を吐くもの、各々好き勝手にしゃべりだす。

教官はパンフを閉じる。


(W1Cって能力発揮別の大会か、魔法・戦闘技術、うぉデュオ戦だと?

 はぁ……情報量多すぎるな、何だこの科目、産業興進目的か、理にかなっている、熱い……。

 何だと、軍略!!!うぉおおお!熱い、燃える。何でもありだなコレぇええ!)


「以上が、お前たちがこれから歩む合同課程の全体像だ。……勝手に森へ狩りに行くのも、まあ、若気の至りだ。止めはせん。だがな」


教官の鋭い視線が、今度は明確にミナト、ランド、さやかの席へと注がれた。

三人の肩が小さく跳ねる。


「行くなら上級生と一緒に行け。貪欲に学べ。そして――」


教官は厳かに、けれど確かな重みを持ってその言葉を口にした。


「必ず“戻れる形”を作れ。それが合同課程だ」


――戻れる形。

そのフレーズが鼓膜を震わせた瞬間、ミナトとリーンはちらりと目を合わせた。

リーンは、微かに目を見開いてミナトの方を見ていた。


昨日、中庭で彼女が言った不器用な反省会の言葉。自分たちの心の隙間を埋めてくれたあの言葉が、この過酷な学園で生き残るための、最大にして唯一の正解だったのだと。

理屈を超えた確信が、胸の中にすとんと落ちていくのをミナトは感じていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

以下は物語途中出てきたパンフレットです。読み飛ばしていただいても構いませんが

雰囲気を出したくて。載せさせていただきます。



────────────────────────────────────────────

冒険者協会立 第一冒険者養成校

合同課程:学生向け概要パンフレット(別紙E)

版:v1.0 発行:教務・認定室(合同課程運営局)

────────────────────────────────────────────


【本資料の位置づけ】

本パンフレットは、以下の公式文書の補助資料として配布する。

・「学校規程(要旨)/合同課程 設置趣旨/卒業認定要件」(本紙)

・「卒業認定(推薦)要項」(文書番号:合教務-卒認-01)

本資料は、学生向けに“合同課程の年間の流れ”を簡潔に示すものであり、正式な認定基準は上記文書に従う。


────────────────────────────────

■ 合同課程:年間ロードマップ(学生向け)

────────────────────────────────


【1】成立に必要な基礎知識の講義(1年次のみ)

◆目的:

魔術・武技・戦術・魔物学・地形学・地政学など「成立」に必要な基礎知識を習得する。

◆備考:

本講義は学校規程1)の目的「成立(回収・記録・封じ)」に直結する。


【2】体力づくり・技術向上訓練(1年次のみ)

◆目的:

生存に必要な基礎体力と基礎技術の習得。

◆備考:

本訓練は「実戦条件A(危険度4単独成立)」の前提能力となる。


【3】森林サバイバル(1年次のみ)

◆形式:4~5名一班 / 5日間

◆内容:

食料確保、寝床構築、魔物回避、地形判断、協力行動。

◆備考:

本演習は「統合条件B(導線・補給・医療・退路×術式)」の基礎となる。


【4】一対一トーナメント戦(1年次のみ)

◆形式:武器・魔術使用可 / 殺傷禁止

◆目的:

個人の限界と課題の把握。

◆備考:

本試験は「個の成立」の確認であり、卒業要件とは直接接続しない。


【5】合同戦(合同課程本格開始)

◆形式:

・年次・性別・職業・民族・種族を混ぜた完全合同チーム戦。

・木槌を用いた象徴破壊戦。

◆目的:

「預ける」「任せる」「支える」を学ぶ。

◆備考:

本演習は合同課程の設置趣旨(2)における“個の強さを社会が使える形に統合する”に該当する。


【6】五大大会への参加(2年次以降)

◆対象:

W1C / Squad / 霧中議 / 戦術技大会 / 魔術演武大会

◆備考:

・大会出場は卒業要件B/Cの達成証明に資する(学校規程5参照)。

・出場には所属機関(本校)の推薦が必要。


【7】実戦(危険度3~4)※合同開始後随時

◆内容:

魔物討伐、危険地帯調査、小規模護衛。

◆備考:

危険度4の単独成立は卒業要件Aの必須条件。


【8】任務(街の困りごと解決)※合同開始後随時

◆内容:

生活支援、復旧作業、依頼対応、トラブル解決。

◆備考:

社会条件C(通る言葉で説明し、合意形成まで成立)の実地訓練となる。


────────────────────────────────

■ 注意

・本パンフレットは概要であり、卒業認定は公式文書(本紙/卒認要項)に従う。

・合同課程は“速さの競争”ではなく、“成立の証明”である。

────────────────────────────────

設計と見比べて修正点があることに気づき、あ、これは生徒たちの反応の実装が漏れてる、と思い修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。