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積土成山:初めての盛り上がり 初めての許可証と、先輩の助言

だいぶ先まで書き溜めができたため本日は、20時10分も投稿いたします。

どうぞ1読、お楽しみください。※8月8日まで2回投稿を実施いたします。


あと2日……頑張ります


よろしければ感想やポイントなど頂けるととても励みになります。

学園都市ベイルスレイブの中央区。

高い吹き抜けの天井を持つ重厚な建物――その一角にある「冒険者協会・学園合同課程窓口」は、放課後という時間帯もあって、依頼や申請を行う学生たちで少し混み合っていた。


「はい、次。並んでくれ」


順番が回ってきて、さやかを先頭にミナト、ランド、リーンが受付の前に立つ。

窓口の担当官は、いかにも事務仕事に慣れきった様子の中年男性だった。提出した書類を受け取り、老眼鏡の奥の目を細める。


「四名、合同課程・初級狩猟の申請だな。……ふむ、監督教官の同伴はなし、か」


「はい。安全帯の外縁だけで、戻れる形(無理のない範囲)で動きます」


ミナトが、さやかの隣に立ち答えると、担当官はふむ、と鼻を鳴らした。


「風鳴りの風穴・外縁か。出現するのは小型魔物だけだが、油断するなよ。毎年、舐めてかかって痛い目を見る新米が後を絶たんからな」


「任せてください! ちょっと大人ごっこ、してきます!」


ランドがバキバキの体で無理やり胸を張って、元気よく答える。

担当官は呆れたように苦笑した。


「……まあ、初回はそんなもんだ。はい、これが許可証。絶対に日没前には戻ってくること。いいな?」


「やった! 許可が出た!」


さやかが弾んだ声で、ぱっと表情を明るくする。

リーンは、ミナトの隣まで来てその横顔を見て頷いた。


「……平和な範囲です。主様の肉体の疲労も、十分にコントロールできる範囲と判断します」


(危険度は低い、リーンも柔らかい。これはいけるな)

ミナトは小さく手を握りこんだ。


受付の奥にある職員用の扉から、一人の女性が歩いてくる。

その胸元には、合同課程の上級生を示すバッジが光っている。二年生の田中結菜。


「ちょっと待って、四人とも」


結菜先輩は、心配そうな、それでいて少しお節介を焼くのが楽しそうな様子でミナト達を呼び止めた。


「風鳴りの風穴・外縁がどういう場所か、ちゃんと知ってて申請したの? たとえば……そこにどういう魔物がいて、何が採取できるのか、とかさ」


「ベイルスレイブ近郊の迷宮については、一通りガイド本で確認はしています」


ミナトの用意された答えを聞いて、結菜はじっとミナトの顔を見た。そして、感心したように細い目を和らげる。


「そう、よく予習しているのね。優秀、優秀」


結菜は手元にあった、カラフルな付箋紙が何枚も飛び出したガイド本を器用に開き、該当のページを広げて見せた。


「風鳴りの風穴・外縁なら、特に注意が必要な魔物は、小型の『風霜鳥(ふうそうちょう)』と小型の『風穴獣(ふうけつじゅう)』。どちらも風属性ってガイドには載っているけれど……」


結菜はそこで言葉を区切り、小さく息を吐いた。


「これ、肝心な『攻撃の仕方』が書いていないのよね」


「攻撃の仕方、ですか?」


ミナトが問い返すと、ランドが横から「あはは」と笑いながら口を挟む。


「小型なんだし、攻撃される前に俺が突っ込んで殴っちゃえば一発解決じゃないすか?」


「ランドくん……昨日ので、すっかり脳まで筋肉信者になっちゃったね」


さやかが呆れ果てたように白い目を向けるが、ランドはどこ吹く風で笑う。


「昨日の教官の言葉、めちゃくちゃ心に刺さったんだよ! 筋肉は裏切らん!」


「はいはい。怪我して泣きべそかいても知らないからね……」


さやかが意地悪く囁くのをスルーして、俺は先輩に尋ねた。


「……まさか、見えない位置からの奇襲とか、そういう攻撃をしてくるんですか?」


「ううん、それはないわ」


結菜先輩は首を横に振った。


「だけどね、あいつら、とにかく勢いよく突っ込んでくるの。直線的なスピードが想像以上だから、距離感をしっかり見ておかないと、あっさり体当たりを食らって怪我することが多いのよ。特に『風穴獣(風)』の突進が曲者ね」


「なるほど。距離の確保が最優先、ですね」


「そ。それとね、外縁の岩陰には止血効果のある薬草(止血草)が自生していることがあるの。見つけたら絶対にむしって帰ってきなさい。保存が利くから、後々の魔法薬学の授業とかでそのまま使えてすごく役立つから。せっかく行くなら、タダで帰ってきたら損よ?」


(そうか、収集もできるんだ。嬉しいなこういうの。味方って感じがする。田中結菜先輩か)


「なるほど、実用的なアドバイスをありがとうございます。先輩」


ミナトは深く頭を下げる。それを見ていたランドもノリで頭を下げる。


「先輩、あざっす!むし むしって取ってきます!」


「ありがとうございます、先輩!」


さやかも慌てて綺麗に一礼した。リーンもまた、皆の動きに合わせるように、静かに、優雅に頭を下げる。


「ふーん……あなたたち、良い雰囲気ね」


結菜は、四人の様子を微笑ましそうに見つめ、ふんわり笑顔を浮かべた。


「気をつけて行ってらっしゃい。一年の頃の私より、ずっと落ち着いてて頼もしいわ」


「「「はい、ありがとうございます!」」」


四人で声を揃えてお礼を言い、冒険者協会の重い扉を押し開けて外へ出た。


外は、夕方前の柔らかな光に包まれていた。

ベイルスレイブの外縁へと続く道を、心地よい谷風が吹き抜けていく。昼間のまとわりつくような熱が一気に冷まされ、涼しい風が、これからの冒険を祝福するように四人の髪を揺らした。

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