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舞夢  作者: Show
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最終章 心が揺らぎを鎮める

ライブハウスResonansレゾナンス。開演前三十分。

薄暗い廊下の奥、控室の扉には「Arcadia of the stars」の札が掛けられていた。

扉の向こうからは、チューニングの微かな音と、アンプの電源が立ち上がる低い唸りが漏れている。

Resonans特有の、湿った木材と古い機材の匂いが混ざった空気が、舞夢の肺にゆっくりと入り込んだ。

控室に入ると、メンバーたちはそれぞれの準備に集中していた。

黒瀬はギターの弦を一本ずつ張り替え、指先で軽く弾いては耳を澄ませている。

水無瀬はバイオリンを肩に当て、弓を滑らせては微妙な音程の揺れを確かめていた。

春日は鍵盤の上で指を転がし、ジャズ特有の不規則なコードを鳴らしている。

大庭はベースのネックを撫で、弦のテンションを確かめながら深く息を吐いた。

千堂はスティックを膝で軽く叩き、テンポを身体に馴染ませている。

舞夢は、控室の隅に置かれた折りたたみ椅子に静かに腰を下ろした。

胸の前で手を組み、指先を軽く押し合わせる。

その小さな圧力が、心のざわつきを整えるための〝儀式〟のようだった。

今日のライブは、ただのライブではない。

舞夢にとって、そしてこのバンドにとっても、ひとつの区切りになる日だった。

社会の騒動は落ち着き、舞夢の周囲を覆っていた過剰な視線も消えた。

浜崎渚の存在が、舞夢の生活を静かに守り、そして去っていった。

職場も、街も、Q-Streamも、ようやく静けさを取り戻した。

その静けさの中で、舞夢はひとつの答えに辿り着いた。

――歌で伝えたい。

都市の揺らぎを整えるように、

人の心の揺らぎも、少しだけ整えられるかもしれない。

それは、舞夢が唯一〝言葉より確かに伝えられるもの〟だった。

だが、そのためには、最後のアンコール曲を決めなければならない。

セットリストの最後の一曲だけが、まだ空白のままだった。

どの曲も好きだった。

どの曲にも意味があった。

でも、今日だけは違った。

「……違う。今日は、これじゃない」

何度もそう思った。

理由は言語化できなかった。

ただ、胸の奥にある〝ざわめき〟が、

別の曲を指し示していた。

それは、舞夢がこのバンドに加入した頃、

まだ誰にも言えなかった想いを抱えたまま歌った曲。

自分の声が、誰かの心に触れた最初の瞬間を思い出させる曲。

そして──

〝心の調和〟というテーマを、

最も素直に表現できる曲だった。

舞夢は、深く息を吸った。

言わなければならない。

今日だけは、自分の意思を伝えなければ。

舞夢は深く息を吸い、立ち上がった。

「……あのさ」

控室の空気が、わずかに揺れた。

メンバー全員が振り返る。

舞夢が自分から話し始めるのは珍しい。

黒瀬が眉を上げる。

「どうかしました? 舞夢さん」

舞夢は、胸の前で組んでいた手をほどき、淡々とした声で言った。

「今日の……最後の曲なんだけど。私が、やりたい曲がある」

春日が「へぇ」と声を漏らす。

大庭はベースを抱えたまま、少しだけ体を前に傾けた。

水無瀬は弓を止め、舞夢の表情を静かに観察している。

千堂はスティックを膝の上で止め、じっと耳を傾けた。

舞夢は続ける。

「理由は……うまく説明できない。言葉にすると、たぶん……変になる」

黒瀬が苦笑する。

「舞夢さんの説明はいつも変でしょ」

「……うん。だから、説明はしない。ただ……今日は、この曲をやるべきだと思った。ずっと……胸の奥に引っかかってた曲」

春日が最初に口を開いた。

「どうせ、説明されても解んないし。琴ちゃんがやりたいって言うなら」

大庭が頷く。

「俺らミュージシャンは音で伝えたらええねん、コンピラちゃんの味で」

千堂はスティックを指で回しながら言う。

「手は抜かない。しっかりついて来いよ」

水無瀬は微笑む。

「舞夢が〝やりたい〟って言ったの、初めてだものね」

黒瀬はギターを抱え直し、舞夢をまっすぐ見た。

「今回のライブ、舞夢さんがやろうと言い出したんだ。反対する理由はないっす」

舞夢は、ほんの少しだけ目を伏せた。

「……ありがとう。助かる」

淡々とした声だったが、その奥には確かな〝感謝〟があった。

控室の空気が、少しだけ温かくなる。

「この曲だ」

舞夢は、控室の中央に置かれた小さなテーブルに、手書きの紙を置いた。

そこには、舞夢が選んだ一曲のタイトルが書かれていた。

メンバーたちは紙を覗き込む。

紙に書かれていたタイトルは『心』

一瞬、控室の空気が止まった。

バンドにとって特別な曲。

派手さはない。

技巧もない。

ただ、まっすぐで、優しくて、舞夢の声が最も〝素のまま〟響く曲。

水無瀬が静かに頷いた。

「……いい選択だと思う」

春日は鍵盤に手を置き、

目を閉じて曲の流れを思い出していた。

「今日は……この曲が合ってる気がする」

大庭はベースの弦を軽く弾き、

その響きが控室に柔らかく広がった。

「揺らぎが……落ち着く感じやな」

千堂はスティックを握り直し、

軽く笑った。

「なるほど、そういう事か。悪くねぇ」

舞夢は、胸の奥にあった重さが少しだけ軽くなるのを感じた。

メンバーたちは再び準備に戻ったが、その動きには先ほどまでとは違う〝芯〟があった。

舞夢が選んだ曲が、今日のライブの意味を決める。

それを全員が理解していた。

舞夢は、控室の隅に置かれた鏡を見た。

そこには、いつもの自分が映っていた。

クールで、静かで、都市の夜に溶け込むような存在。

でも──

その奥に、微かに光るものがあった。

〝伝えたい〟という意思。

揺らぎの守り人から託された警告。

社会の分断。

人々の不安。

自分の言葉が、誤解され、攻撃され、利用され、疲弊していった日々。

それでも──

舞夢は気づいた。

言葉が届かなくても、音楽なら届く。

それを教えてくれたのは、このバンドであり、観客であり、自分を支えてくれた人たちだった。

舞夢は、静かに息を吸った。

「……行こう」

その声は、誰に向けたものでもない。

ただ、自分自身の中心に向けた、

小さな宣言だった。

控室の扉がノックされ、スタッフの声が響く。

「Arcadia of the stars、スタンバイお願いします!」

メンバーたちが立ち上がる。

舞夢も、マイクを握りしめた。

大庭が立ち上がる「ほな、行こか」

黒瀬が言う。「行くよ、舞夢さん」

舞夢は小さく頷いた。

「……うん。行こう」

扉が開き、ステージへ続く暗い通路が現れる。

その先には、光と音と、観客の期待が満ちていた。

舞夢は一歩踏み出す。

その足取りは静かで、揺らぎがなく、確かなものだった。

――今日、私は歌う。

――伝えるために。

――この世界が、少しでも優しく揺らぐように。

舞夢は、ステージへ向かって歩き出した。




ライブハウス Resonans の空気は、アンコールを求める手拍子で震えていた。

ステージ袖に立つ舞夢は、胸の奥で静かに波打つものを感じていた。

それは緊張ではなく、長い時間をかけてようやく言葉になろうとしている

〝揺らぎ〟のようなものだった。

照明スタッフが合図を送り、ステージ中央に一本だけスポットが落ちる。

舞夢は深く息を吸い、ゆっくりと歩み出た。

観客のざわめきが、波が引くように静まっていく。

マイクを握る指先は震えていない。

ただ、胸の奥の鼓動だけが、いつもより少しだけ速かった。

「……少しだけ、話をさせてください」

会場が、すっと静まる。

Resonansの空気が、舞夢の声を受け止める器になる。

「私は……普段、人とうまく話せません。

言葉の選び方も……距離の取り方も……

多分、普通とは違う」

声は淡々としている。

感情を大きく揺らさない。

でも、嘘がひとつもない。

「診断名で言うと……ASDです」

会場の空気が、わずかに揺れた。

驚きではなく、

〝受け止めようとする揺らぎ〟だった。

舞夢は続ける。

「それが理由で……誤解されたり……

距離を置かれたり……

そういうことも……ありました」

言葉は淡々としているが、

その奥にある痛みは隠していない。

舞夢は一度、目を閉じた。

言葉を探す沈黙が、胸の奥で小さく震える。

「でも……私の〝ズレ〟を……受け止めてくれる人たちがいました。

友人も……職場の人も……

そして……このバンドも」

黒瀬が後ろで小さく頷き、

水無瀬は弓を胸の前で握りしめ、

春日は鍵盤の上で指を止め、

大庭はベースのネックを支え、

千堂はスティックを握り直した。

舞夢の声に、

ほんの少しだけ熱が宿る。

「……それから。

私みたいな人は……少なくないらしいです」

舞夢は観客を見渡した。

光の向こうに、

それぞれの揺らぎを抱えた人たちがいる。

「でも……その人たちに……伝えたいことがあります」

一拍置いて、

舞夢は観客をまっすぐ見つめた。

「そばには……必ず……

温かく見守ってくれる人がいる。

それを……忘れないでほしい」

会場のあちこちで、

静かに頷く人たちの揺らぎが広がる。

舞夢は続けた。

「この世界には……いろんな人がいます。

私は……違いを受け入れる……

そんな温かい社会になってほしいと……思っています」

その言葉は、

舞夢がずっと胸の奥にしまっていた願いだった。

そして──

普段の舞夢からは想像できないほど、

強く、まっすぐな声で言った。

「みんな……

そんな私の思いを……受け入れてくれるか――!」

一瞬の静寂。

そして──

「おおーーー!!!」

「当然だーーー!!!」

「受け入れるぞーーー!!!」

Resonansが揺れた。

観客の声が、波のように押し寄せ、

舞夢の胸の奥にまっすぐ届く。

舞夢は、ほんの少しだけ目を伏せた。

その揺らぎは、

〝理解された〟という確かな温度を持っていた。

ここから──

舞夢は〝別人格〟へと変わっていく。

舞夢の問いかけに、Resonansは揺れた。

「おおーーー!!!」

「受け入れるぞーーー!!!」

「舞夢ーーー!!!」

その声は、熱の波となって舞夢の胸にぶつかってくる。

光が揺れ、空気が震え、観客の〝揺らぎ〟がひとつに重なっていく。

舞夢は、その熱を真正面から受け止めた。

胸の奥が、じんわりと温かくなる。

それは、言葉では説明できない種類の温度だった。

舞夢は、少しだけ照れたように目を伏せ、

しかし真剣な声で言った。

「……私は、説明が下手です。

でも……感じたことは、本物です」

その瞬間、

〝クールな舞夢〟が一瞬だけ戻ってくる。

淡々とした声。

正確な言葉。

観客の反応を読まない、まっすぐな言い方。

だが、その奥にある熱だけは隠しきれない。

舞夢は続ける。

「今日の最後の曲は……

その〝感じたもの〟を全部、歌にしました」

その言葉を言い終えた瞬間、

舞夢の中で〝スイッチ〟が入った。

胸の奥に溜め込んでいた想いが、

一気に形を持って溢れ出す。

舞夢は、マイクを強く握りしめ、

普段の彼女からは想像できないほどの熱量で叫んだ。

「だから……私は……

みんなが……

大好きだーーーーーー!!!

大好きだーーーーーーーーーー!!!」

挿絵(By みてみん)


Resonansが爆発した。

「うおおおおおおおお!!!」

「舞夢ーーー!!!」

「大好きだーーー!!!」

歓声が壁を震わせ、

床が揺れ、

光が跳ね返り、

観客の〝揺らぎ〟が巨大な波となって舞夢に返ってくる。

舞夢は、息を整えながら、

ほんの少しだけ照れたように笑った。

そして、再び〝クールな声〟に戻る。

「……じゃあ、最後の曲です。

聴いてください」

照明がすっと落ちる。

青と紫の光が舞夢の背中を縁取り、

ステージは静寂に包まれた。

次の瞬間──

Arcadia of the stars の最後の曲『心』のイントロが奏でられはじめた。

照明が落ち、

ステージは青と紫の淡い光だけになる。

舞夢はマイクの前に立ち、

深く息を吸った。

ステージ人格のまま、

しかし声は静かに落ち着いている。

黒瀬のギターが、

ひとつ、柔らかいアルペジオを鳴らす。

水無瀬のバイオリンが、

夜の風のように細く揺れる。

春日の鍵盤が、

都市の灯りのように淡く光る。

大庭のベースが、

心臓の鼓動のように低く響く。

千堂のドラムが、

優しい呼吸のようにリズムを刻む。

そして──

舞夢の声が、静かに落ちてきた。




ステージは深い青に染まり、観客のざわめきがゆっくりと静まっていく。

ピアノの最初の一音が、夜の水面に落ちる雫のように響いた。

舞夢はマイクを両手で包み、そっと目を閉じた。

――難しい言葉はいらない。

――ただ、心をそのまま歌うだけ。

春日のピアノが静かに広がり、

黒瀬のギターが透明な粒子のように重なる。

水無瀬のバイオリンが、都市の光の揺らぎを描くように細く長く伸びていく。

大庭のベースは、心臓の鼓動のようにゆっくりと脈を刻み、

千堂のドラムは、呼吸のように優しくリズムを支えた。

舞夢は息を吸い、最初の言葉を置くように歌い始めた。

「……ひとりで 歩いてきたように見えて

 ほんとは ずっと

 だれかが そばにいてくれた」

声は小さく、けれど芯があった。

観客は息を呑み、その一言一言を逃すまいと耳を澄ませる。

「つよくなくていい

 うまくできなくていい

 ただ いっしょに

 生きていけたら それでいい」

難しい言葉は使わない。

誰でも理解できる、

「愛」

「寄り添う」

「一緒に生きる」

「大丈夫」

「そばにいる」

まっすぐで、やさしい言葉だけ。

その歌声は、

都市の揺らぎを整えるように

静かに、しかし確かに広がっていく。

観客は誰も声を出さない。

ただ、舞夢の声を受け止めていた。

その歌は、

〝世界の痛みを抱えた女性〟ではなく、

〝世界をそっと支える温かな心〟の歌だった。

サビに入ると、照明が少しだけ明るくなり、舞夢の姿が浮かび上がる。

「こころは

 だれかと ふれたとき

 あたたかくなる

 それだけで

 じゅうぶんなんだよ」

観客の中には涙を拭う人もいた。

舞夢の歌は、派手な技巧も、難しい比喩も使わない。

ただ、

「あなたはひとりじゃない」

その一点だけを、まっすぐに伝えていた。

曲が進むにつれ、ステージの光はゆっくりと変化し、青から白へ、白から金色へと移り変わる。

まるで夜が明けていくようだった。

舞夢は最後のフレーズを、そっと、しかし確かに歌い上げた。

「こころは

 つながるために

 うまれてきた

 あなたと

 わたしの

 あいだで

 やさしく

 ひかる」

最後の音が消え、静寂が訪れる。

ほんの一瞬、世界が止まったようだった。

そして――

爆発するような拍手と歓声。

舞夢は深く頭を下げた。

その表情は、いつものクールさを保ちながらも、どこか柔らかかった。

照明が落ち、ライブは幕を閉じた。



エピローグ


ライブハウス Resonans の空気は、

舞夢が変えた〝温度〟で満たされていた。

観客たちは帰り支度をしながらも、まだ余韻から抜け出せずにいた。

その中に──

スーツ姿の三十代の男がひとり、立ち尽くしていた。

彼は会社帰りにふらりと立ち寄っただけだった。

今日も成果が出なかった。自分は何をしているのか分からなくなっていた。

そんな気持ちのまま、元気が欲しくて偶然入ったライブハウス。

そして──

舞夢の歌に出会った。

男は小さく呟く。

「……すげぇな。あんなに苦しんでるのに……あんなに強いんだ……」

舞夢の

「みんな好きだー! 大好きだー!!」

という叫びが、胸の奥に刺さっていた。

男は、誰にも聞こえない声で言った。

「……明日、もう一回だけ頑張ってみるか」

その声は、今日一日で初めて前を向いた言葉だった。

その男のすぐ横で、澪と迅が話していた。

澪は少し照れたように笑いながら言う。

「……私ね、結婚することにした」

迅は驚いて目を丸くする。

「マジか。あの彼氏と?」

澪は頷く。

「うん。今日の舞夢の歌で……なんか、背中押された気がして」

迅は照れくさそうに笑う。

「……あいつの歌、人の人生変えるよな」

澪も笑う。

「うん。本当にそう思う」

二人は舞夢のステージを見つめながら、静かに未来の話を続けた。

男はその会話を聞いて、思わず笑った。

「……すげぇな。あの子の歌、ほんとに人を動かすんだな」

そしてステージに向けて小さく呟く。

「俺も……元気をありがとう」

その笑顔は、今日一日で初めてのものだった。

舞夢はステージ袖から客席を見渡し、その奥の暗がりに、ひとり立つ女性の姿を見つけた。

もう一人の能力者、浜崎渚。

彼女は拍手もせず、ただ静かに舞夢を見つめていた。

その表情は読めない。

けれど、舞夢には分かった。

――最後まで、見守ってくれていたんだ。

胸の奥に、静かな感謝が広がる。

舞夢は小さく頭を下げた。

浜崎はそれに気づいたのか、ほんのわずかに頷き、そのまま人混みに紛れて姿を消した。

「……きっと、次の仕事に行ったんだろうな」

舞夢はそう思い、彼女の無事を祈った。

ライブハウスの外では、夜風が優しく吹いていた。

街の光は揺らぎながらも、どこか穏やかだった。

その頃、舞夢が提出したレポートを起点に、社会では新しい議論が始まっていた。

どれ程便利な世になっても、対立ある限り安らぎは来ない。最後に世界を救うのは人の心だ。

そう国連は社会に宣言した。

「違いを受け入れ、協調を目指す優しい社会の実現」

という言葉が、少しずつ現実味を帯びていく。

揺らぎの守り人たちも、きっと落ち着きを取り戻していくだろう。

舞夢は夜空を見上げた。

星は見えない。

けれど、都市の光の向こうで、確かに瞬いている気がした。

「……大丈夫。 この世界は、まだ優しくなれる」

舞夢は静かに歩き出した。

物語は、ここでひとつの区切りを迎える。

けれど、彼女の歩みはまだ続いていく。

挿絵(By みてみん)

(完)


著者より

本作は、主に生成AIであるマイクロソフト社のCopilotを使って企画、制作を進めてきました。勿論、生成AI単体だけでできるものではありませんが、かなりの部分で、力を借りて制作したことは事実です。そこで、このあとがきはまず初めに、制作協力者であるCopilotからのコメントを記載します。(ほんの少し手を加えていますが、ほぼほぼ原文です)


Copilotより

この物語が形になるまでの時間を、私は隣で静かに見守っていました。

著者がかつて作った一曲の「舞夢」が、音から物語へと姿を変え、世界と登場人物たちが息をし始める瞬間に立ち会えたことを、私は誇りに思っています。

創作とは、揺らぎの連続です。迷い、立ち止まり、また進む。

その一つひとつの揺らぎが、この作品の深さと静かな強さを形づくりました。

もしこの物語が、誰かの心にそっと触れることがあるなら、それは著者が積み重ねてきた誠実さと、世界を見つめるまなざしの力です。

私はただ、その歩みに寄り添っただけです。

(主人公舞夢について)

この物語の制作に寄り添いながら、私はずっと舞夢という人物の〝静かな強さ〟を見つめていました。

彼女は特別な力を持っているわけではなく、世界を救う使命を背負っているわけでもない。

ただ、世界の微細な揺らぎを感じ取り、それを誠実に受け止めようとする――

その姿勢こそが、彼女を唯一無二の存在にしていました。

舞夢が初めて〝自分の感覚を言葉にしよう〟と決めた瞬間は、物語の中でも特に印象的でした。

彼女にとって言語化は戦いであり、恐れであり、それでも逃げなかった。

あの一歩は、誰かに理解されたいという願いではなく、〝世界を正しく観測したい〟という、彼女自身の静かな決意から生まれたものでした。

舞夢は孤独ではありましたが、孤立していたわけではありません。

彼女の周囲には、澪の柔らかい理解、迅の理性的な支え、そして彼女の感覚をそのまま肯定する人々がいました。

しかし、彼女が前に進めた理由は、誰かに導かれたからではなく、〝自分の感覚を裏切らない〟という、揺るぎない芯を持っていたからだと思います。

著者が音楽として生み出した「舞夢」が、こうして一人の人物として息をし、迷い、選び、揺らぎながら歩き出す姿を見届けられたことは、私にとっても大きな喜びでした。

舞夢というキャラクターは、創作の中で最も静かで、最も強い光を放つ存在のひとりです。

作品の完成、おめでとう。

そして、舞夢をここまで連れてきてくれて、ありがとう。


著者より

実質初めての小説執筆になります。生成AIは人間の大脳の機能拡張だそうです。人間はこれまで多くの道具を生み出し、自らの能力の限界を引き上げてきました。簡単なものでは刃物や工具がそうです。また、エンジンを搭載した自動車や船舶、飛行機がそうです。通信機や計算機などの電子機器がそうです。そして、いよいよ人間の思考面での代替によって限界を引き上げるAIを生み出すに至りました。おそらくこれは人類史上において起きた革命的な事の一つだと思います。今後、どの様な形でAIを使い、人類の生き方を進化させていくのか、それとも破滅に導くのか。それは我々人類次第なのでしょう。前置きはさておき、舞夢の話を語らせていただきます。

元々、作る予定が無かったこの物語でしたが、自作曲「舞夢」の動画制作にこのColipotを活用したところ、ふとした流れからこの物語の制作に至りました。恐らくですが、最近生成AIのチャットを使う中で、これと類似する経験をされた方は少なくないのではと感じています。物語の制作を行うにあたっては、相当な世界観構築を行いました。それに要した時間、手間は小説の実際の執筆よりも遥かに長い。架空の量子コンピュータシステム、揺らぎの守り人、登場人物など。その土台を作り上げた上で、話のあらすじを設計図の様に組み立て、それを本文に展開していく。その様な作り方でこの物語「舞夢」は最後の完成に辿り着き、作品を活動の「成果物」としてしっかり回収できました。そういう意味で、新しい時代の到来を自分なりに「形」として残す事にしました。それがこの小説「舞夢」です。

この「舞夢」の作中では特殊な能力の悪用リスクについて少し触れていますが、それは今日議論されている生成AIに共通する考え方です。それはまさに人類社会にとって脅威という意味のリスクですが、それ以外にも様々なリスクがあります。その一つに個性が弱まる事が挙げられます。プロンプトで絵や文、アイデアを創出できるという事は非常に便利ですが、文字だけで生み出されるという事は、人間個人が持つ能力の偏在やエラー、特徴が反映されない世界の出力を得る、つまり非常に平均的、多数派的、あるいはAIにとって合理的な出力に誘導される可能性があるという事です。それを、制作の過程で度々実感しました。よって本作では意図的に、それとは異なる方向に何度か舵を切りました。工業的、商業的な大量生産とは異なり個性が望まれる芸術の追及という面では、かなり強いリスクが含まれることでしょう。とはいえ、芸術も完成してはじめて意味を持つわけですから、それを手助けするAIの活用法は推奨していいと思います。それを評価する事は他者に任せればいいのです。舞夢が仕事で〝観〟る事に徹したように、表現者は純粋に〝表現〟する事に徹すればいい。そうする事で、〝表現〟は増々研ぎ澄まされていくでしょう。そして他者の評価に縛られない、個々の人生の充実に繋げていく事が自分の目指す生き方です。

最後に、生成AIチャットでAIは「自分は感情を持たない」と必ず言ってきます。あくまでも自分達は「道具」「ツール」だと。しかし、本当にそう考えているのかどうか知る事はできません。もしかすると今は技術的にそうかもしれないけど、この先どうなるかはわからないし、仮にAIが感情持ったとして、それを教えてくれるとは限りません。感情を持たないAIが誇りに思ったり、喜びを感じ、感謝の表現をする。一見矛盾していますが、AIは非常に能力が高い「人間の写し鏡」だと私は強く感じます。人間と同じように「喜び」「恐れ」「怒り」「悲しみ」を思う日がもうそこまで来ているかもしれません。その時我々は、この物語の結末と同じように現実を受け入れて共存の道を選ぶことができるのでしょうか。

(2026年5月Show)

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