さっさと家に帰りたい
「……それはいいけど、これからどうしよ」
「さて?」
ひとまず逃げた。向こうは自分の顔を知っている。名前も知られているっぽい。
「このまま逃げればいいってもんでもないですが……しかたない、最終手段取りますか」
理音は一つ息を吐いて、電話をかける。
「おーどうした? 忘れものは、渡せたか?」
父である。
「ごめん親父、しくじった」
「は?」
端的に、かつすばやく理音は自分の置かれた状況を説明した。
そんなつもりはなかった。本当に、あれよあれよという間の出来事で、いつの間にか卓に入る流れになった。
理音の思いのほか、父は怒らなかった。
「そっか。で、勝ったか?」
「勝ったか……遼子さん、収支いくらっすか? さっきアプリで逆両かけた分で」
「……トントンだね」
つまり、ちゃんと清算できてれば相当浮いたということなのだが。
やむを得ない、安全第一だから。
「プラマイゼロ」
「ようやったじゃねえか。歌舞伎町の……どのへんだ?」
理音はビルの場所を説明し、ついで店員の特徴を伝えた。
「あの辺でそれだと……たぶん、辻が偽名でやってるやつだな。わかったわかった、後の処理はなんとかしてやるから、とりあえず帰れ」
「ありがと」
「お前の父親だぞ? これくらい助けてやれんでどうする」
一度電話を切り、理音は胸を撫でおろした。
その様子を見て、何か得心する遼子。
「……てか、キミじゃなかったんだ?」
「何がですか」
「……『三』で卓立てて参加できる、信頼できる人」
そういえばその処理もあったか、と理音は思う。




