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「——愛知県、中京工業大学にて爆発を確認」
ノイズ混じりの声が続く。
「爆発地点は工学棟、共同研究区画付近。本日は休講措置のため、学生の在構は確認されていません」
——その言葉に、わずかに息を吐く。
だが、次の報告で、それは止まった。
「現場で安全確認に当たっていた警察官二名が巻き込まれました」
一拍の沈黙。
「……一名、死亡。もう一名は意識不明の重体」
久我の思考が、音もなく凍りつく。
そのとき、雪を蹴る音が近づいてくる。
「先輩!!!」
振り向くと、佐伯が顔色を変えて走ってきた。
「もしかして……」
「あぁ」
久我は短く答える。
「もしかしなくても——ここにもあるぞ」「爆弾」
こんなことは二人とももちろん初めてだが、平静さを保ち、できることをやるしかなかった。
まずは一般人の安全の確保。ここには学生がたくさんいる。
「佐伯!」
「はい」
「至急、避難指示を出すように職員に伝えろ。」
佐伯は強く頷く。
「ただしこの雪だ、パニックでも起きたら必ずけが人が出る。いっぺんに外に出すな。」
「了解!」
走り出しかけた佐伯が、ふと振り返る。
「先輩は?」
「俺は爆弾をさがす。」
「気を付けてください…」
「あぁ」
気になるのは、爆破予告のクリスマスのイヴのイヴという言葉。イヴですらないそのさらに前。もしかしたらこの予告は序章にすぎないかもしれない。なんて不吉なことを考えながら、やがて、体育館の重い扉を押し開ける。
きしむ音とともに、冷えた空気が流れ込んできた。
今の時間は講義がないらしい。
広い空間には、人影はまばらだった。
奥では、柔道着の学生が無言で組み合っている。
別のコートでは、竹刀が乾いた音を響かせていた。
さらにその向こう、バスケットボールが床を打つ規則的な音。
「金彩堂」の文字が背中で揺れる。
体育館にはジムが併設されていて、そこでベンチプレスを余裕の表情で上下に揺らしている学生がいた。特におかしなところはない。違う場所を探そうとしていた時、ダンベルの隣にひっそりと置いてある黒い箱に目が留まった。
「あれは…」
その時、丁度無線が鳴った。
「久我、神代だ。犯人から追加のメッセージが届いた。」




