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「——校内放送です。学生の皆さんは落ち着いて行動してください」
天井のスピーカーから、少し震えた声が流れる。
「現在、敷地内の安全確認を行っています。指示があるまで__」
そこで一瞬、ノイズが混ざった。
「……各教室で待機してください」
教室の空気が、わずかに揺れる。
教授は少し確認してくるから待つようにと言って講義室を去った。
「もしかして、爆破予告本物だったのかな?」
沙良と同じ講義を受けていた斎藤紬が言う。彼女は特別仲のいい間柄ではないが、大学内で出会ったら少し話はする、よっ友よりちょい上みたいな関係だ。
「そんなわけ、第一これまで爆破予告みたいなの届いて本物だったことないでしょ?」
「まあね、でもなんか講義中に放送まで入るとなんか怖いな」
すると後ろのほうでスマホを見ているギャルの人たちが騒ぎ始めた。
「とぅいーたー見た????マジやばくね??爆破予告が出てた愛知県の大学マジで爆発したって!!!」
「は?マジ?えぐすぎ!!」
「てか今の放送とか今朝の注意喚起ってもしかして…!!!」
「ここも爆発するんじゃねww」
「笑い事じゃないってぇ!ww」
一応この大学は国立でこの地域では一番良いといわれているが、なぜかこういうやつもいる。
後ろのギャルの話を聞いていた紬が泣きそうな顔で言った。
「私たち死ぬのかなぁ?」
沙良は何も答えられなかった。
——そのとき。
天井のスピーカーが、短くノイズを吐いた。
「……ッ」
誰かが小さく息をのむ。
さっきまでざわついていた教室が、一瞬で静まり返る。
「——緊急連絡です」
先ほどよりも、わずかに硬い声。
「構内に危険物が存在する可能性があります」
誰も、動かなかった。
「教員の指示に従い、速やかに避難を開始してください」
放送だけが、淡々と響く。
——避難。
言葉の意味は分かるのに、体が動かない。
そのとき、扉が勢いよく開いた。
「皆さん!」
さっき出ていった教授が、息を切らしながら戻ってくる。
「落ち着いて行動してください。順番に避難します」
教室の後ろの方で、誰かが立ち上がった。
それをきっかけに、椅子の軋む音が連鎖する。
「絶対に走らないでください!」
教授の声が、少しだけ強くなる。
ざわめきが広がり、教室はゆっくりと動き出した。
沙良は紬と一緒にそっと立ち上がった。




