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静爆  作者: ゆゆゆ
1/3

プロローグ&1,2

プロローグ

12月23日午前7時。雪の多さに身動きが取れず、大学まで行くのにいつも遅延をしているバスを待つ。早く冬休みになって、こんな雪の中まで大学に行かなくてよくなればいいのにと金彩堂大学2年生の白石沙良は思った。この大学はおかしい。クマが出現しても、大雪でも、まして爆破予告が来ていても休講にはならないのだ。夏はあんなにも暑かったのに。地球温暖化というものは自分が思っているよりも深刻な問題なのかもしれない。北極の氷が溶ける、などと言われても、自分と遠くで起こっていることは、やはり実感がなく他人ごとに思えるが、あの暑さや異常気象を身をもって感じると、やはり他人事では済まない気がする。そんなことを考えていると、大雪の中人間が詰まったバスが到着し、乗り込む。ぎちぎちに詰め込まれ、荒い運転のバスに揺られ、人間に押しつぶされながら、大学に向かう。


1 

「俺は世界を変える男になりたい。」

久我紘一は本気で世界を変えるつもりだった。子供のころ、とある紛争地域で暮らしていた。銃声が毎日響き渡り、爆発音が鳴り響く。ある日、まだ幼い妹と母が死んだ。何もできなかった自分だけが生き延びた。父は戦いに行って爆弾で吹っ飛んだらしい。おれはそれから日本人の男に保護され、必死に勉強し警察官になった。まずは小さい事件からでも、人々の平和を守りたい。そう心から思っていたからだ。最近また戦争が始まった。ニュースもよく耳にする。小学校が爆撃された、とか海峡が封鎖された、とか。権力があれば世界を混乱に落とし込むのは簡単なのか。俺はそんな世界を変えて平和を作りたい。しかし、突然警察署の電話が鳴り響いた。ワンコールで受話器を取る。

「はい、東雲警察署刑事課の久我です。」

「神代だ。全国の大学あてに爆破予告が届いた。東雲警察署の近くにある金彩堂大学のも出ている。至急向かってくれ。」

「了解…」

前にも爆破予告は一回あった。そのときは何事も起きず、何なら講義も通常通り行っていた。今回も大丈夫だろう。そう思いながら、後輩の佐伯結衣をつれて現場に向かった。

佐伯が運転しているパトカーで移動中、久我は神代から送られてきた爆破予告を確認する。

「クリスマスイヴのイヴ、

北海道、北嶺白夜大学。

宮城県、青葉城等文化大学。

石川県、金彩堂大学。

東京都、東都中央大学。

千葉県、湾岸情報大学。

愛知県、中京工業大学。

大阪府、なにわ経済大学。

京都府、洛星文化芸術大学。

福岡県、九州玄海医科大学。

以上9つの大学で爆弾が爆発します。

未来がある若者を狙います。

本日午前9時00分から23時59分までの間でランダムに起爆します。

以上です。」

いや多すぎだろ。そんなにいろいろな場所にバレずに仕掛けられるものなのか。もし仕掛けられているならば犯人は複数いる可能性が高い。動機は不明。大学の共通点も不明。仕掛けてある場所も…さて、どうしたものか。


ようやく大学に到着した満員のバスから降りた沙良は、雪で真っ白になった地面を踏みしめ、スマホを見ながら教室に向かう。すると一件のメールが届いた。大学からだった。嫌な予感が漂うが仕方なくメールを開く。

「学生・教職員各位

本日、本学の施設を爆破すると予告がありました。現在、敷地内の警備を強化しています。学生や職員の皆様は、注意していただくとともに、不審なものを発見した場合は、触らずに、下記電話番号までお知らせください。000-〇×▽◇-1234」

嫌な予感が的中した。それにまた、休講にはならない。

「普通に授業あんの…」一人ぼそっとつぶやく。

「もういっそのこと本当に爆発しちゃえばいいのに。」

そんな笑えない冗談をいいつつ、教室に向かう。どうやらみんな心配しているらしい。不安な表情をしている人が多い。かといって不安だからと帰宅し単位を落としても困る。文字通り命がけの講義を受ける羽目になりそうだ。SNSで確認してみると、どうやらうちの大学以外は休講になってキャンパスが立ち入り禁止になっているらしい。どうしようもないのでただ笑うしかなかった。午前8時30分。講義が始まった。

丁度その時久我と佐伯が大学に到着した。

「雪のせいでずいぶん時間かかっちまったな」

「一応サイレン鳴らして走ってきたんですけどねぇ」

佐伯が久我をなだめるように言った。

「私、職員の方とお話してきます。」

「おぅ。俺は少し怪しいとこ探してみる」

久我は雪で濡れたコートの裾を払いつつ、校舎前の広場を見渡した。久我は校舎の壁沿いを歩きながら、雪に埋もれかけた植え込みやベンチの下を確認していく。 もちろん、こんな短時間で何かを見つけられるとは思っていない。 だが、犯人の意図を読むためには、まず“空気”を知る必要があった。

――未来がある若者を狙います。

その一文が、頭の奥で何度も反響する。

「若者を狙う理由…復讐か、思想か、あるいは別の何かか。」

考えていてもどうしようもない。今できることをやるだけだ。本当に存在するのかわからない爆弾を探しながら、自分の心を落ち着かせる。きっと嘘の予告に決まっている。そのとき一本の無線が入った。

「愛知県で爆発が起こった。」

一瞬、時が止まった気がした。

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