45 救出
白狐の獣人族に関し、もう一つの職業があることを知った。彼女は娼婦なのだという。言葉の意味がわからなかった。魔界にはない職業だろうか。
娼婦とはなんだ? 尋ねてみた。ディーフィーは呆れ顔ながらも答えてくれた。
なぬぅーーーーーーーーーーーーーーーー!
そんな職業があったのか。魔界にはない。ありえない。だってオンナは怖いものだ。恋愛感情を向けられてもいないのに、体に手をつけようものなら、瞬殺されてしまう。そもそも魔界にカネなんて存在しない。だから体を売買するなんて発想はなかなか出てこない。
仮に貨幣経済が魔界に導入されたとしても、オンナを買おうとするオトコなんてほとんどいないだろう。カネを奪われて終わりだ。詐欺だとか騒いだところで、オンナに勝てやしないのだから。
ディーフィーと店を出た。長居しすぎた。すでに日は落ちていた。きょうはもうギルドに行けないし、ミーンミア探しもできない。
しかし一つ、ありがたい情報をディーフィーからもらうことができた。ギルドの場所を教えてもらったのだ。
近くの安宿に駆け込み、今夜の寝床を確保した。
白狐の獣人族のことを考えた。同じ獣人族のミーンミアと、どうしても重ね合わせてしまう。ミーンミアはリムネの屋敷に買われ、奴隷としては幸運だったと言えよう。もし買われた先があの店だったら……。ミーンミアも娼婦とかいう職業に?
なんだかモヤモヤしてきた。
腹立たしいし、許せないし、悔しいし、悲しいし、切ない。
オレの足は、ふたたびあの店に向かっていた。冷静な思考ではなかった。後先のことなど考える余裕がなかった。オレの頭には、ミーンミアの泣いている顔しか浮かんでこなかったのだ。
ランプの明かりがついている。今夜はまだ閉店していないようだ。
まだ店にいるだろうか。裏手に回った。建物を外側からのぼる。窓穴を見つけては中を確認。そっと忍び込む。人がいたら隠れ、通りすぎたら進んだ。
いた。白狐の子だ。
「あなたは誰ですか。あっ、思いだしました。あのときのお客様ですね。獣人族をご友人に持った……」
「よくわかったな」
「ニオイって不思議と記憶に残りやすいのです。それより、いけません。お客様がここにいらしては」
とんでもない嗅覚だな。
「助けにきてやったんだ。友人と同じ獣人族のアンタが、こんな酷いところで働かされてるなんて。オレは放っておけない」
「お帰りください」
な……なんでだよ。
「アンタ、解放されたくないのか」
「ここを出て生きていける自信はございません」
「オ、オレがなんとかする」
「具体的にはどのようにでしょうか?」
「それは……あとで考える」
「なんの計画もない思いつきですね。申しわけございませんが、信用できません」
「だけど、こんなところにいたら……」
「不自由はございません。寝床がございます。食事もさせていただいております。お客様がどのようなご提案をされましても、リスクを背負うことだけはしたくありません」
「何がリスクだ。何を言っている」
「お客様、お逃げください。そろそろ人が来ます。いまからお仕事がございます。あるお客様が一晩わたくしを買うこととなりました」
娼……。
「買われたのか」
「はい。目の前のお客様は買ってくださいませんでしたが、二つ隣のテーブルのお客様は、親切に一晩申し出てくださいました」
「…………」
「もしわたくしを連れだしてくださるというのでしたら、お店を通じてお申し出ください。一晩だけでしたら、喜んでお供いたします」
なんだよ……それ……。
ただ茫然とすることしかできなかった。
ガチャッとドアが開いた。
オレは窓の外へと飛び込んだ。
そのままウインドで宿に戻った。
翌朝、気分を切り替えてギルドに向かった。
場所はディーフィーから聞いていた。
立派なマハ・コーリシャスのギルドに入る。
本来、もっと早く来ていなければならなかった。ミーンミアは間に合っただろうか。一人で行かせたことは謝りたい。そして何よりも、無事かどうかが心配だ。
受付の前に立つ。
「ウルスロの町から来た。そこのギルドの代表として」
ギルドカードを見せる。
受付嬢は乱暴にサッと受けとった。
「代表? 確かに本物のカードですね」
ここで受付嬢がカードを二度見する。
「名前は……。えっ、ロフェイ!?」
何をそんなに驚いているのだ。
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