46 不愛想な受付嬢
受付嬢からカードを返してもらった。
「ウルスロ町のギルド代表って、すでに登録済みなのか」
「そのとおりですけど、タメ口はやめてくれませんか」
「そりゃ悪かった、です」
ミーンミアは無事に到着できた……。
そう考えていいんだよな?
「念のため教えてくれ。いや、ください。ウルスロの代表者を」
「どうしてわざわざ? 同じとこのギルドじゃないんですか?」
などといいつつも、台帳に記載された文字を読みあげてくれた。
「ミーンミアって名前ですが」
良かった! ひとまず安堵した。
ミーンミアはこの町にいるのだ。
「いま彼女はどこにいる、いますか」
「個人情報は知っていても答えられません。当然ですよね」
何が個人情報だよ!
「彼女とは同じギルドですが」
「理由になりません。でも……」
「教えてくれる気になりましたか」
受付嬢は気だるそうに首を左右させた。
「エキシビションマッチ、見にいってみたらどうですか。きょうもウルスロ町の代表者が出場するはずだったと思います」
ミーンミアが出場?
大丈夫なのか。殺されなきゃいいけど。
強烈な不安が襲ってきた。
「……駄目だ。勝てっこない」
エキシビションマッチに出場するのは、各町の代表者だ。ウルスロ町でいえば、熟練者戦で優勝するようなヤツが出てくるはずだ。
「どうして勝てっこないと? どの試合も圧勝してますけど」
馬鹿な。ミーンミアが圧勝ってどういうことだ。
「ほ、本当にミーンミアが試合で圧勝してきたんですか?」
「いいえ、その代人が出場してます」
「誰だ、そいつは」
うちのギルドにそんなヤツがいたのか。
「あんたと同じ名前の人ですけど」
「オレと同じ名前のヤツが試合に……?」
そういえば受付嬢、オレのカードを二度見してたっけ。
ロフェイって名前に驚いてたのは、このためだったか。
でもオレと同名のロフェイって何者なんだ?
とりあえず行ってみよう。おっとその前に。
行き違いなどがあるかもしれないから、念の為だ。
「伝言を頼みたい。もしミーンミアがここに来たら、オレの泊まってる宿を伝えてほしい……です」
宿名とその住所を伝えた。
ところが……。
「なんで受付がそんな仕事を引き受けなくちゃならないんです? 担当業務外ですけど」
オレはカウンターの上に、ペタッと銀貨一枚を置いた。
「これで頼む」
「一枚? 二枚がいいんですけど」
オレは舌打ちし、もう一枚乗せた。
そして競技場の場所を聞き、そこへと急いだ。
ミーンミア……やっと会える。
競技場に着いた。
ギルドカードを見せると、無料で観客席に入れてくれた。本来、かなりの高額らしい。ちょうど次の試合が始まるところだった。
出場者の片方は、なんとか町代表の重装剣士。もう片方は、なんちゃら町代表の地底魔人。白熱した試合だった。しかし時間切れ。勝敗は判定に持ち込まれた。
五人の審判団全員が、重装剣士を勝者に選んだ。
嘘だ! 確かにいい試合だったが、地底魔人の方が試合を有利に進めていたはずだ。勝ったのは地底魔人だろ? どうして誰も地底魔人を勝者としないんだ。
そっか。試合でも魔人は不利になるんだ……。
エキシビションマッチ、見る価値なんてないかもな。
アナウンスが聞こえてきた。
「次の第三試合は、アロハンセ村代表パンターソン選手とウルスロ町代表ロフェイ選手の試合……」
おっ、ちょうどいい。ウルスロ代表の試合か!
オレの名を騙るのはどんな野郎だ?
「……が予定されておりましたが、朝からお伝えしておりましたとおり、パンターソン選手の試合放棄のため、ロフェイ選手の不戦勝となります」
オレ、勝っちゃった。いや、違う。そいつの顔が見られねえ。ミーンミアにも会えねえよ。
観客たちの声が耳に入ってくる。
「またロフェイってヤツの試合が見られると思ったのによう」
「だよな。ああ、つまらん」
「ロフェイ……めちゃくちゃ強かったからなぁ」
「対戦相手が逃げだすのも、当然つっちゃ当然だよな」
そんなに強いヤツだったのか。
試合を見られないのが、なおさら残念だ。
競技場の関係者に、ギルドカードを差し出した。
ウルスロ代表者のことを尋ねてみる。
「あの二人なら今朝、ちゃんとここに来てたよ。でも対戦相手の辞退が決まると、早々に帰っていったなあ」
遅かったようだ……。
せっかくだから他の試合も見ていこうか。おっと、そんな暇はなかった。忘れていたことがある。アイツらにも会わなければならないんだ!
アイツらとは吸血魔人のことだ。
あの大ボラ吹きめ。ディーフィーの言った話とはまるで違ってたぞ。生きるために人間の命を奪う必要がある、ていうのは嘘だったじゃないか!
ヒト族と吸血魔人との衝突は、魔族にゃ関係ない。異種族同士で勝手にやれと言いたい。しかしオレのせいで殺戮が起きたとなると話は変わってくる。オレが一方を助けたばかりに、もう片方に多くの死者が出る、なんてことは許せない。
後悔している。鉄格子から逃してやるべきじゃなかった。無視するべきだった。放っておくべきだった。吸血魔人を助ける義理なんて、オレにはなかったんだからな。
くそっ。
アイツらのアジトをきちんと把握しているわけではない。しかし大まかな場所ならば、心当たりがないこともない。ということで、きのう会った場所の付近を歩き回ってみた。
「やっほー」
声をかけられた。
オレが見つけるより先に、見つけられたようだ。この少女はモアモアとかいう名前だったか。なんだか馴れ馴れしいヤツだな。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!
もし続きが気になるという方がいらっしゃいましたら、
【評価】と【ブックマーク】で応援をお願いいたします。
下の ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に変えてくださると、
最高にうれしいです。




