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21 もめごと


 おや、怒鳴り声?


 広い控え室の奥で、何やら騒ぎがあった。周囲の人々がオレに状況を話してくれた。もめているのは二人。片方は準決勝にあがったヴォルケ、もう片方は準々決勝で敗北したダノンというそうだ。


 へえ、ヴォルケってのは準決勝に出るのか。するとオレと対戦するヤツかもしれないな。


 しばらく周囲の者たちとともに、両者の口論を眺めることにした。


「おい、ヴォルケ。卑怯な手を使いやがって!!」

「俺に負けたからって騒ぐな。みっともないぞ」

「あれは一対一の勝負じゃなかった! 試合中、お前を手助けした者がいる」

「いい加減にしろ、ダノン。なんの証拠があるんだ」

「ハッキリ感じたんだ。異質な魔法を! お前の魔法ではないものだ」

「気のせいだろ。だいたいそんな思い込みが証拠になるかっ」


 勝者と敗者のトラブルか、くだらない。

 興味ないので、踵を返すことにした。


 ちょうどそのとき、ヴォルケがダノンを殴ろうとするのだった。

 しかしそのコブシは止まった。


「なんだ、お前は?」


 ヴォルケの手を掴んでいるのはヘスナートだった。

 おいおい、ヘスナート。いいのか? オレ知らないぞ。


 ヴォルケの取巻たちがヘスナートを囲む。

 ほーら、だから言わんこっちゃない。


 とにかくマズい状況となった。

 やれやれ。仲間に迷惑かけやがって。


 オレは急いでその中に割って入っていく。


 あとからリムネとミーンミアも続いた。彼女たちは連中に向かって、顔を凄ませているつもりのようだが……。こう言ってはなんだが、まったく迫力がない。


 少し遅れて、ダノンの仲間らしき者だちも駆けつけてきた。周りをぐるりと取り囲む。ヴォルケの取巻たちより圧倒的に数が多かった。


「覚えておけよ」


 ヴォルケは取巻とともにその場を去っていった。

 ダノンがオレたちに軽く頭をさげる。


「騒ぎで迷惑をかけてすまなかった。おやっ、キミのことは知ってるぞ。新人ながら準決勝に進出したんだったね。ならばヤツとの対戦時には気をつけた方がいい。きっと卑怯な手を使ってくるはずだ」


「わかった。忠告ありが……」


「あっ、いや。ヤツも新人が相手ならば、卑怯な手など使うまでもないだろう」


「ひとこと余計だっ」



 オレたちもその場を去った。


 ヘスナートが耳元で言う。


「熟練者戦の準決勝のことだけど、勝つつもりでいるのか」

「オレにゃ無理だと言いたいのか」

「そりゃ、ロフェイならば勝てるって言ってやりたい。だけど現実的には……」


 彼に笑顔を向ける。


「空中戦には慣れてきたんだぜ」

「そうか。ならばいいんだけど」


 空中戦に慣れてきたというのは嘘だった。

 だがギブアップのことは考えていなかった。

 このあと係員に呼ばれ、競技会場に行った。



 対戦相手は例のヴォルケだった。アイツとかぁ。


 もちろんヴォルケは熟練者だ。一方、こっちは新人。しかも空中戦は苦手だ。それにオレが習得してきた魔法は、ミニファイヤ、拡大魔法、ウインド、エアーブレイド……。この四つだけだ。勝てる要素なんてない。なのに不思議とワクワクしていた。


 いま正面に立つヴォルケと睨み合っている。


「お前が準決勝の相手だったとはな。まだ新人だというじゃないか。ああ、どうして俺がこんなヤツと競わにゃならんのだ。気分が悪い。さっさと帰れ」


「そこまで言うんなら、熟練者の戦い方、見せてくれないか」

「いいぜ、ぶっ殺してやる」


 オレは割りと熱くなっていた。

 しかし観衆はというと、冷めていたようだ。


「ああ、準決勝のこっちの試合は退屈だ」

「だよな。どうして熟練者と新人の対戦を見せられなきゃならないんだ」

「ヴォルケにゃ、試合をさっさと終わりにしてもらおうぜ」

「まったくだ。新人が勝てるわけないのに、戦う意味ってあるのか」


 クソっ、外野は勝手なことを言ってやがって!

 これはもう勝つしかなくなったぞ。




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