19 騒がしい練習場
新人戦に参加表明した。もちろん賞品目的だ。
翌日、朝早くからギルドに来ていた。ルーシャがギルド専用の練習場まで案内してくれるというからだ。
「おはよう、ロフェイ。こっちよ」
さっそくルーシャに連れられ、練習場へとやってきた。まだ日が昇ったばかりだというのに、すでに多くの冒険者の姿があった。きょうは大会当日なので、別に不思議でもないそうだ。ルーシャは案内を済ませると、仕事があるとのことで帰っていった。
ズドーーーーン
何やら凄まじい音が聞こえた。多くの人が集まっている。オレもそっちに行ってみた。周囲の冒険者たちがガヤガヤ言っている。
「アイツ誰だ。いいメガファイヤ打ってるな」
「見慣れない顔だろ? まだ新人だとよ」
「え? 新人なのにメガファイヤを取得したのか!」
「そうらしい。きっと天才なんだろう」
「きょうの新人戦に出場するらしいぜ」
「んじゃ、優勝はそいつで間違いナシだな」
なんと! この新人戦にメガファイヤの使い手も出るのか。少し不安になってきた。オレの金貨十枚……大丈夫だろうか。
ズドーーーーン
ズドーーーーン
なおも派手なメガファイヤを続けているようだが、いったいどんな新人冒険者なんだ? 群衆を掻き分け、顔を見てみた。
あああああああああああっ!
なんという偶然。知っているヤツだった。きのうレストランで会っていたのだ。ミーンミアを侮辱した野郎じゃないか!
アイツだったか。まさか新人戦に参加してたとはな。いいね、面白いじゃん。もしオレと対戦になったら、ボコボコにしてやるぜ。
どこからか、オレを呼ぶ声。
「あれっ、ロフェイも来てたの?」
リムネだった。ミーンミアとヘスナートもいっしょにいる。
「森じゃ悪かったな。はぐれた後、なかなか帰ることもできず、心配かけた」
「ううん、ミーンミアを無事に町まで送ってくれたことに、感謝してるわ」
「逆だ。オレ、急流でミーンミアに助けられたんだ」
オレはミーンミアの手を引いた。小声で話す。
「金貨十枚のこと、リムネに言ってないだろうな」
「ちゃんと約束は守ってます」
怪訝そうな顔のリムネ。
「ちょっとなんの内緒話よ」
「いや、なんでもない」
「怪しいわねぇ……」
いまメガファイヤを打っている男について、ミーンミアが軽いケガをさせたことや、金貨十枚を要求されていることは、口が裂けてもリムネとヘスナートに話せない。
だが、それ以外ならば隠す必要もないだろうと思った。だからレストランでの出来事を二人に話すことにした。
「まあ、ミーンミアにそんな侮辱を? 許せないっ!」
顔を歪めて激昂するリムネに、ヘスナートが力強く首肯する。オレの背中をポンと叩いた。
「そうだ、いま見せてやれ。ロフェイの特大ミニファイヤを! アイツのメガファイヤに負けてないはずだぜ」
いま? わざわざ見せる必要もないだろ。
しかしヘスナートが手を引っぱっていく。
オレはその男の正面に立たされた。
「なんだ、お前ら」
そいつはオレたちを睨めつけた。
ヘスナートが睨み返す。
「そこをどけ。俺たちの練習の番だ」
男はようやくオレに気づいたようだ。指を差してきた。
「お前は、きのうの……」
ニヤリと笑ってやった。
「てめぇも新人戦に出るらしいな」
「お前も出るのか?」
少し驚いているようだ。
オレは強気に出る。
「いいからどけ、邪魔だ」
「面白い。お前の魔法を見せてみろ」
男はその場から少し離れていった。
じっとオレのようすを観察している。
オレは特殊な石の標的に向かって手を伸ばした。
手の先から魔法陣が浮かびあがる。
周囲から爆笑が起きた。
「ぷはぁっ。どんな大魔法かと思ったら、ありゃミニファイヤの魔法陣じゃん」
「なんだよ。壮大なギャグをかませてきやがったぜ!!」
「メガファイヤの後の魔法がミニファイヤだなんて。笑わせすぎだろ」
オレは外野の声など気にせず、ミニファイヤを放った。
激しい音とともに特大炎が、石の標的に直撃。
さっきまで笑っていたヤツらは、いっせいに沈黙した。
再度ミニファイヤを打つ。
静まり返った練習場が、ふたたび騒がしくなった。
「いまの見たか。あの魔法陣、ミニファイヤのものだったよな」
「嘘だろ。あの特大炎がミニファイヤだと!?」
「さっきのメガファイヤと同等じゃないのか」
「馬鹿な……。ミニファイヤとメガファイヤが、いい勝負なんて」
男は顔を真っ赤にして怒っている。
「うるせえぞ! メガファイヤとミニファイヤが同等なものか!」
男の手からメガファイヤが飛ばされた。
特殊な石の標的が大炎に包まれる。
確かに威力のある魔法だ。周囲の人々も言う。
「やっぱりメガファイヤだ」
「メガファイヤ、迫力あるな」
「うん、メガファイヤ最強!」
オレもふたたびミニファイヤを放った。
またもや周囲がざわざわする。
「いいね。ミニファイヤ」
「メガファイヤに負けてない」
「俺はこっちのミニファイヤを推すぜ」
しばらく交互に飛ばし合った。
ギルドの受付嬢がやってきた。しかしルーシャではなかった。彼女の顔を知っているが、名前までは知らない。ここになんの用だろう。
彼女の視線の先はオレだった……。
「あなたがロフェイね?」
「そうだが」
「そろそろ時間なの」
時間??? 突然なんだというんだ。
オレの手を掴み、引っ張っている。
「どこに連れていく気だ」
「競技会場よ」
「はあ? 新人戦は午後からだろ」
「ロフェイが出場するのは熟練者戦よ」
ええと。何を言っている?
オレが出るのは新人戦だ。
「どうしてオレが熟練者戦なんて……?」
「それねえ、ルーシャが間違って登録しちゃったの」
な、なんだとぉーーーーー!!
「だったら取り消せ。オレは新人戦に出るんだ」
「残念だけど、一度登録したものは取り消せないわ」
「それ駄目じゃん。熟練者戦なんて優勝できないだろ! オレは出ないからな」
オレが出場するのはカネのためだ。
どうしても金貨十枚が必要なんだ。
「もし辞退したら冒険者資格は剥奪よ? いいの?」
横で会話を聞いていた男が大爆笑。
「ガハハハハハハハ。資格の剥奪か、そりゃいい」
くそっ!
オレは受付嬢に手を引かれるがまま歩いた。
「でもよ。こういう話、ミスしたルーシャが、直々に説明にくるべきなのでは?」
「いまルーシャは、チーフに手ひどく叱られているところなの」
ならばしっかり叱られてくれ。
でも金貨十枚どうしよう。
それに、いくらなんでも熟練者戦なんて……。
「本当に絶対出場しなきゃならんのか?」
「そういう決まりよ。でも出るだけ出て、即座にギブアップするのもOKだから」
「ギブアップは認められてるんだな?」
「うん、認められてるわ」
ケガはしなくて済みそうだ。でもカッコ悪いな。
競技会場に到着。めちゃめちゃ広い屋外施設だった。
受付嬢によれば、熟練者戦は毎回、何かしらの縛りがあるらしい。たとえば魔法を禁じた肉弾戦だったり、ファイヤ系限定の魔法バトルだったり、バトルではなく得点を競うゲームだったり……。今回は空中バトルとのことだ。
「オレ、飛べないんだけど」
「浮遊魔法もできないの?」
その呆れたような顔はなんだ。
「もちろん。初心者なんで」
「だったら、そうねぇ……。ひたすらぴょんぴょん跳んでおけば?」
オレ、ウサギさんかよ。
「それ結構恥ずかしくないか」
「いいじゃない。すぐギブアップするんだし」
まあ、そうだが……。
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