8話 恐怖のミノタウロス
事件から3日後、体力を回復させる為に大事をとって安静にしていたラーシェイルは、あの場にいたリースとザイアスのことが気がかりで、医務官長の許可を得て、再びザイアス達に会いに行きたいと、見舞いに来てくれた国王と王妃に申し出たのであった。
――あの後、リュート達が徹底的に探索を行いリース達にとって安心して暮らせる空間を作っていた。
光の幻影魔法を駆使し、王宮の外からは入れないようにし、内側からも警備の兵士を増員しさらに近づく者がいれば感知する様に風魔法で国王の元に通知される。あの場所の存在が知れることはリース達にとっても、この国にとっても避けたい案件だ。
兵士達は何故この場に配置されたのかは、わかっていない。
もともと見つかりにくい場所でリースの案内がなければ辿り着くことは困難である。
国王はもう安全であろうと思い、滅多に言わないラーシェイルのわがままを聞き入れ、グランジェを連れて行くならばとOKが出た。
今回、ミシャーラは留守番で、行くのはラーシェイルとグランジェ、グランジェの兄のアイラムの三人である。
――再びリース達が住んでいる場所の入り口付近まで来たものの、グランジェとアイラムはどの様にしてあの場所に行くことができるのかと思案していた。
すると…
『ラーシェイル、待ってたよ!』
「皆さん、迎えに来てくれたんですか⁈」
『もちろん!さあ、みんな待ってるよ!こっちこっち!』
「ありがとうございます!こっちです、グラン、アイラム。」
リースの案内で着いて行くとあっと言う間にあの場所に辿り着く。
なるほど、どうやらこの前通った道ではなく、その時によってランダムで道が変わる様だ。
「皆さん、こんにちは!」
『ラーシェイル!それとグランだったね!』
「こちらはグランのお兄さんでアイラムと言います。」
リースの言葉は理解できないがラーシェイルが自分の事を紹介してくれているのでアイラムが一礼する。
『アイラム、よろしくね!』
『ラーシェイル、体は大丈夫なの?』
「はい、もう大丈夫です。皆さんはあれから大丈夫でしたか?」
『僕たちは大丈夫だよ。ここは僕たちにとって居心地がいいからね。』
「それは良かったです。ここはリース達の楽園みたいですね。」
『うん!僕たち精霊だけじゃなくて、魔力に満ちているから他の生き物にとってもここは最高の場所だと思うよ。』
「何故王宮の近くにこの様な場所があるのか不思議ですね。あっ、ザイアスさんはどうしていますか?」
『ザイアスならこっちだよ!』
「二人とも、こっちだそうです。行きましょう。」
「「はい。」」
『ザイアス!ラーシェイルが来たよ!』
『ラーシェイル、こんにちは。』
ザイアスがこちらを振り向く。
少し大きくなった様にみえるが流石に気のせいだろうか?
同じことを思ったのかグランジェとアイラムが目を合わせる。
「ザイアスさん。こんにちは。お加減はいかがですか?」
『元気いっぱいさ!君こそ大丈夫かい?』
「はい、もう元気いっぱいです!」
ラーシェイルは大きなドラゴンに臆することなく、まるで親友のように話を続けている。
相変わらず何を話しているかわからないが、ラーシェイルが楽しそうなので、少しだけ離れて静かに見守る二人。
リースだけでなく幻獣達もいつのまにか集まって来て、ラーシェイルの周りには種族の垣根を超えて沢山の生き物が戯れていた。
その優しいラーシェイルの瞳はまるで慈しみの女神の様だったと、父のリュートに後に語ることになる。
『シエル、この前は大活躍だったようね。』
「ネヴァ!そんなことないですよ。また困った事があったらいつでも言ってくださいね。」
湖のあるエリアまでは少し離れているはずなのにマーメイドであるネヴァがいる。
しかも空中に浮いているではないか。
ただ浮いているだけではなく、空を泳いでいるかの様に自由に飛び回っているのだ。
どうやら風属性のリースに協力して貰った様だ。
優しく母性溢れる姉御肌のネヴァはリース達みんなの母のようで、相談が日々絶えないのだとか。
初めて見たアイラムはネヴァのあまりの美しさに頬を紅く染め、グランジェが声をかけるまで目を離すことができなかった。
『それが、早速で申し訳ないのだけど、少し困ったことが起こっているの…』
「どうかしたんですか?」
『実は…。私が住んでいる湖の先のそのまた先にある洞穴の近くに生えているはずの花や草木が最近枯れだしたの。この辺りは草木が枯れることなんてないはずなのに…。
それに5日程前に遊びに行った精霊達が帰ってこないの。』
「それは心配ですね。直ぐに調べてきます。」
『お願い、シエル。私はここを長く離れることができないから。』
「任せて下さい!グラン、アイラム、この先にある洞穴に調査しに行きます。」
「殿下!また危険なことに首を突っ込む気ではありませんよね?」
「大丈夫ですよ、調査に行くだけですから。それに、二人がいてくれるんでしょ?」
首を傾げながらそんな事を言われたら可愛いらしくて着いて行くしかあるまい。
4歳のラーシェイルには決して短くない道のりを歩くとネヴァの言った通り確かに草木が枯れて、辺り一帯が閑散としている。
それに何やら離れたところでリース達が騒いでいるようだ。
似たような景色を数日前にも見た様だとグランジェは思った。
『怖いよ!誰か助けて!』
何処からかは分からないが枯れた大地に土埃が舞っている。
「はっ!リース達が助けてと言っています!直ぐに助けに行きましょう!」
「殿下!」
グランジェ達が止める前に走り出してしまった。
声のした方に近づいてみると5体のリースが大きなミノタウロスに追いかけられていた。
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