14話 葛藤
「これが全てです。」
ぽろぽろ
「そんなの酷すぎます。」
「殿下。」
包み隠さず話し終えると、国王の横に座っていたラーシェイルの瞳からは涙が溢れていた。
こんな俺の話をまともに聞いてくれるだけでなく、泣いて下さるとは思っていなかった。
「すみません。そんな仕打ちを受けたのなら王族や貴族を嫌いになりますよね。」
ヴァンジール国王はラーシェイルの頭にそっと触れて慰める。
「確かにそうだな。ジーク。ミシャーラにはよく言い聞かせるから、今からでも断ってくれて構わない。」
「いいえ。陛下。確かにジャスティル帝国には思うところもありましたが、俺はこのファラリス王国に来てその考えは塗り替えられました。ジャスティル帝国では力が全てで人の優しさや思いやりなどは微塵も感じたことはありませんでした。ですが、この国の民たちは笑顔で溢れて自然も豊かで活気に満ち溢れていました。そんな国を守りたい。そう思えたのです。」
「そうか。…ではジークよ。」
「はっ。」
「改めて聞く。ミシャーラの専属騎士になってくれるか?」
「もちろんでございます。この命尽きるまでお使えさせてください。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます、ジーク。一緒により良い国にしていきましょう。」
「御意のままに。」
ジークの話はまだミシャーラには内緒だ。
もう少し大きくなったら自分から話したいとジークからの希望だそうだ。
話を終えて執務室から出てきたラーシェイルはジークに真剣な眼差しで話を切り出す。
「ジーク。」
「はっ。」
「シャラの専属騎士を引き受けていただいてありがとうございます。」
「いえ。」
「お願いがあります。」
「なんなりと。」
「約束して下さい。何があってもシャラを守ると。」
「もちろんお約束致します。」
「たとえ私や父上たちがどうなろうとも、シャラの安全を何よりも第一に考えて下さい。それがたとえシャラの頼みでも、そのことでシャラを悲しませることになっても。」
「しかし…」
「大丈夫です。父上たちには頼りになる護衛がいますし、私にも頼りになる専属騎士のグランがいますから。それにあなたはシャラの専属騎士です。だから、どうか。」
ラーシェイルが頭を下げて懇願する。
「あ、頭をお上げ下さい!」
「約束していただけますか?」
「わかりました。たとえ王女殿下に蔑まれようとも、お守り致します。」
「ありがとうございます。」
ニコッ
ラーシェイルは微笑んで感謝を告げる。
ラーシェイルを部屋まで送り届け就寝中のミシャーラの部屋に向かっていると、廊下の向こうから僅かにうつむきながらグランジェが歩いてくる。
医務室から帰ってきたようだ。
「グランジェ殿、傷はもういいのか?」
「ジーク殿!お恥ずかしい、もう大丈夫です。先程は助けていただき感謝申し上げます。」
「いや。」
「ところで何故こちらに?」
この先はラーシェイルの部屋しかない。
何か用があったのだろうか?
「実は…」
ジークは自身の事や第一王女殿下の専属騎士になったことを話す。
「そうでしたか。それは心強い。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。」
「…グランジェ殿の指導者になったわけではないが。」
「そ、そうですね!」
顔を赤らめ再びうつむく。
何か焦っているようだ。
「……何か思い詰めているようだが?」
「い、いえ。なんでも…あります。見破られるなんて、修行が足りませんね。」
「話を聞くくらいなら出来るぞ。」
「あの、実は…。悩んでいるのです。この先ラーシェイル殿下のお側でお使えしても良いのか。わたくしよりもジーク殿みたいな実力をお持ちの方のほうがラーシェイル殿下をお守り出来るのではないのかと。」
「さっきのことを気にしているのか?」
「それもありますが、この前にもラーシェイル殿下とミシャーラ王女殿下を危険に晒してしまいました。わたくしは騎士として何も出来なかった。」
「…グランジェ殿はいくつだ?」
「えっ?14になります。」
「まだまだ若いではないか。」
「若輩者で申し訳ありません。」
「いや、そうではなく伸びしろがあると言いたかったのだ。」
「そうでしょうか…。未熟なわたくしよりももっと優れた、ラーシェイル殿下にふさわしい専属騎士がいるはずです。」
「ラーシェイル殿下はお優しい方だ。こんな得体の知れない俺の事を評価していただき、陛下に進言してくださった。その時ラーシェイル殿下は、ふさわしいかふさわしくないかを決めるのは周りではなく、ミシャーラ王女殿下が俺を必要としている今、俺自身がどうしたいかが大事だとおっしゃってくださった。それは君にも当てはまると俺は思うぞ。」
「ラーシェイル殿下がそんなことを…」
「先程ラーシェイル殿下を送り届ける前に言っていた。ミシャーラ王女殿下の事を第一に考えてほしい。『私には頼りになる専属騎士のグランがいますから大丈夫』だと。」
「そうでしたか。……ありがとうございます。話を聞いていただいて少し楽になりました。」
「そうか。ご両親はご健在か?」
「はい。」
「では一度想いを伝えてみるといい。」
「そうですね。相談してみます。」
「それがいい。…これから同僚になるな。俺のことはジークと呼んでくれ。よろしく。」
「ではわたくしのこともグランと。」
二人はお互い固く手を結ぶ。
グランは一度深呼吸し、ラーシェイルの部屋の扉を叩く。
コンコン
「失礼致します。ラーシェイル殿下。」
「どうぞ。」
「先程は申し訳ございませんでした。」
「グラン!気にしてませんよ。それより大丈夫ですか?」
「はい、治療は終わりました。」
「良かったです。グランがいないと不安で眠れません。眠るまで一緒にいてくれますか?」
「もちろんです。ラーシェイル殿下。」
そっと手を握り、眠りに落ちるまで見守る。
「明日からもよろしくお願いしますね。」
「はい。どこまでもお供致します。」
「おやすみなさい。グラン。」
「おやすみなさい。ラーシェイル殿下。」
早くも眠りに付いたことを確認するとグランジェは独り言を呟く。
「どこまでもこの命に変えても、お守り致します。ラーシェイル殿下。」
改めてどこまでも何があってもお守りすると心に決めた。
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