11話 孤独な騎士
ドサッ
通行人にぶつかった護衛は突然体が麻痺してしまい倒れてしまった。
だが人が多くてお互いの姿を確認出来ないでいるグランジェと他の護衛は仲間が倒れた事に気がついていない。
立て続けににさらに二人も同じように通行人にぶつかったあと麻痺し倒れてしまう。
何者かに攻撃を受けているとは思っていなかったグランジェは、人混みが少し開けてきた時に異変に気づいた。
大体の部下の配置場所はわかっているが、誰もその場にいないではないか。
いや、一人は見つけたが丁度その部下が倒れた瞬間を目撃してしまったのだ。
ラーシェイル達は雑貨屋の店内で買い物を楽しんでいる最中である。
慌ててグランジェはラーシェイルとミシャーラの元に走り、安全を確保しようとする。
ザザッ
「待ちな!こっから先は行かせないぜ。」
数人の男がグランジェの前に立ちはだかる。
「なんだ、お前達は。今急いでいる。そこをどいてもらおう。」
「そう言う訳にはいかないな!俺達はあの店にいるガキどもに用があるんで。」
「何故あの子供たちに用があるのだ?どう見てもお前達と知り合いには見えないが。」
「しらばくれるな!あのガキどもがこの国の王子と姫だと知ってるんだからな!騎士さんよぉ。」
その言葉を合図に男達が一斉に隠し持っていた剣を構える。
「野蛮な賊が!何故あの方たちを狙う⁈」
「さあな?答える訳ねえだろ!」
短剣を構え、襲いかかってくる賊に応戦していると、思ったよりも賊の動きに統率がとれていて、思うようにラーシェイルたちに近づくことが出来ない。
「グラン!シャラを助けください!」
「シエルおにいさま!グラン!たすけて!」
「シャラ様!シエル様!今お助け致します!」
街中で身分を明かすことになるので、本名を言う訳にはいかずに愛称で呼ぶように国王に命じられている。
住民達はどこかの貴族の子供が襲われているように見えるだろう。
「お願いです!妹を傷つけないでください!」
ミシャーラは男のゴツゴツした腕に捕まり、ラーシェイルもミシャーラを助けようと男に縋りつくがもう一人の男に引き剥がされ捕まってしまった。
悲鳴を聞きつけ、住民達が集まり、通りすがりの者は足を止め、小さな子供が襲われている事件に、店の主人が慌てふためき、心配そうに見る者や、巡回警備員に連絡しに行く者、自分の子供を連れて逃げて行く者などがおり、かなり混乱している。
その中で助けに入ろうとする住民が数人いるが、相手は大勢で、全員が刃物を持っており、卑怯にも小さな子供を二人も人質に取っている。
グランジェはラーシェイルとミシャーラだけでなく市民にも危険が及ぶかも知れないと思い、どうすれば良いのが最善かを熟考しながら賊の一人を斬り伏せる。
「何が目的だ。」
グランジェが、賊のリーダーらしき男に問う。
「何をすればここにいる者全員を傷つけずにこの場を離れる。」
とにかく犯人達を刺激しないように、時間を稼ぎ交渉することにする。
「じゃあまず武器を捨てろ。」
「わかった。従うが誰にも手出しをしないでくれ。」
「ああ、約束しよう。」
ガランッ
戸惑い無く武器を捨てる。
「その方たちを解放してくれ。」
「馬鹿が、約束なんて守るわけないだろ。」
ガンッ
「ぐっ!」
グランジェは後ろから頭を殴られ、血を流し倒れる。
「グラン!!」
「このガキどもが目的だと言っただろう!解放すると思ったか?」
「その、方たちをは、離せ!」
唯一の騎士を倒し有頂天になり撤退をしようとリーダーの男が声を上げようと周りを見渡すと…
「はっ?」
男達が一人残らず倒れているではないか。
何が起きたか分からずに、解放された子供がグランジェの元に駆け寄る姿を目で追うことしか出来ない。
ヌッ
いきなり巨大な人影がリーダーの目の前に現れた。
上をゆっくりと見上げると、顔に傷があり、がたいのいい筋骨隆々の大男がこちらを鋭い目つきで見下ろしていた。
あっ。俺死んだ……。
直感で悟ったリーダー。
ご愁傷様です。
「こちらです!………あれ?」
巡回警備員が通報を受けて、現場に着いた時には一人の勇敢な男によって何もかもが終わったあとだった。
「大丈夫ですか?グラン!」
心配させまいと頭を押さえて立ち上がると
「大事ありません。わたくしよりも、お二人はお怪我はありませんか?」
「大丈夫です。シャラも無事です。」
「ありがとう!グラン!かっこよかったよ!」
「あの、助けて頂きありがとうございました。」
ラーシェイルが大男に頭を下げる。
グランジェも同様に頭を下げる。
「いや、見過ごせなかったからな。」
男は礼を言われると子供の目線に合わせ怖がらせないように膝をつき低い声で言った。
「あの、失礼ですがあなたは名だたる有名な剣士ではありませんか?」
グランジェは大男のただならぬ剣気に好奇心が勝てなかった。
「昔のことだ、今はただの老いぼれだ。」
ミシャーラは何を言うでもなく、ただ大男を見つめている。
怖がらせたかと思い、じゃあなと立ち去ろうとする大男。
「ま、まって!」
翻した大男の服の裾を掴むとミシャーラが引き止めた。
まさか引き止められると思わず、驚いた大男は再び膝をつきミシャーラの言葉を待った。
「あの。…あのね。……たすけてくれてありがとう!シャラっていうの。あなたのおなまえは?」
「シャラか、良い名だな。俺はジークと言う。」
「ジーク!カッコいいおなまえね!」
厳つく、剣を携えた自分に怖がらず、人見知りしない、天使の様な笑顔を向けられた大男のジークは心が揺さぶられ、今までに経験したことのない想いが芽生えた。
「あの、私はシャラの兄のシエルと言います。先程は本当にありがとうございました。」
助けたからと言って何故こんなにも警戒することなく自分に接することが出来るのだろうか?と疑問に思うジーク。
――「ここは…」
どうかお礼をしたいと言うので、一度は断ったが、子供たちがどうしてもと泣きつかれて断りきれずに連れて来られた場所は…




