第八話「一月の間」
謹慎の一月は、静かだった。
ミナは文書の間の隅にある小部屋に籠もり、記録の整理を続けた。
古い棚札を書き直し、年代ごとに乱れていた記録を並べ直す。
罰として与えられた時間だったが、ミナにとっては、不思議と悪い時間ではなかった。
ハルは時折、様子を見に来た。
「来なくてもよろしいのですよ」
ミナが言うと、ハルは平然と答えた。
「来てはいけないとは言われておりませんので」
「私は謹慎中です」
「私は謹慎しておりません」
そう言って、ハルは小さな包みを差し出した。
「差し入れです」
中に入っていたのは、干し柿だった。
「なぜ干し柿なのですか」
「長く保存できるものが良いと思いまして」
ハルは真面目な顔で言った。
「記録と同じで、残るものを選びました」
ミナは、しばらくハルを見た。
「干し柿を、記録に例えましたか」
「おかしかったでしょうか」
「おかしくはありません」
ミナは包みを受け取った。
「ただ、変わっていると思いました」
二人は干し柿を食べながら話した。
地方の税制のこと。
宮殿に残る古い記録のこと。
ハルが子供の頃、父から聞いた話のこと。
ミナが宮女として入ったばかりの頃のこと。
話していると、思いのほか時間が過ぎた。
帰り際、ハルが言った。
「また来てもよろしいでしょうか」
「来てはいけないとは言っておりません」
ハルは笑った。
「真似しましたね」
「あなたの言い方が、便利だったので」
ミナはそう言って、また記録へ目を戻した。
けれど、口元にはほんの少しだけ笑みが残っていた。
(第八話 了)




