白磁の皿・7
昨晩は雨が降ったようだ。
バルコニーに出ると目の前に虹が掛かっている。
海と虹が美しい。
(良い日になると良いな)
朝食を摂りにビュッフェに行く。
フロントの彼女は見当たらない。
(ホテルのフロントの勤務シフトは複雑なのかな?)
ちょっと遅かったのでピーク時間は過ぎ閑散としていた。
クロワッサンに切れ目を入れ、スクランブルエッグにマヨネーズと胡椒を混ぜハムとレタスも挟んでクロワッサンサンドにする。
コーンの甘味があとを引くスープと交互に食べる。
目が覚める美味さだ。
デザートのライチとスターフルーツを食べながら、オレンジジュースとトマトジュースを飲む。
ホットコーヒーを飲みながらスマホのメールをチェックして部屋に戻った。
リュックの中身を出し桐箱を入れ、バヤリースの南国グァバをサイドポケット放り込んでホテルを出る。
ちょっと考えたがアメリカンビレッジ方面に歩きだす。
そのままビレッジを通り抜けイオン北谷店ショッピングセンターに行く。
雑貨やお土産を見て時間を潰す。
色々見る場所があり、なんだかんだで時間が経ってしまったので結の店に向かう。
海沿いの整備された歩道を歩く。
似たようなオープンカフェが続く。
“DOOR KEY”端の方に結の店があった。
(“扉の鍵”か?扉は門扉から取って、で鍵は何だろう?)
closedとぶら下がっているドアを押す。
シャラァ〜ン♫
ドアベルが鳴るとキッチンから結が顔を出す。
「いらっしゃい!そこすわってて!お母さんももうちょっとで着くらしいからちょっと待ってね」
リュックをおろしキッチンカウンターの隅に桐箱を置く。
「ありがとう!」
皿を受け取り洗って立てかける。
空になった桐箱はカードとリボンを入れて蓋をし、そのままシンク横に置いた。
「ここは何屋さんなのかな?ケーキ屋?」
ガラスの冷凍ショーケースを見る。
「たまごサンド専門店だよ」
「おっ!たまごサンド美味しいよね。種類は?どのタイプのたまごサンド?」
「あら、好きなの?」
「大好きだ、ノーマルに近い物が好きだな」
「昔ながらの物と粗挽きたまごタイプで、黒糖入れた甘いやつと普通のやつ。全部で4種類よ。具はたっぷり入れてるわよ」
「それは良いね!王道だね!人気ありそうだなぁー」
「ふふふっ、ありがとう。おかげさまで毎日売り切れよ!」
「でも何で沖縄なの?」
「お父さんが定年後にでも沖縄に住みたかったのかな?結構前にここを買ったんだよ、でねもったい無いから使わせてもらったの」
「へぇ、なるほど」
「実家からちょっと遠すぎるのが難点ね」
「ちょっとかよw」
シャラァーン♫
ドアベルが鳴り糸子さんが入って来た。
「お母さんおつかれ!」
「雄介くん今回はごめんなさいね」
「いえ、気にしないでください。こっちは家業の方の仕事なので全く問題ありません」
「はいはい挨拶は終わりにして座って!すぐ出来るから」
まず、ミニトマト・クロワッサンと各自にコーンスープテーブルに置かれる。
例の皿が来た。
「はーいお待たせ!かぎばあさんのポークソテーよ!アグー豚使ったのよ」
「かぎばあさん?」
「そうよ」
「児童書の?」
「雄介、知ってるの!」
「あぁ、そう言えば1話はポークソテーだっだな。大好きで何回も何回も繰り返し読んでいたよ」
「うん一緒だね面白いわよね!じゃあ早く食べてみて!早く!」
アグー豚なので程よく身に脂身が入り切りやすい。
ラギオールのナイフで少し大き目に切り口に頬張る。
「うおっ!こっ、これは美味い!!」
「はぁ〜良かった!お気にに召しまして?」
「コレは最高に美味いよ!宇宙一だよ!このスパイスは何?」
「本のレシピをなるべく再現して胡椒とドライガーリックと沖縄の塩と、マコーミックのオールシーズニングよ」
「マコーミックかぁ!まさにアメリカのシーズニングだね」
「11種のスパイスが入った、コレぞアメリカの味ってやつね」
キャベツの千切りと粉ふきいもを箸休めにする。
(マジでうまいぞこのポークソテー!やべぇ!)
「この子はこの本のシリーズが好きでねぇ、それで料理人になったのよ」
結がキッチン奥に入り本を持ってくる。
ふしぎなかぎばあさん1巻目だ。
挿絵を見るとポークソテーの皿にはリムに緑の縁取りがある。
「おぉ!!」
この皿にそっくりだ!
この挿絵のテーブルが目の前に再現されていた。
俺もこの本は好きだったのでなんかとても感動した!
(いやぁーこれはアニ飯だな!)
結と糸子さんは皿を見つめて嬉しそうにしている。
「あっそうか!いけない、雄介にも見せてあげるね」
両手でパンと柏手を打つ。
「喝破!」
3つの皿か黄色く光りゆっくり揺らいでいる。
揺らぎながら光は目の高さまで上がり、1つになるとボウっと一瞬強く光りそのまま消えた・・・
糸子さんと結は泣いている。
門扉丈平さんの思いが解かれたのであろう。
凄い物を見せてもらった。
感覚で消えるのはわかるが、思いが解け浄化していくさまを実際に見れるとは衝撃的だ。
(これが浄眼師の視てる世界なのか・・・)
葬剣師と浄眼師は助けあって来たと言う事だが、なるほど納得した。




