五彩の闇・3
長テーブルに座って亀戸4班の芹澤くんの報告を聞く。
「墨には穢れ入りエリクサーが入っていました」
「エリクサーはどこから?」
「荷物として配達されて居るようでは無いみたいだな」
「基本こういうモノは手渡しですね?」
「じゃあポーションと同じ方法?ゲーム?」
「奥さんからはゲームもやってないと思うし、山手線には多分行っていないと聞いている。皇居の散歩ぐらいだそうだ」
「皇居一周って結構ありますよね?」
「あそこからだとゆっくり歩いて2時間ぐらいか?」
「それだけあれば山手線に行けますけどね」
「何度か途中まで後をつけたらしいが、本当に皇居の散歩だったらしいぞ」
芹澤くんが大型モニターにPCを繋ぎ皇居の地図を映す。
「散歩時間はまちまちだったらしい」
「え?途中まで行って戻るんですか?」
「多分、そうじゃないのか?」
「行くなら一周して帰りそうなもんですけどね」
「ルーチンでは無い行為は怪しいですね」
「どこから回るんですかね?」
「内堀通りを竹橋方面に進んで、竹橋交差点を右折して、ここのさかのぼった北桔橋門だろ」
「この散歩でしか受け取れませんよね?」
「だろうな」
『うーん・・・』
皆お手上げ状態だ。
芹澤くんが川上さんのSNSを映す。
あの例の字のオンパレードだ・・・
「それにしても何で言うか・・・黒一色だけど色彩豊かですよねぇー!」
俺の言葉に語見さんが大きく頷いている。
「“墨に五彩あり“と言われるんだよ。五彩は五色な。黒一色の中に万物の色彩が宿って居ると考えられているんだ。まず[濃]真っ黒で力強い。[淡]水で薄まった淡く柔らかい状態。[乾]水分が少なくカサカサ掠れた状態。[湿]水分をたっぷり含みじわっと滲んだ状態。[黒]艶があり奥深い黒の状態」
「確かにそうですよね」
「これらを使い分けて色が無いはずの墨の中に光と影、距離感と色彩を感じさせるようにするのが極意とされるんだよ」
「あぁ、凄い書画ありますもんね・・・ん?」
芹澤くんが凄い勢いで過去の投稿をめくっている。
「どうした?」
「いや、重ねたら何か文字が浮き上がるかな?っとか?」
「そう言えば確かに不自然な場所が何ヶ所かあるな」
「例えばどこですが?」
「これで言うと、こことここ」
はらいを一瞬とめている。素人目には溜めにも見えるが?プロから見ると不自然なんだろう。
「また数字でも浮き上がりますかね」
「多分それはあり得ます。なのでそんなに複数枚重ねてはいないと思います」
「じゃあ2、3枚?」
「月初め3枚のアップした画像を重ねてみます。エリクサーの瓶は9本ですよね?とりあえず12ヶ月分やってみます。皆さんはお茶でも飲んで待ってて下さい」
「芹澤頼む、昼近いし外に何か買いに行ってくるよ。食えないモノあるか?」
「イナゴとマックはチーズダメです」
「イナゴ?」
「バッタの」
「・・・わかった」
(売ってねぇよ!)
1班2班で昼飯の買い出しだ。
糸子さんの希望でポルケッタにする事にした。
効率良く別れて買い物に行く。
我々1班はキッチンカーでポルケッタとスープを買う。
2班はサラダとフォッカチオを買って来てもらう。
長テーブルからPCをどけ昼飯を置いて行く。
直美さんと糸子さんがコーヒーを淹れる。
部屋に香りが漂う。
何かとても贅沢な感じだ。とても仕事場とは思えない。
「何かこの部屋、妙に居心地良くなっちゃったわね。私なんて結構入り浸ってるわよ」
「そうそう、なんか良いですよねぇー」
宮本さんと長内さんも同意する。
「帰って来るとホッとしますよねぇ」
「まぁ、かなり緊張感のある仕事だからな。ここは結界が張ってある聖域・安全地帯だしな」
「室長!、結界張ってるんですか!?」
「今月から強力なのを周囲何十メートル張ってあるぞ」
「へぇー!すげぇー!」
皿に積まれて居るフォッカチオを取る。
置いてあるラギオールで切り、ポルケッタを挟んで食べる。
(うまい!このポルケッタ極上だ!)
「おぉ!これ美味いっすね!」
芹澤くんのテンションが上がる。
「ワイン欲しいーー!!」
直美さんがボヤいている。
「モカエキスプレスで我慢してください!」
「あっそうね!食後にそれにしよっと雄介も飲む?」
「お願いします」
直美さんはビアレッティを食器棚から下ろしてボイラー部を外しコーヒーを詰める。




