第50話優翔Lv.4 能力値
瑞葉に続いて優翔のステータスを表示した。
「ステータスオープン」のひと言で、半透明の漆黒ウィンドウが空中に浮かび上がる。直射日光が明るく照らしだしたタープの天蓋の裏布がステータス画面の裏に透けて見える。
幻想的な画面に映し出されている優翔の能力値も瑞葉の能力値と同様にとんでもないものだった。
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◇ステータス個人:能力値◇
名前:中伊達 優翔
15歳
職業:未設定/非認証 レベル:4
HP : 67
MP : 58
力 : 31
体力 : 30
素早さ : 32
器用さ : 32
賢さ : 28
運 : 21
攻撃力 : 62+9
防御力 : 61+6
武器 E 異界の長柄刀+9
防具 E 異世界の服+3
防具 E 異世界の靴+3
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表示された数値を見つめた瞬間、タープの下に一風の涼風が吹き抜け、草の匂いを運んできた。俺たちは思わず顔を見合わせる。
「うおっ……力31に体力30、素早さと器用さは32。能力値30超え連発してるね。攻撃力に至っては62プラス9……俺謹製の長柄ナタ、意外に攻撃力が高いな!?」
俺は手に持っていたマグカップの縁を指で撫でながら、感嘆の声を漏らした。
瑞葉が魔法特化なら、優翔は完全に前衛のフィジカルモンスターになりつつある。
「すごーい! お兄ちゃん、力も素早さも私の1.5倍以上あるじゃん!敵わないなぁ」
瑞葉が手に持ったのマグカップを両手で包み込みながら、羨ましそうに画面を見つめる。だが、その瞳には嫉妬ではなく、頼もしい兄への信頼と、生き抜くための戦力増強に対する素直な喜びが満ちていた。
「敵わないも何も、俺は前衛だからな。攻撃を決めて、敵を叩き潰すのが役割だ。僕と瑞葉では、そんな役割りが違うんだから 比較してもしょうがないよ」
優翔は首元の汗をタオルで無造作に拭いながら、どこか照れくさそうに鼻を鳴らした。
「……でもね!」
瑞葉が急にニッと八重歯を覗かせて、自慢げに胸を張った。
「全能力値の合計で見たら、お兄ちゃんと私の差ってトータルでたったの『2』しか違わないんだよ。 まだまだ逆転のチャンスはあるんだからね」
「はいはい。兄妹で能力値の勝負してどうするんだよ」
そのやり取りに思わずクスッと笑ってしまった俺は、二人の顔交互に見やった。
「ふふ、昨日もなんか、似たようなやり取りをしなかったか?」
「いいでしょ〜! 私らしくて!」
瑞葉がけたけたと笑い声をあげる。優翔は「たく……」と呆れたように肩をすくめ、苦笑いを浮かべた。
「結局、瑞葉は瑞葉のままだな」
「当然でしょ。人間、そんなに簡単には変われないもの」
瑞葉はタープの柱を握り、遠く――空に浮かぶ二つの太陽をタープの布越しに仰ぎ見ながら、ポツリと口にした。
「短時間で急に人が変わっちゃうなんて、それってマジでキツい理由があった時でしょ? そんなキツい理由なんていらないよ。今の私たちは、この生活の中で、ゆっくり成長できればそれでいいんじゃないの?」
「……」
一瞬間、静寂が訪れた。
高原を渡る風がタープの布地をパタパタと揺らす音だけが響く。
俺も、沙織も、優翔も、息を呑んで末娘の、妹の横顔を見つめていた。
(……そうだな。無理に背伸びをして、変わる必要なんてないんだ)
過酷な異世界サバイバルに揉まれ、早く強くならなければと皆が肩に力が入っていたのかもしれないな。瑞葉の直感的な言葉が、俺の胸の奥にすっと染み込み、焦り固まっていた心を軽くしてくれた。
「そうだな……瑞葉の言う通りだ。焦って変わる必要なんてないな」
俺が深く頷くと、瑞葉は「でしょー?」と得意気な顔を見せた。
しんみりとした温かい空気を破るように、沙織がぱんっと自分の膝を叩いて立ち上がった。汗ばんだ額の前髪を耳後ろにさっと流しながら、悪戯っぽく微笑む。
「さ、しんみりするのはおしまい! そろそろ優翔のスキル画面を見ましょう? 私のステータスも確認しなくちゃいけないんだから。あんまりのんびりしてると、お昼ご飯と晩御飯を合わせたディランチ(ディナー+ランチ)になっちゃうわよ?」
「あはは! ディランチだって! お母さん何それ〜!変なの」
「それは困るな。急に腹が減ってきたよ」
「あぁ、そうだな。早くステータスを見ることにしよう」
沙織の一言に全員の緊張が解け、和やかな笑いが広がった。俺は即座に優翔のスキル画面を開示させた。




