第40話瑞葉のレベルアップと娘の成長
「ステータスオープン」
家族全員のの目の前に現れた漆黒の表示。家族と共に瑞葉本人も、真剣に内容を確認している。
そこに並ぶ数値を目にした瞬間、俺たちは言葉を失った。
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名前:中伊達 瑞葉
13歳
職業:未設定/非認証 レベル:3
HP : 38
MP : 54
力 : 17
体力 : 18
素早さ : 24
器用さ : 31
賢さ : 27
運 : 34
攻撃力 : 38
防御力 : 38+5
武器 なし
防具 E 異世界の服+2
防具 E 異世界の靴+3
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「「「……」」」
能力値を見た皆の間に沈黙が流れる。
瑞葉と優翔の能力値の差が1ひらいたからだ。2人の能力値の差は数字でいえばわずか「2」だが瑞葉からすれば納得いくものではないだろう。
(どう、声を掛けるべきか……)
皆が悩む中、瑞葉が声を上げる。
「……うん。……比較対象がまだお兄ちゃんしかいないからよく分からないけど。良い感じなのかな?スキルも見ようよ」
雰囲気からして能力値の差がひらいたことは理解しているようだ。
それでも騒がずに冷静でいる瑞葉に、家族全員の視線が集まる。
「なっ、な何よ?今の状況って、お兄ちゃんの能力値と競い合っている場合じゃないんでしょ?それなら私も、私が出来ることを頑張るしかないじゃん」
「「瑞葉……」」
「……」
娘の成長を皆が静かに噛み締めていると、気恥ずかしくなったのか瑞葉がコチラを睨む。うん。可愛いな。
「なによ?スキル見ないの?!」
「あぁ。見よう、見ような、スキル」
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◇ステータス:スキル/加護◇
名前:中伊達 瑞葉
13歳
戦闘スキル
発現なし
魔法スキル
火魔法Lv.1
New!水魔法Lv.2
New!風魔法Lv.1
生活スキル
発現なし
ユニークスキル
★★★★魔導の極み……治癒/補助魔法以外のほぼ全ての魔法を修めることができる才能。攻撃魔法の習得のスピードが200%アップ。攻撃魔法のダメージが50%アップ。MPの消費が50%ダウン。
加護
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「「「……」」」
先ほどとは別の意味で、皆に沈黙がひろがった。
能力値の上昇と共に、風魔法が新たに発現していたのだ。
だが、それ以上に衝撃だったのが水魔法のレベルが2に上がっていたことだ。
俺の持つ薄っぺらなラノベや昔のゲーム知識からすれば、レベルは上がるほど必要な経験値が増えるはずだ。実際、瑞葉も優翔もレベル1からレベル2に上げるよりも、レベル2からレベル3に上げる方が遥かに大変だった。
優翔の『必中』といい、毎度レベルアップのたびに強力なスキルを発現させる子供たちのユニークスキルの恩恵に、俺は改めて驚愕するしかなかった。
「すごーい! 私、風魔法も使えるようになっちゃった! この調子で、どんどんレベル上げしていこうよ!お兄ちゃんには、負けないんだからぁ」
「えっ?」
「あら?」
「あれ?」
両拳を握りしめてキラキラと目を輝かせる瑞葉の言葉に皆が戸惑う。
「優翔に張り合うのは止めて、家族の為に出来る事をするんじゃなかったのか?」
「もちろん。でもお兄ちゃんに勝てそうなところがあるなら勝負したいよ。負けを受け入れるなんて私らしくないもん」
「まったく、お前はぁ、負けず嫌いだなぁ」
「そうね。でも瑞葉ちゃんらしわね」
「まぁ、元気なことは良い事だ」
「「「「はははは…」」」」
皆の笑い声が重なる。絶望の背中は見えているが雰囲気は悪くない。
皆でひとしきり笑い合った後、俺は腕を組み、しばし思考の海へと沈み込んだ。
「……父さん? どうしたの?」
俺の沈黙に目ざとく気づいた優翔が、怪訝そうに問いかけてくる。
「あぁ……ここまで順調なら、予定を早めて母さんのレベル上げもしようかと思ってな」
「えっ!? 私も……!?」
突然名前を呼ばれた沙織が、お玉を持ったまま目を丸くし、少し緊張したように胸元に手を当てた。
「お母さんも戦うの!? やったぁ、家族全員でレベルアップだね!」
「ちょっと瑞葉、お母さんは治療士なのよ……? 足手まといにならないかしら」
「大丈夫だよ沙織。俺が安全を第一にサポートする。沙織の『天恵の癒やし』のスキルは、いざという時の要だからな」
沙織を激励する俺の発言にかぶせるように、瑞葉も元気な声を上げる。
「私も凄い魔法を覚えて、お母さんを守ってあげるからね」
「ふふふ。ありがとう瑞葉」
そんな母娘の和やかなやり取りを傍目で見つめながら、優翔が静かに俺の隣へと歩み寄ってきた。
「……父さん」
「ん? どうした、優翔」
「食糧のこと……気にしてるんだろ?」
優翔の低い声に、俺はハッと息を呑んだ。
息子は真っ直ぐな瞳で俺を見つめている。反抗期特有の尖った視線ではなく、ひとりの「男」として、俺の焦りや重圧を見抜いていたのだ。
「僕たちのレベル上げを優先してくれてたけど……食糧の備蓄のこと、本当はすごく気にしているよね。だから、全員のレベル上げをできるだけ急ぎたいんだろ?」
いつの間にか、この子はここまで俺のことを見られるようになっていたのか。
息子の成長に対する頼もしさと、父親としての情けなさが交錯し、俺の胸の奥が熱くなる。
「……そうだな。食料の確保を急ぎたい気持ちは確かにある。だが……当分は『聖域結界』の外に出るつもりはないよ。安全第一、『命を大事に』ってやつだ」
「フッ……。そうだね。父さんが無茶しそうになったら、僕が止めるよ」
優翔は少しだけ口元を緩め、生意気にニッと笑ってみせた。父親を超えようとする対抗心と、家族を支える相棒としての信頼。そのふたつが混ざり合った息子の笑みが、たまらなく頼もしかった。
こうして、過酷だが、どこか愛おしい異世界生活の初日は、慌ただしくも温かい時間のなかで終盤を迎えるのだった。




