第39優翔Lv3と食糧危惧
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◇ステータス個人:能力値◇
名前:中伊達 優翔
15歳
職業:未設定/非認証 レベル:3
HP : 58
MP : 52
力 : 27
体力 : 26
素早さ : 28
器用さ : 28
賢さ : 25
運 : 19
攻撃力 : 54+12
防御力 : 53+6
武器 E 異界の鉤爪+12
防具 E 異世界の服+3
防具 E 異世界の靴+3
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◇ステータス:スキル/加護◇
名前:中伊達 優翔
15歳
戦闘スキル
★☆☆☆両断……縦斬りに命中率補正10%
ダメージ追加5%
★☆☆☆必中……刺突に命中率補正10%
ダメージ追加5%
魔法スキル
発現なし
生活スキル
発現なし
ユニークスキル
★★★★剣の極み……あらゆる剣技を修めることができる才能。剣技/武技の習得のスピードが200%アップ。剣技/通常のダメージが50%アップ。カウンター攻撃補正50%アップ。
加護
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半透明のステータス画面を見つめながら、俺は思わず息を呑んだ。
やはり、優翔のユニークスキル『剣の極み』による能力の上昇幅は凄まじい。
レベルが3に上がっただけで、力も素早さも一気に跳ね上がり、おまけに『必中』なんていう新しい戦闘スキルまで発現している。
近い将来、俺の能力なんてあっという間に抜き去っていくのだろう。
(頼もしい反面……元々乏しかった父親としての威厳など、あっという間になくなりそうだ)
そんな俺の視線に気づいたのか、優翔はツンとあごをしゃくって、少しだけ誇らしげに胸を張った。自分ではいつも通りしているつもりなのだろう。
「どう、父さん。 僕、ちゃんと足引っ張らないくらいには強くなれてるだろ?」
「ああ……足を引っ張るどころか、我が家の大黒柱レベルだな。父さん、本気で焦ってきたよ」
「まぁ、……父さんに褒められたくてやってるわけじゃないけど。家族を守るって決めたから、当たり前のことやってるだけだし」
素っ気なく返して顔を背ける優翔だったが、頭が左右にわずかながら揺れている。機嫌の良い時の癖だ。昔、ババ抜きで初めて優翔が勝った時のことを思い出す。あの時は、頭どころか身体全体が揺れていたが……。
最近は、まともに目を合わせようともしなかった息子が、家族を守ると言う。
一気に大人びてきた息子だが、そのくせ内心では不器用な対抗心を燃やしている。そのアンバランスな感じがどこか愛おしく、俺は苦笑いを噛み殺した。
瑞葉が能力値をスケッチブックにメモし終えたところで、ちょうど昼食の時間となった。
頂くのは、キャンプ当初からの予定通りのメニューだ。長持ちしない生ものや傷みやすい食材から優先的に使うという観点から、沙織が食材を惜しまずに腕を振るってくれた。
「はい、できたわよ。今日のお昼は、特製キノコと豚肉たっぷりのシチューと、生ハム入りのロールパンよ!」
「おぉ! すごい、キャンプ飯とは思えない豪華さだな!」
折りたたみテーブルの上に並べられた湯気立つスープと、香ばしく炙られたパン。
沙織の力作に本心から声を上げた俺だったが、脳裏には冷酷な現実がこびりついて離れなかった。
今ある食材は、奇跡的に無傷だった保管庫の備蓄を合わせても、家族4人でせいぜい一週間分。その間に、自分たちの手で次の食料を確保する手段を見つけなければ、俺たちを待っているのは餓死だ。
『博識』が示してた40年以上前の情報を信じるなら、この『エルタニア高原』は、エルタニア山や大森林に比べれば魔物が圧倒的に弱いようだ。
それでも深夜に遭遇した『グレートボア』のような凶暴な肉食獣は存在する。それ以上に恐ろしい魔物が潜んでいる可能性だってある。
見上げれば、青空を突き破るようにエルタニア大山が聳え立つ。
地球の最高峰エベレストのほぼ2倍の標高。旅客機の飛行高度は10000メートルよりも遥かに高い。
地球であれば戦闘機しか到達出来ない程の高度だ。機械の補助がなければ人間など一瞬で意識を失うほどの低酸素。そして南極をも超える極寒の世界。
もしその山頂に生息する生物がいるとすれば、魔獣や魔物のカテゴリーなど関係なく、恐るべき化け物だ。
そんな化け物の住む世界から直線距離で数十キロしか離れていない『エルタニア高原』。結界の薄い膜一枚を隔てたすぐ外側では、異界の赤紫色の胞子が漂い、見たこともない奇妙な植物が毒々しい色彩を放っている。
かつてアイナヤーゴ帝国軍の一万もの精鋭が、この地に数十箇所もの『聖域結界』を張ってなお命を散らしたという死地の入口。
この結界内の平穏は、あくまで奇跡の上に成り立っている仮初めの平穏に過ぎないのだ。
高原での食料調達が可能だとしても、結界の外へ出ることは必須だろう。そうなった時、俺や家族は魔物による命の危険にさらされる。
危険だからといって、いつまでも結界内に留まれば、今度は飢餓という絶対的な死が待ち受けている。
深刻に考えないようにしてはいるが、胸の奥を刺すような焦燥感が押し寄せ、俺の表情が自然と硬くなる。
その時だった。
「あなた、ほら。冷めないうちにシチューを食べたら」
沙織が柔らかく微笑みながら、取っ手付きのアルミ製の深皿を差し出した。そして、深皿を受け取った俺の手にそっと自らの手を重ねてきた。
温かい温もりが手から伝わり、ハッと我に返る。
「あ、ああ……ありがとう、沙織」
「もう、そんなに難しそうな顔してたら、せっかくのご飯が美味しくなくなっちゃうわよ? ほら、優翔も瑞葉も、いっぱい食べてね」
沙織の朗らかな声に導かれるように、テーブルの空気がふっと和らいだ。
「ねえお兄ちゃん、今度取得した『必中』ってどんな感じなのかな? 」
「まだ使ってないから、わからないよ。でも、なんていうか……スライムの魔核を破壊する時に、振り降ろした時より、刺突をイメージした時の方が効率がよくて、自然と相手の急所に吸い込まれるような感覚があったから、その感覚かな」
「え〜ズルい! 私の魔法も勝手に当たってくれればいいのに!」
「お前はぁ。そこは練習あるのみだろ」
軽口を叩き合う子供たち。
昔の話や、学校で流行っている事、ゲームの話など下らない話に花が咲く。
会話の合間、沙織が俺とそっと目を合わせ、いたずらっぽく小首をかしげて微笑んだ。
この温かい会話の流れは、沙織が、さりげなく作ってくれたものだったのだ。
穏やかなムードメーカーであり、俺の一番の理解者。ここ最近は会話もろくにできていなかったが、そのことに変わりはないようだ。
(……本当に、沙織には敵わないな)
かつて仕事にかまけ、家庭を放置していた俺に対しても、沙織は変わらぬ深い愛情と母性で包み込んでくれる。胸の奥で妻への深い感謝を捧げながら、俺は静かにシチューを口に運んだ。
昼食を終え、瑞葉のMPを確認すると、自然回復と食事がもたらした休養効果により、万全の『46』にまで全快していた。
そのことも踏まえ、午後のレベル上げは瑞葉からスタートすることになった。
「やったぁ〜! トップバッターだぁ!」
跳び上がって喜ぶ娘の姿は、中学1年生の少女としては、いささか幼く無邪気すぎるようにも思える。
異世界に来る前、スマホばかり見て「面倒い」「どーでもいい」と冷めた顔をしていた瑞葉。
だがあれは、家庭内の冷え切った空気に傷つかないよう、少女なりに作っていた鎧だったのだろう。
疎外感から解放された今見せる天真爛漫さと、時折見せる年相応の脆さ。自分の過去の無関心が娘に無理をさせていたのだと、俺は改めて深く自戒した。
昼食後の一投目。俺がアルミ缶の仕掛けで誘い出したスライムに向け、瑞葉が魔法を放つ。
——ポンッ!
瑞葉は水球でのスライム討伐のコツを掴んだようだ。
再び賞状筒の蓋を勢いよく引き抜いた時のような、乾いた音が響く。
その後のスライム討伐は午前中以上に順調だった。交互に休んでいたお陰で瑞葉と優翔の疲労も許容範囲内に収まっていると俺は判断した。
2つの太陽が少し地平に近づき始めた頃、スライムの討伐を終えた瑞葉の動きが止まった。
「あっ…… お父さん!お兄ちゃん! 私レベルアップしたよ。お母さ〜ん!見てぇ!レベルアップしたよ!」
瑞葉の歓声が夕空に響き渡る。
魔法職である瑞葉のレベルアップ——そこには、一体どんな変化とスキルが待っているのか。俺たちは高鳴る期待を胸に、彼女の元へと歩み寄った。




