第21話ファミリースキル中伊達家と会敵
皆が深く頷いたのを確認し、俺は意識を視界の左端で明滅する【New!】の表示に合わせた。
【特殊スキルの発現条件を満たしました】
【パーティースキルが発現しました。ステータスを確認してください】
この通知画面はパーティーメンバーには見えないようで、俺が表示内容を口頭で報告した。
「なんだか凄そうね」
ゲームやラノベ知識のない沙織の感想だが、俺の感想も似たようなものだ。
「レアスキルなのかな?なんだろう。これからの生活に役立ちそうなスキルが良いよね」
「何でもいいけど早く見ようよ」
考えすぎるのは俺と優翔の悪い癖だな。男二人が苦笑いを浮かべながら、瑞葉の言葉に頷きあう。
「あぁ、そうだな。それじゃあ 確認するとするか。ステータスオープン」
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∞◇ステータス:パーティースキル◇∞
中伊達家
パーティースキル
★★★★報連相……戦闘中に家族間の意思疎通が言語を通さずとも認知し合える。パーティー登録された《中伊達家》のメンバーであれば、連携に10%の補正効果あり。
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何だコレは?こんなスキル聞いたことがない。それと同時に今までの俺たちのやり取りに寄り添った、まさにジャストフィットなスキルだ。
この世界では個人のスキルと同様に、パーティーにフィットしたスキルが存在するのだろうか?それとも……。
「この世界ではパーティーごとにスキルが発現するのかな?それにしても……あまりに中伊達家にフィットし過ぎだよな……、もし中伊達家だけのオリジナルスキルだとしたら……」
「なんだか主人公みたいな展開だね」
慎重に言葉を選びながら考察する優翔と、深く考えずに見事なまでに芯を喰った発言をする瑞葉。
対照的な二人の反応だが、どうやらこのファミリーステータスの画面は、ポップアップ画面とは違って全員で共有できているようだ。
可能な限りの平常心で家族と会話を続けていたが、……俺の掌には嫌な湿り気を帯びた汗が滲み出していた。
(……戦闘中に家族間の意思疎通が……かぁ)
画面の説明文にさらりと記されたその三文字が、ここが安全なゲームの世界などではなく、遠からず血と鉄の匂いが漂う『実戦』を強いられる現実なのだと、冷酷に告げていた。
脳裏にこびりつく死への恐怖を強引に振り払おうとした——その瞬間。
「あなた……!」
横にいた沙織が、はっと息を飲んで左手で俺の右腕を強く掴んだ。そして、もう片方の右手で真っ直ぐに一箇所を指し示していた。
「あなた!あれ!」
語調とは裏腹に、絞り出すような低い声量が沙織の極限の緊張感を物語っていた。
指差された先は、俺たちが設営したテントから20歩——距離にして10メートルほど離れた場所だった。
俺たちが今立つ場所は、人の手によって砕石や土が平坦に押し固め整地された『キャンプサイト』の地面だ。
だが、その10メートル離れると情景は一変する。見たこともない異彩を放つ濃緑の草生と、一度も人の足が入ったことのなさそうな重く湿った原始の腐葉土のような——『異世界の大地』が広がっていた。
手入れされた人工の大地と、見たこともない生の湿気を孕んだ未開の大地。その明確で異様な『境界線』の外縁に、そいつはいた。
泥水がそのまま盛り上がったような、50センチほどのドーム状の物体。それが、キャンプ場の草の上で、ぬちゃり、ぬちゃりと気味の悪い蠢きを見せている。
濡れた肉と腐爛した土が擦れ合うような不気味な音が、高原を渡る冷たい風に混じって不吉に響くたびに、そいつは少しずつ俺たちのいる場所へと近付いてきた。
(……デッカイわらび餅みたいだな。だが 生理的な嫌悪が湧き上がるな)
俺がそのわらび餅もどきに注意を向けると目の前に半透明の表示が浮かび上がった。おそらく俺のユニークスキル鑑定の効果だろう。
【スライム Lv1】
無属性。強酸性の体液による溶解と吸収が主な攻撃方法。通常道具を十全に使える年齢に達していれば生命への脅威は少ないが、野営での就寝中や、木などから降下襲撃等で鼻口を塞がれて窒息死する者もいる。
討伐条件 : 魔核への物理攻撃か、魔法での一定以上のダメージ。
その文字を読んだ俺の感想は「やっぱり」だった。ファンタジーの定番モンスターだが、目の前でヌラヌラと光を反射して蠢くそれは、ゲーム画面越しではない「生々しい異世界の脅威」そのものだった。
不安そうに俺とわらび餅を見比べる沙織。どうやらこの表示は俺にしか見えないようだ。
パーティーステータスの写しを終え、スケッチブックを抱えた瑞葉と、緊張で身体を固くしている優翔へ向けて、俺は腹から声を張り上げた。
「みんなスライムだ! 油断するな、気を付けろ!」




