第17話瑞葉ステータススキル
能力値の確認を終えた俺たちは、瑞葉の強い希望に押されるようにして、続いてスキルの確認へと移った。
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◇ステータス:スキル/加護◇
名前:中伊達 瑞葉
13歳
戦闘スキル
発現なし
魔法スキル
発現なし
生活スキル
発現なし
ユニークスキル
★★★★魔導の極み……治癒/補助魔法以外のほぼ全ての魔法を修めることができる才能。攻撃魔法の習得のスピードが200%アップ。攻撃魔法のダメージが50%アップ。MPの消費が50%ダウン。
加護
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「……」
「えっ!?」
(本当に来たな……すっごいスキルが……)
「キター! 魔法の才能! 無双案件かなぁ。お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、これからは私がみーんな守ってあげるからね!」
胸を張って威風堂々と宣言する瑞葉。
誇らしげな笑顔の裏にあるのは、ただのお調子者の乗りなどではなく「家族の役に立ちたい」「みんなを守りたい」という、まっすぐで純粋な想いだ。
一人で大はしゃぎする娘の声を聞きながら、俺は何度もステータス画面を読み込んだ。スキルの説明は簡潔で、周りを警戒しながらでも数秒で読むことができる。
それでも時間をかけて何度も何度も、俺は『魔導の極み』なるスキルの説明文を読み込んだ。
この世界の仕組みなんて全く知らない俺だが、スキル説明を読めば読むほど、ぶっ壊れ性能だと確信した。
「父さん…」
「あぁ…」
優翔と顔を見合わせる。
互いに色々考えることが入り混じって、うまく言葉にならない。
妻が万能の治癒士で、娘が遠距離や広範囲を担う魔導士、あと必要なのは近接職か。
優翔が騎士や戦士のスキルを持っていたら、このパーティー編成で、これから現れ得る凶暴な魔物とも渡り合えるんじゃないか!? 異世界物の主人公よろしく、俺たちもこのまま快進撃を――。
思考が一瞬、安易なゲーム的展開へと飛びかけたが、俺はすぐに頭を振って自らを戒めた。
(……落ち着け、調子に乗るな。これはゲームの攻略じゃない、現実のサバイバルなんだ。派手な戦闘や華やかなイベントなんかよりも、地味に思うものこそが命綱なんだ。異世界の高原や森でも元の世界の無人島生活だって、一番重要なのは猛獣退治じゃなく、飲み水の確保や雨風を凌ぐ家作り、衛生的な生活を守り、明日の食料を確保することだ。いくら強力な魔法があっても、腹は膨らまないし、風邪も防げないんだからな。それに……)
周囲の背の高い草が風で揺れる音に一瞬視線を向け、自分と俺との間に母と妹がくるように位置取りを修正した優翔が、周りを見渡しながら皆に話し掛ける。
「僕のステータスで、もし『剣術』とか『近接戦闘』のスキルがあれば、前衛と後衛の役割分担が綺麗に決まるんだけどなぁ……」
優翔は「魔物との戦闘」といった直接的な役割分担に意識がいっているようだ。
大人びているとは言っても、反抗期ただ中の若い男子だ。カッコイイ、華々しいものに意識がいくのは当然の反応だし、何より「自分が家族の盾にならなければ」という気負いと責任感の表れでもある。
「……でもさぁ、いくらすごーい攻撃魔法が使えても、お腹が空いたら戦えないよね? 魔法でお肉やあたたかいスープが出せるならいいんだけど」
優翔の発言に応えたのか定かではないが、瑞葉がスケッチブックに自らのスキルを書き込みながら、何気なく口にした一言に、優翔はハッとさせられていた。
瑞葉は歳の割には幼いところや、考えなしなところもあるが、時にふっと物事の真理を突く。感覚的というか特化的というか、何となく俺が持つ魔法使いのイメージにもぴったりだ。
「……確かにな。いくら威力が素晴らしくても、生活の基盤がなければ意味がないか」
優翔が少し照れくさそうに頭を掻きながら呟き、沙織も「そうねぇ、強力な魔法で敵を攻撃するより、小さな魔法でも薪に火が点けられるほうがいいかもね。水魔法で水が出せれば、危険を冒して水源に近寄らなくてもいいものね」と、現実的な暮らしの視点で頷いている。
感覚派の娘がふと呟いた真理に、一本取られた形だ。
正しいと思ったことは素直に受け入れる。俺はそんな息子の背中に、微笑ましさと頼もしさを感じながら優しく声をかけた。
「まあ、戦闘も大事だが、まずは衣食住の確保が第一優先だ。集落を探しながら、それらをどう整えるか……。優翔が警戒してくれているおかげで、こうやって落ち着いて話し合えているよ。とりあえず優翔のステータスを見てみるか?」
「そうだね」
気分屋で感性の人間である瑞葉は、先ほどの本質を突く発言はどこへやら、今は饒舌にこれからの無双プランについて語っている。誰かに語るというよりは大きい声で独り言を喋っているようだ。
その娘の行動を呆れつつも温かい目で見守っていた沙織だったが、優翔のステータスを見る話を聞いた瞬間、瑞葉の肩をポンと叩いて優しく、けれど断固とした口調で話し掛けた。
「瑞葉、お兄ちゃんのステータスを見るわよ。騒いでないで、いい加減周りの警戒をしなさい」
「はい!」
威厳と愛情が同居した母親の言葉に、瑞葉は直ぐに背筋をのばした。この辺りはさすが母親だ。
「それじゃあ、優翔のステータスを確認するぞ」
「ああ」
「うん」
「ええ、お願い」
自分の言葉に皆が当たり前のように反応を返してくれる。絶望的な事態に巻き込まれてしまったのは確かだ。
だが、バラバラになりかけていた家族が、今こうしてしっかりと同じ方向を向いている。俺はそのことが、無性に嬉しく、胸の奥が熱くなるのを感じていた。




