第74話 グラスの不安
グラス 元王様視点のお話です。
「なるほどね。ふーん。で、グラス、あんたの成功ってなんだ?」
10歳とは思えない洞察力で私を見るピスタは
【魂の束縛】についてオムグ商業国家では知り得なかった知識を有していた。
ピスタ曰く
【洗脳】は
洗脳する側の人物が制約したい内容を間接的でも接触した状態で
例えば「私の言葉に従う」の様に具体的に口にすると、洗脳を受けてしまう。抗えない事もないがひどく頭痛を伴うらしい、そして
【魂の束縛】は考え方すらも強く操作され、人格も変わってしまう。ピュリファイでは解呪できず、セイグリットと言う上位の浄化スキルで解呪出来たと。
私は両親がなぜ魂の束縛を受けたのか、どこでそんな事になったのかを知りたいと願った時、犠牲を伴いながらも希望が叶う未来を見てしまった。
自分勝手だとは百も承知だ。
現に犠牲とは目の前にいるピスタが死に、ミアは封印される。内容だった。
その未来を目の当たりにした上で選択した。
犠牲は致し方ない。
勝てないのだ。あの恐ろしく強大な福音教会最高司祭フレイの力に。
サンドラに王位を譲る時間があっただけ良かったのだろう。
先代の王の様に暗殺される未来と隣り合わせで今日まで成功を掴んできた。
宝具のおかげなのは言うまでもないが、それでも成功の目が無く、八方塞がりになる人間もたくさん見てきている。
故に私は福音教会と対立しない事に徹してきた。
だからこそ、この小さな2人には気付かれてはいけない。何も知らずに死ぬ方が幸せな時もある。そう自分に言い聞かせて、尚、一縷の望みにかける。あの桃色の髪の少女はピスタ達を救う唯一の成功の道筋として必要なのだ。
「私の成功は、国民の偽りない幸せだよ。」
表情を崩すな。感情を読まれるな。
飄々とした態度が板についた自分を俯瞰して笑えてきた。
「なんかまだ王様って感じだね!」とミアが話す。
「うーん、それって1人の国民を犠牲に多数を救う考え方なのか?」
ぞくっとした。的を得ているいや、得過ぎている。
咄嗟に言葉で取り繕う。
「あの子は危険に晒すつもりはない。鑑定で見たが【2人乗り】みたいな変なユニークスキルがあったからもしかすると逃げる時に役に立つかもしれない。」
「何から逃げるんだ?」
もちろん福音教会のフレイからだ。しかし気付かれない様に言葉を濁す。
「ヌーラかダンジョンのあるいはナーガ大森林で会う敵だよ。ヌーラってのは凍え山の山頂で佇む魔物だ。」




