第50話 成功の宝具ファラ
ラジルお嬢様目線のお話です。
「国王様、ご報告でございます。」
「ラジル、そう畏まらなくても良い。以前の様に名前で呼んでくれても構わないぞ。
ファラが無ければただの一般市民以下、貴族の君なんかより元はよっぽど低い身分だ。
して、此度の収穫はどうだった?」
やはり王の器。表情が切り替わる瞬間空気が変わるのがわかる。
「お戯を。今回少し問題がありまして、早々に馳せ参じました。」
何やら難しい顔になるグラス国王。
この国で王になるのは血筋でも努力でもあるいは武力でも無い。
七宝具の一つ【成功の宝具ファラ】を扱っていた当人がファラを使って探し次の人物に引導を渡す。
そういうしきたりで長きに渡って発展し続けて来た、そんな国がここオムグ商業国家だ。
宝具の使い手は宝具を手にした時、発動に必要な魔法を覚えると言う。
当人以外にはどの様な詠唱なのかわからない。
私も目の前で使ってもらった際に聞こえた詠唱はまるで文章には聴こえないような音のような声だった。
目の前の元使用人の息子、齢30になる名をグラスと言う。
「グラス国王。それでは心して聞いてくださいませ。結果から申し上げますと成功でした。」
パッと明るくなる顔に周りの学者達もつられて笑顔に染まる。
「では新たな魔法のヒントが得られた、そう言う事で構わないか?」
「はい。現段階ではおそらく余り人気でない闇属性。【スポイト】の魔法、これは麦など穀物や作物の選別などで砂利を取り除く時にlv1で保有している農民達が持っていると聞きます。
こちらを成長させていくと【アブソーブ】と言う魔法が得られるそうです。そのアブソーブを水と接した状態で【熱を奪う】ようにして使えば氷が発生します。恐らく凍え山の主は闇魔法アブソーブを使う魔物であると邪推します。」
「おぉー!そうだったのか!」魔法研究の学者達が揃って声を上げた。
「なるほど、闇属性か、盲点であった。山から降りて来たあの魔物を撃退するのにどおりで火魔法が効かない訳だ。
よしっ!光魔法をあてがおう。次のヌーラ撃退の編成を軍部に伝えよ!上手くいけば、これでガルマン帝国側への兵力増強が出来るようになるぞ!」
「吉報でなによりですな!」と大臣。
「所で、ラジルよ。これだけの知識を何から得て、何が問題なのだ?」
「実はセントの街にてアルフ神聖国家より逃亡して来た亡命者を2人見つけました。」
「なにっ!!!そやつらは今どこに!?」
慌てるグラス国王と大臣達。
「護衛としてAランクパーティと共にDランクの冒険者となって王都におります。
しばらく滞在すると言っていましたので私の家に来る約束を取り付けて参りました。」
大臣は大声で
「何を悠長に言っておるのだ!敵か味方かすら判別できぬのではないか?!お主の執事エンドゥならばすぐにでも捕まえてここへ連れてくるぞ!何故野放しにした!!?グラス国王すぐにでも手配を!」
「まぁまてまて、ラジル、その落ち着きを見ればわかる。その者達に敵意は無く、必ずラジルの所にやってくる自信があるのだな?
その時に会えれば構わん。だが間者、或いは敵対するようならこの国法に則って裁きを受けさせよう。どうだ大臣。」
「国王が仰るのならば。」
私は言おうか迷った。しかしつい口が開いてしまった。
「野放しになんて出来ないと思いましたが、彼らを縛る事すら困難だと感じ、エンドゥと半ば諦めにも近い気持ちでこちらに参った次第です。」
「それほどの実力者か、、、戦争の火種になら無ければ良いが。」




