第32話 逃げ道
「冷たい!!美味い!!神聖国にはそんな魔法もあるんだね!!」馬車に乗せてくれたおじさんは皮袋の水筒の水を飲みながら喜んでくれた。
「それで、おじさん!さっきの素材の主、クロコシャークってそんなに強いの?」とミアちゃん。
「そうだなぁ、ここらじゃ倒された記録はないんじゃ無いかなぁ?
冒険者でもアルフ神聖国側のこっちの海はモンスターが強いからわざわざ狩りに来ないけど、たまたま打ち上げられた瀕死のクロコシャークを倒してくる人はいるし素材は見たことがあるよ。よく見つけられたね!」
「やばいね。捨てようか?」まぁDP交換させてもらうけど。
僕が小さな声でそう言うと、それは勿体無いよと首を振るミアちゃんがそこにいた。
そして
「あのぉ、おじさんが良ければそれ差し上げます。」
と言う。
「いや、それは願ったり叶ったりだけど・・・。でも私も腐っても商人だ、やっぱり出来ないな。例えば何か交換して欲しいものはあるかい?」
「寝床と食べ物かな?」
「おぉ・・・かなり辛い旅をしてきたんだね。
ただ難しいかな。亡命者って言って、敵国からの逃げてきた人達の扱いは私じゃどうも出来ない。」
ミアちゃんは顔を顰めて
「難しいんだね。」と言う。
「じゃあ情報が欲しい。僕たちが生きていくための情報や、この国の常識、気をつける事。なんでも良いから!」
「賢いんだね君は。よし!色々話をしようか!
じゃあまずこの国はオムグ商業国家。
大陸の南側に位置していて南と東は海で北と西は山脈。東の海を越えると君達のいたアルフ神聖国家だね。
そして北の山脈を越えるとガルマン帝国。
ちなみにガルマン帝国とアルフ神聖国家は陸続きで極寒の山脈と川を挟んで睨み合ってるね。」
「睨み合ってるってのは戦争してるって事?」と言うミアちゃんの質問に
「たぶんそうじゃ無いかな?」
と返した。
「領地を求めた戦争ですか?」
「うーん。確かに領地をかけた戦いではあるけど、お互いの目的は宝具だね。」
「!!!」
おじさんが話をそのまま続ける。
「このオムグ商業国家の我らがオムグ国王様は成功の宝具【ファラ】を扱える偉大な方で、謁見できればその人の力量に見合った【成功】を得られるんだ!」
「「えっ!?」」
目を見合わせる僕ら2人。
ここに来て宝具の話。いよいよ白の黒5号が言ってた話に信憑性が増してきたな。
「あ、あー、アルフ神聖国は確か【与奪の宝具ドーナルンパ】。対価を代わりに強大な力を得るんだったっけ?ほんとかどうか知らないんだけど。」
おじさんは首を傾げて聞いてくる
「いやー、僕らも正直何も知らないと言うか、知らされてないと言うか、宝具ってこの世に本当にあるんですね?」
「ハハハハ!まぁ私も実際には見たことがないけど、実績は確かだし、この国が発展したきっかけだから知らない人はいないのさ!」
それによって戦争が起きてるのに気楽な感じだなぁと思いつつも視線を前にやると城壁のような石造りの門が見えてきた。
「おっ、セントの街が見えてきた!あ、門番に聞かれたらなんて言うんだ?」
「確かに…ピスタ君どうする!?」
「正直に言おう!(嘘)父さんが僕たちを逃すために海を凍らせてアルフ神聖国から逃げてきました!ってね。」




