第28話 脱出
「やっと薄っすら向こうの方に陸地が見えてきたけど、あそこまでどのくらいの距離なの?ていうか絶対こんな海の渡り方する人いないよ!」
ミアちゃんが僕に向かって愚痴る。
「ふぅー、えとね、水平線までの距離が大人の目線で4〜5kmって言われてるからまぁ4kmないくらいじゃ無いかな。」
「どこ情報なのそれ。」
僕は魔法と同時に返事する
「アブソーブ!
え、たぶん前世。」
【闇神の加護】を得て覚えた魔法
アブソーブはエネルギーを吸収できる。つまり水の熱を奪う事ができる変わった魔法だったがこれが無いと脱出は不可能だった。
今はミアちゃんと海を氷にして国を脱出しようと歩いている状況だ。
「はいはい。」
ちなみに前世の話はミアちゃんにはあまり信用してもらっていない。
そもそも魂が繰り返すなんて話は何かの宝具で無ければ有り得ないと、絵本が何かで書いていたそうだ。
ミアちゃんが驚いていたのは絵本で書いていた想像上の宝具に信憑性が増して来たと言う事らしい。
絵本の信憑性に僕が負けているのが悔しい。
「でもさ、白の黒5号の話が全部本当だとして海の向こうに商業国家があるかどうかは、行ってみたらわかる話なんだろうけど、
敵国の人間が逃げて来ても保護なんてしてくれるのかな?」
「そこは出たとこ勝負と言うか、どのみちあの場所って言うか、アルフ神聖国だっけ?あそこにいたらこの前の6号みたいに殺されちゃうわよ。」
どっしりしてるねミアちゃんも。まぁ僕もつい昨日家族を失ったばっかりだ。生きるために必死なのは共感できる。
そう、少し前僕らはピー村で襲撃に遭った。
僕はそのことを思い出す。
昨日、あの場で村長の下した判断は決して遅くは無かった。
僕がLUKの話をしようとしてその場に居残り、真剣に聞いたのはヤジを飛ばして来たおじさん達数人と
村長。
クレリー。
ドゴル。
そして白の黒5号だけだった。
しょうがない、他のみんなは家族が亡くなったばかりで泣き疲れていたんだ。
そして僕のそれを聞いた上でも村長は合理的だった。
蓋を開ければ
村人全員50人足らずしか生き残っておらず、村としてはもう放棄して教会かどこかに救済を求めざるを得ない。
そう言う判断で遺体のお見送りを早々に済ませて隣村に話をしに行こうとしていた。
僕の家の畑にたくさんの村人の亡骸を集めてスパファイアで火葬する。
初めて見た僕の魔法に生き残った村人達は唾を飲み込み涙しながら見ていた。
数多くの遺体が炎に包まれながらサラサラとした白い粉に変わっていく。
僕の父さんと母さんは目を覆いたくなるほどの無数の傷があって、何度も喰らい付いて足止めをしてくれていた事が嫌でもわかる傷跡だった。
立ち上る煙と人の焼け焦げた匂いを残し、残った人達は泣きながらお別れを済ましていて、僕は父さんと母さん心からの感謝を送り決心する。
「父さん、母さん、兄ちゃん。
今までありがとう。」
ぽたりと涙が雫となって地面に落ちた。




