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女王様のオマケ  作者: 神無月 愛
第一章  異世界に来たオマケ
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第十四話 「知りたいことが色々と……。」

 驚きに硬直する姉妹を、国王夫妻はにこにこと眺めていた。

「王室騎士団はこの城と王族の方々をお守りするもの。その中でも私ども特別小隊はカリン王女殿下、スズカ王女殿下の御身をお守りするお役目を拝命致しました。お二方に安心してお過ごし頂けますよう陰ながら力を尽くす所存にございます。」

 カロリアの言葉に戻してアサムさんはそう説明する。王族の身を守る騎士団の中に、さらにいくつか部隊があって、そのうち一つの隊長さんってことか。小隊って何人くらいなんだっけ……って、そんなのはまあいいや。

「騎士って、女の人でもなれるんですか?」

「この世界では、性別や民族は何の障壁ともなり得ませぬ故。」

 歌鈴の問いかけに、アサムさんは微笑む。こうして見るとちゃんと女性だわ。綺麗だし。騎士さんだっていう先入観だけで男と思ってしまったのか、恥ずかしい。

「アサムはニホンで生まれ、幼い頃『界の歪み』に落ちてこの世界へ来たと聞いた。故郷の話の通じる者が近くにいると気が休まる事もあろう。」

 なるほど、同じような境遇と言って差し支えないね。おじい様の心遣いに感謝を示しつつ、わたしはこっそりアサムさんに聞きたいことを脳内でリストアップし始めた。あとで質問攻めしてしまいそう。

「パース、今日の午後からコーカの大聖堂へ視察でしょう。ゆっくりする時間が次にいつ取れるか分かりませんから、よければ昼食を皆で一緒にいただきませんか? アサムもどうぞ同席して頂戴。」

 おばあ様の提案にわたしも歌鈴も喜んで頷いた。一緒に食卓を囲むと「家族」って感じがするよね。アサムさんはちょっと驚いた様子で尋ねる。

「私もご一緒してよろしいのでございますか?」

「ええ。ふたりを託す上でいろいろお話したい事もありますから。」

 そんなこんなで五人で食卓を囲むことと相成りました。

 会話の中心は常におばあ様だったので、わたしはなんとか質問を自重することができた。はーやれやれ。でもここで自重してしまったお陰で、わたしの好奇心は限界に達した。

「あのっ、アサムさん、このあと少しお話ししても大丈夫ですか?」

 祖父母の元を辞して部屋へと向かう途中、こんな逆ナンみたいなセリフを発してしまった。やだ何わたし恥ずかしい!

「私どもは常時交代でお二方のいらっしゃる《緑ノ宮》を警護する役に就いておりますので、お呼びとあらばいつでも参りますよ。お話とは、どのようなご用件でございましょうか。」

 アサムさん、セリフのおかしさには気付いてるだろうけど、さすが冷静である。わたしは気を取直して、できるだけ簡潔に答えた。

「……あまり根掘り葉掘り聞いてしまったら申し訳ないんですけど、ここに来たときの事やこの世界について、知りたいことが色々と……。わたし達の時とアサムさんの時と状況を比べて、分かる限り整理しておきたいんです。ただの、個人的な興味ですけど。アサムさんが話しにくくなければ。」

「それ、あたしも聞きたい。」

 歌鈴も食いついてきた。この子は小さい頃わたしよりずっと好奇心が強かったんだ、考えてみれば当たり前か。

「構いませんよ。私に分かる限りの事はお話しします。スズカ様のお部屋で宜しいでしょうか。キャシー、パティ、お茶を用意してもらえる?」

「かしこまりました。」

 わたし達三人はわたしの部屋に入り、ローテーブルを囲んでソファに座る。それで……もう、とにかくたくさん喋った。女が三人集まって姦しいってのは昔の人よく考えたものよね。

「私がこの世界に来たのは20年前、小学五年生の時のことです。学校帰りにいわゆる『神隠し』に遭いまして。」

「えっ、じゃあアサムさん今30歳くらい? うっそーあたしもうちょい若いと思ってた!」

「正確に言えば、この秋で31になります。」

「この世界の季節って日本と同じなんですか?」

「ええ、日本の四季と同じようなもので、潤季(プリシア)暑季(サリーナ)雨季(オーリア)寒季(ウィリナ)と呼ばれています。空を司る四姉妹の女神の名だそうですよ。一年間が360日、12ヶ月なのも日本と近いですね。」

「時間の流れって日本と平行なのかな。お母さんが日本に来てからわたし達が呼ばれるまでの間は、こっちの世界でも日本でも同じ40年間みたいだけど。同じ時間軸の平行世界とも考えられるし、時空がねじれている中で偶然その二点は合ってただけとも考えられる。」

「……あたし、その辺の話ややこしくてついてけない。パス。」

「私の生年がお二人の生年の11年前ですから、おそらく平行世界なのでしょう。ちなみに本日は黄ノ月(六月)の一日。一般的に今月から暑季(サリーナ)に入るとされています。」

「日付もだいたい合ってますね。昨日……わたし達が呼ばれたのが、五月三十日だったから。」

 女三人でお茶して喋ってても、内容はこんなとこ。いつしかわたしは鞄からルーズリーフを取り出して、アサムさんの話を必死にメモしていた。これからここで暮らしていくんだもん、カレンダーくらい知っておかなきゃね。

 あ、言葉の問題は結局よく分からなかった。アサムさんは最初全く通じなかったらしい。わたし達も問題ないのはリスニングと話す言葉だけで、読み書きは全く出来ず。違う言語だってのは分かったけど……なんで喋れるのやら。謎が残ってしまったな。

「そういえばリンちゃんは、ここに呼ばれた時は何してたの?」

 アサムさんの話から連想して自分の状況を話し、歌鈴にも尋ねると、歌鈴はなんだかちょっと不機嫌な顔になった。

「仕事中だったの。スタッフさんとか何人かいたから、急にあたしが消えて大騒ぎになったかも。」

「え、仕事って何?」

「アイドル。」

 わたしにとっては、本日一番の驚きだった。

 いつか絶対、動機から経緯から全部問い質してやろう。

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