45話 周りを頼って
ああもう、なんでこういう時だけ連絡が取れないんだよ! あのストーカー野郎!
「もう、どこにいるのよ……!」
スマホで何度も王塚君にコールしながら、夜の街を走り回った。でも、一向に連絡がとれない。
この現状が、幸果の中にある嫌な予感に拍車をかけた。自殺なんて、させてたまるものか! どうか、杞憂であってください!
「はぁ、はぁ……ダメだ」
あてもなくこの広い都内を探し回るのは無謀だ。……王塚君の行きそうな場所ってどこだろう。
いや、わかるわけないか。彼とは、そこまで固い絆で結ばれた関係じゃないから。
こんなことなら、もっと王塚君と話しておけばよかった。もっと知ればよかった。
今さら後悔したって、もう遅いけど。
「あら、花守さん?」
頭を抱えていたところ、横から声をかけられた。
ショタパイこと、鹿島さんだ。なんか、原付に乗っていらっしゃる。パイセン、ワイルドっすね。
「鹿島さん……。こんなところで何やってるんですか?」
「いや、普通にバイトの帰りだけど。……というかこっちのセリフだよ。こんなところで何をしているの?」
ヘルメットを外した鹿島さん。首を振った時に流れた黒髪がカッコいいですね。大人の女性って感じがしますよ。って、今はそれどころじゃない!
「すみません、人を探してて……。急いでますので、これで失礼します」
「ちょっと待って」
その場から走り去ろうとしたら、鹿島が呼び止めた。
「何か困っているんでしょう? 私にも話して」
「いや、それは……」
気持ちは嬉しいけど、こんなところで借りを作りたくはない。私は、自力で探してみせる——
「もっと人を頼りなさい! 先輩命令よ、私に事情を話しなさい!」
「鹿島さん……」
その強い言葉を受けて、今まで抱えていた暗い霧が一気に晴れる。自分の中にあった重苦しいたまごの殻が、爽快に砕けた気がした。
「……実は」
と言いかけた瞬間、あることを思いついた。そうか、一人でどうにかしようって考えたから、すぐに思いつかなかったんだ。
「城ヶ崎なら、なんとかしてくれるかもしれない」
そうだ……。誰かに頼れば、それだけ道は開けるんだ。私はそれを、ポメッコと過ごした時間から学んだじゃないか!
「……誰?」
「いや、こっちの話です」
急いでスマホを取り出し、城ヶ崎に電話した。あの人なら、城ヶ崎家の財力とかでどうにかできるかもしれない。……言い方は失礼だけど。
『はいもしもし、城ヶ崎ですわ! どうされましたか花守さん!?』
「お願い、探してほしい人がいるの!」
『探してほしい人ですか?』
細かい説明は省いた。でも、とにかくピンチなんだと伝えたら、すぐさま了承してくれた。なんていいやつなんだ!
『わかりました、であればその人の顔写真を送ってください!』
「わかった、ちょっと待って。今写真送るから!」
メールで写真を送信した。すると、すぐさまスタンプが返ってきた。ゴリラが全力疾走しているスタンプだ。……なにこれ? すぐに探しますってことかな?
「あ、きた」
すると、数分もしないうちに着信が入った。
『花守さん、城ヶ崎グループの超高性能解析プログラムを利用して、写真の人物の現在地をある程度絞り込めました!』
「はっや!」
さすがは城ヶ崎家の力だ。いざという時に本当に頼りになる。逆に言えば、敵に回さないでよかったとつくづく思う。
『ここから警察と連携して、監視カメラで正確な位置情報を掴みます!』
初対面の時に警察と友達って言ってたけど、あれマジだったんだ。もうなんでもありじゃん。
『目標確認! 位置情報を送ります!』
送られてきた現在地を確認。そこは、近くの河原の橋だった。
「ここに王塚君がいるんだね。ありがとう城ヶ崎さん!」
『グッドラック! わたくしたちも今すぐ向かいますわ!』
「おう……ありがとう」
別に来なくてもいいんだけどなぁ。まあ、なんでもいいか。
「それじゃあ鹿島さん、ちょっと行ってきます!」
「待って、急いでるんなら乗せてあげる!」
親指をクイッと後部座席にやり、「乗りな!」と合図をしてくれた。
「ありがとうございます……」
バイクの後ろに飛び乗り、鹿島さんに場所を指定。
そうして、すぐさま王塚君のもとへと走り出した。




