35話 お風呂の乱
そうして夕食を済ませると、お次は入浴の時間だ。
脱衣所は自身の家のものとは当然に、以前赴いた温泉のものより広かった。体育館くらいの敷地はあるんじゃなかろうか。というか、何でこんなに広くする必要があるんだろう。
「お家にこんな広いお風呂があるなんて、びっくりだねぃ!」
「そうだねぇ。住む世界が違いすぎるよ」
脱衣所のカゴに脱いだ服を入れていく。隣にいたポメッコは背を向きながら服を脱いでいた。でも、ちょっと手こずっているようだ。今日はせっかくのお泊まり会だからと、新品の慣れない服を着用していたから。
「さあ、お二人とも! 早く入りましょう!」
そんな幸果たちの元へ、すでに服を脱ぎ終わった城ヶ崎がやってきた。白いバスタオルを体に巻き付けての登場だ。
そんな城ヶ崎を前にして、自然と彼女の胸元に目がいった。というか、釘付けである。
「……あら花守さん、どうかなさいましたか?」
「……いや、別に何も」
胸、意外とデカいな……。なんなら私よりも大きいんですけど。というか、Gカップくらいは普通にありそうなんですけど。
普段から視線を向けるたびにデカいなぁとは思っていたけど、実際に脱ぐとさらに豊満さが際立って見える。
それと比較するように、自然と自分の胸に手を当ててみた。……うん、鉄板! 泣くしかないね!
「さあさあポメッコちゃん、お洋服脱ぎ脱ぎしましょうねー。わたくしもお手伝いします!」
「いいよぉ、僕一人でできるもん!」
「まあまあ、そう遠慮なさらずに!」
自身の隣で何やら危険なオーラを漂わせる城ヶ崎。鼻息を荒らしながら血走らせる目は、性癖を前にした野獣のように見える。
「ほらほらポメッコ、早く着替えてねぇ」
幸果はすかさずポメッコの脱衣を手伝い、裸体にタオルを巻いてやった。城ヶ崎よ、そんな残念そうな顔をしないでほしい。
「わー、ひっろーい! すごいね幸果ちゃん! 前に行った温泉より広いよ!」
そうして訪れた浴室内。レトロ調なお風呂が幸果たちを出迎えた。
「そ、そうだね……というか、もはや銭湯じゃん」
そこはまさに大浴場だった。百人くらいなら容易に入れそうなほどの広さだ。
なんで家に銭湯があるんですか? とツッコミたい。しかしそれも、城ヶ崎家だからですと言われれば何も言えなくなる。金持ちって、何でもありだよね。
「早速入るぞー!」
「こら、先に体を洗いなさい!」
「もー、わかったよぉ」
浴室の手前には洗い場がいくつか設けられていて、その先には横長の湯船があった。奥まった壁一面には立派な富士山の絵が描かれている。あらためて考えると、ここが一人間の自宅の中とは思えないよ。
「さぁポメッコちゃん、わたくしがお体を洗ってあげましょうねー」
近くにあった洗い場へ行くなり、城ヶ崎がポメッコを椅子に座らせた。
「いいの? ありがとう! 自分で洗うのめんどくさいしねぃ!」
石鹸で泡立てたタオルを手に、ポメッコへ迫る城ヶ崎。息をはぁはぁと荒げている。すでにただならぬ危機感を感じた。
「それなら私が洗ってあげるよ」
「いいの幸果ちゃん? じゃあお言葉に甘えるねぃ!」
無理やり割り込ませてもらった。城ヶ崎の欲望は、まだポメッコには早いのだよ。
「そんなそんな、花守さん。ここはわたくしにお任せください!」
「いいのいいの、私の方が付き合い長いんだから」
ここで引いてなるものか。ポメッコの純潔は私が守らねば!
「……そうですか、では仕方がありませんね」
……あれ? 意外と引くの早いな。
と思いきや、途端に城ヶ崎は目をギラリと光らせた。
「では代わりに、花守さんの身体を洗って差し上げます! ほら、ポメッコちゃんのが終わったら隣の椅子に座ってください!」
「いやけっこうです! 私もう大人ですから!」
「そんな遠慮なさらないで! 書籍化も決まって何かとお忙しいでしょうし、わたくしが日頃の疲れを綺麗さっぱり拭い切って差し上げます!」
「いいって言ってんでしょうが! というか身体を当てないで!? 早く離れて!」
めっちゃ抱きついてくるんですけど! というか、やっぱり胸デカすぎるって! 当てられれば当てられるほどに、その偉大さが直肌で感じられた。
その引き締まったぶ厚い肉の弾力。それに妙に色気を感じてしまったのは、心の中だけにしまっておこう。




