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34話 こんな美味しい料理初めて!

 ヘリで城ヶ崎家の庭に舞い降りると、そこにはすでに召使いの方々が何十人も待機していた。


『花守様、ポメッコ様、ようこそお越しくださりました!』


 一同が声を揃えて頭を下げた。ありがたいけど……圧がすごいよ。おかげでこっちは萎縮しちゃう。


「くるしゅうない!」


 それに対してポメッコはお気楽だ。こういうのに慣れているのか、笑顔で皆々に応じた。


「ささ、早くお家にお入りになってください! 今日は夜までたくさん遊びましょう!」


「わーい! お菓子もたくさん食べるぞー!」


 城ヶ崎とポメッコがめっちゃ盛り上がっている。というかポメッコ、その言い方は少しがめついぞ。 


「お、お邪魔します」


 城ヶ崎に促され、幸果たちは屋敷の中へと入っていく。


 だが、その直前だった——


「……ポメッコ、門の外を見つめてどうかしたの?」


 さっきまではしゃいでいたポメッコが、急に門の方へ目線を向けた。なんだろう、何かいるのかな?


「ううん、なんでもない!」


 でも、ポメッコはすぐに門から目を背けた。


「さ、早く入ろう!」


「……そう? ならいいけど」


 よくわからないけど、まあいいか。たぶん、子供特有の気まぐれな習性か何かでしょ。



 中へ入ってからしばらくして、晩御飯の時間となった。


 城ヶ崎家の食卓の間、縦に伸びた長い机の端っこに、幸果と城ヶ崎、ポメッコの三人が固まって座っている。


 体育館並みの広い部屋の壁には、使いの者や一流シェフたちが、幸果たちを囲むようにびっしりと並んでいた。あまりこういう環境に慣れてないせいで、少し落ち着かない。


「わぁー、すっごくおいしそうだねぃ!」


 城ヶ崎と他愛ない話をしている間に、シェフたちが机の上に料理を運んできてくれた。赤い大きな……エビ? ザリガニ? みたいなのが乗っけられたお皿だ。


 他にも香ばしい匂いが漂うお肉、ローストビーフって言うのかな? などなど、小市民な幸果にもわかるほどに、いかにも豪華な料理がずらずらと置かれていく。


 あらかた料理が運ばれると、城ヶ崎が傍にあるグラスを手に持つ。そして、その場に立ち上がった。


「花守さん! 『プリンセスメモリー』書籍化……いや、作家デビューおめでとうございます! この日をわたくしは、誰よりも待ち望んでいました!」


『おめでとうございます! 花守様!』


 壁際に立っていた城ヶ崎家の人たちが一斉にクラッカーを鳴らし、幸果の大成を大いに祝ってくれた。


「そそ、そんな……ありがとうございます」


 まさかこんなにデカデカと祝ってくれるとは思わなかった。


 幸果も嬉しい反面、どういうリアクションをすべきかわからない。結果的にあたふたと困惑する羽目に。


「ささ! 花守さん、ポメッコちゃん! 遠慮なさらずにどうぞお召し上がりください! 我が城ヶ崎家自慢の一流シェフたちが作った、最高級の料理ですわ!」


「あ、ありがとう」


 遠慮するなと言われてもさぁ、そりゃあ遠慮しちゃうって。こんな豪華な料理、食べたことないんだもの。


 城ヶ崎の家でお菓子は食べたことあったけど、料理を振る舞われるのは今回が初めてだ。


 こんな高級料理を口にするなんて、なんだか悪いことをするような気持ちになる。自然と手が震えてくるよ。


「うんま、うんま! すっごいおいしいよ幸果ちゃん! こんな料理食べたのは久しぶりだよ!」


「ポメッコちゃんに喜んでいただけて感激です!」


 城ヶ崎がポメッコに抱きついて頰を擦り合わせた。ポメッコはかまわずばくばくと目の前のお肉を口に運ぶ。


 そんなポメッコを見ていると、食事に二の足を踏む自分がアホらしく思えてきた。


 あまりあれこれ考えず、幸果も目の前の料理に手をつける。


 まずはフォークで肉を押さえて、片手に持ったナイフでギコギコと切っていく。アニメやドラマで履修したステーキの食べ方だ。ぎこちなく、作法を意識して食べる幸果。


 フォークで刺したお肉の切れを、恐る恐る口に入れた——


「っ……!」


 その瞬間、今まで味わったことのない刺激を覚えた。な、なんじゃこりゃあ!?


「んおー!? うんっまー!」


 ほっぺがとろけるとは、まさにこのことだ。あまりの美味しさに、思わずドン引きするほどの変な声が出てしまう。


 口の中に溢れる肉汁の匂いが、鼻腔を抜けていく。嗅覚と同時に、上等な味を脳内に感じた。


 前にお寿司屋さんでマグロを食べた時と同じくらい……いや、それ以上の快感と断言できる。


 失礼だけど、脳から強制的にドーパミンを出させる薬でも入っているのかと思うほどだ。いや、実際にそんなことはないだろうけど。


「こ、こんな料理と巡り会えるなんて……なんか涙が……!」


「花守さんにそこまで喜んでもらえるとは、感無量ですわ!」


「うぅー! 美味しすぎて涙が止まらないー! うまい、うまいー!」


「うわーん! 花守さーん!」


 城ヶ崎が泣きながら抱きついてきた。もう何が何だか自分でもわかんないや。


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