28話 いらっしゃい、ストーカー君
翌日、幸果とポメッコは普段通り家で過ごしていた。今日は以前夜の公園で約束をしていた、王塚魔人が家に来る日だ。
でもポメッコは、なぜだかシャドーボクシングをしていた。なんか、朝からずっと続けてんだよね。
「あのさポメッコ、さっきからなにやってるの? 頭おかしくなっちゃった?」
「見てわからない? 王塚から幸果ちゃんを守るための訓練だよ! 襲われても返り討ちにできるようにね!」
「ポメッコは魔法が使えるんだから、体術極めなくていいでしょ」
「男たるたもの、拳で語り合うべし! この前見たヤンキー映画でそう言ってた!」
「またそうやってすぐ影響受けるんだから……」
ピンポーン——。
「あっ、来たかな?」
「いつでも王塚を突き飛ばす準備はできてるよ。安心してね!」
「わかったから、そのクラウチングスタートの姿勢やめよ? 開けた瞬間突進する気でしょ」
「はーい、じゃあやめる」
「素直か!」
ピンポーン——。
「はいはい、今開けますよ」
玄関に向かい、ドアを開いてやった。
そこには当然のようにストーカー——ゴホンゴホンッ、……王塚君の姿が。
「ちーっす、花守! お邪魔しまーす!」
「はいはい、いいから早く上がってよ」
「やい兄ちゃん、客人だからって茶菓子とか出してもらえると思うなよ?」
「客人になんちゅう態度してんだお前ら! 形だけでも歓迎して!?」
ギャーギャーうるさい王塚君を適当に流し、とりあえずさっさと部屋に入れてやった。なんかあたりを見回しながら、くんかくんかと部屋の匂いを嗅いでいるんですけど。……何この人、キモ。
まさかとは思うけど、私の匂いを確認しているのかな?
ストーカーだしやりかねんな。鼻の奥に割り箸突っ込んで悶絶させてやりたい。
「で、今日は何の用かね?」
ちゃぶ台を前に、床に腰を下ろすポメッコと王塚君。前者は机に肘をついて、後者を睨みつけた。歓迎する気ゼロである。
「お前の動画について、映像制作者としていろいろアドバイスしてやりたいと思ってさ」
ずっとそう言っているけど、本当にそれだけなのかな? 他にも何か企んでそう気がするんだけど。
「ふん、余計なお世話だい! 早く帰ってよ!」
「まあまあ、そう言うなって。可愛げがねぇなぁ」
ポメッコの主張にさんせーい。自分も借りを返すために招いただけだし、さっさと用を済ませてお帰りいただきたいと強く思う。こっちも早く小説を書き進めたいし。
「はい、水道水」
「水道水……。さ、サンキュー花守!」
形だけでも飲み物くらいは出してあげた。王塚君のためというより、最低限のマナーはしないと気持ち的にあれだからね。
そんな自分たちのやりとりを見たポメッコは「けっ」と悪態をついた。……そんなに気に入りませんかね?
「で? 僕の動画にケチをつけたいんなら、一応聞こうじゃないの」
結局聞くんだ。
「嫌な言い方だなぁ。別にケチをつけたいわけじゃねぇのに」
めっちゃバチバチと火花を散らしている。薄々感じてたけど、この二人相性悪いなぁ。終始ギスギスしてるじゃないの。
「まずはこの動画だな。一番再生回数低いやつ」
王塚君がスマホを取り出し、動画を開いた。
「……これが何?」
「なんで再生回数低いかわかるか?」
「……たまたま?」
「んなわけあるか! ちゃんと分析すれば理由は明白なんだよ」
「……というと?」
「まず、お前の話のパートが多すぎてつまらん。最近の生活で起こった話とか、正直面白くない。ファンなら聞きたいだろうけど、初見のやつからしたら知ったこっちゃねぇんだよ」
この人、すごいぐさぐさ刺していくなぁ。
「この動画はアニメのグッズ紹介だよな? 本編までの話が長すぎてグダついてるんだよ。はっきり言ってくどい! 早く本編いけ!」
「……な、なるほど。たしかに、お兄ちゃんの言うことも一理あるかも」
「あとシンプルにカメラぶれすぎ。ちゃんと固定できてねぇ。他にもさ、あーだこーだあーだこーだ——」




