13話 やってきました、遊園地!
ポメッコに抱き抱えられ、不本意ながらもお姫様抱っこ状態。その体制で飛行魔法で空を飛び、あっという間に目的地へと辿り着いた。
そこは、まさに異世界だった。
「わぁ、すっごいね! 僕らの住んでいる街と全然違う!」
二時間にも及ぶ長蛇の列を並び終え、無事にゲートから入場完了。
園内に入るなり、面前に広がる光景を眺めてちびすけは大はしゃぎ。初めて見る世界に興奮しているみたいだった。
「そ、そうだね……。なんか外国に来たみたい……」
初めてやってきた遊園地。その目の前に広がる光景に幸果も圧倒されていた。見るもの全てがとにかくデカいし、迫力満点だ。
頭上を通り過ぎたジェットコースターからの発狂が怖い。つい驚かされて、身体がびくついてしまった。
「……ここが遊園地かぁ。生で見るのは初めてだよ」
とはいえ、幸果も内心浮かれていた。初めてのアトラクションデビュー。来たら来たで、ちょっと楽しみになってきたぞ。
「ねぇねぇ、まずはあれ乗ろうよ!」
ポメッコが指を向けた先、そこにはジェットコースターの入場ゲートがあった。
「早く行こう! 並ばないと乗れないよー!」
急かすように、自身の手を強く引っ張るポメッコ。その勢いに負けて列に並ぶことに。
「はいはい、わかりましたよ……」
先に並んでいた周りの人たちから、温かい目を向けられた。正体は何であれ、見た目は年相応の小さな少年だ。側から見れば自分たちは、仲良しな姉弟に映っているんだと思う。
「いやぁ、にしても長いわねぇ……」
列に並び始めてから一時間ほど。当然のように、まだアトラクションには乗れていない。
「……あと一時間くらいかな」
希望的観測を口にしてみるものの、こういう予想はだいたい当たらない。
気づけば幸果たちの後ろにも人の列がずらりと伸び、完全に列の一部になっていた。
何気なく振り返れば、自分たちが一時間前に立っていたあたりで、今まさに「まだかなぁ」と遠い目をしている人たちがいる。(あー、その辺、さっきまで私もいたわ。頑張れ頑張れ)みたいな、心の中だけで妙に先輩風を吹かせてしまう。我ながら性格が悪いけど、これが意外と気分がいい。
「幸果ちゃん、なんでニヤニヤしてるの?」
「え? 別にしてないけど」
「してるよぉ」
「してないから!」
なんだろう。順番が進むにつれて、少しずつ楽しみになってきた。
さっきから頭上を走るジェットコースターと、それに乗り合わせた乗客の絶叫。
視覚と聴覚から同時に伝わる迫力に、少しずつ心が浮かれてくる。
なんだかワクワクしてきた。
人生初のジェットコースター。いったいどんな世界なのかな。楽しみで待ちきれなくなってきた。
「いやー、迫力満点だったねぃ!」
「うん……。そうだね……」
あれからさらに一時間ほど並んで、ようやくアトラクションを乗り終えることができた。
だが、しかしだ——
「……あれ? 幸果ちゃん大丈夫? なんか顔色悪いけど」
「……べつに、全然平気だし」
嘘です。めっちゃ酔った。
まさかジェットコースターがあんなに揺れるものとは思わなんだ。
車にすら乗ったことがない幸果には、ジェットコースターのような過激な乗り物はまだ早かったのかもしれない。
さっきから熱いものが胃からふつふつと、喉の辺りまで湧き上がってきて気持ち悪い。
……まずい。朝に食べてきたもやし炒めを、今この場で吐き出してしまいそうだ。
せっかく腹に蓄えた貴重な食物。それを蔑ろになんてしたくないのに。
「あっ、次コーヒーカップ乗りたい!」
密かに悶絶している幸果にかまわず、ポメッコは意気揚々と手を引っ張った。
「え、ちょっと待っ……うぷっ」
「早くいかないと、また並ばないといけなくなっちゃうよ!」
痛いくらいに強引な手引きに、幸果も抵抗できず連れて行かれた。
目の前にはカップに入った人たちがぐるぐると回っている。
コーヒーカップ……なんて恐ろしい機体なんだ。
もうすでに、見ているだけで吐きそうなんですけど。




