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第1話:クズの系譜と、乾いた笑い

 そうそう……長女で弟がいるが、一人っ子気質であると話したのは先週の金曜日の事。

 覚えているだろうか。


 ちなみに、私は物心ついた時から、弟が邪魔で邪魔でしょうがなかった。


 私の世界を土足で踏みにじる、こいつの存在が。


 私だけの世界……。

 なぜ邪魔をする? あっちに行けよ。邪魔するな。

 私の、私だけの世界を壊すな。


 幼い私に常に「遊べ」だの「面倒を見てやれ」だの……なぜ?

 私は私のやりたいようにやらせてもらえない。

 私だけの世界を壊す、邪魔で邪魔でしょうがない、これが嫌いだ。


 と、まぁ実に私はそこそこイカれていた。自分でも笑ってしまうほどには。


 幼い頃から……そしてそれは、今でもイカれたままだ(笑)


 愚弟はクソ野郎にお育ちあそばれましてね(嘲笑)


 マジで、ほんっと頭悪いんだよね。

 学校で学ぶ教科書の問題は解けるから、組織内では「賢い」分類らしい。

 だが、社会に出てから教科書の内容がどれほど役に立っているだろうか。


 そうだなぁ、2割? あー3割? ってところだろう。

 言い換えれば、社会に出て必要なことは「テメーでどうにかしろ」ってこと。


 言葉通り、私はそう考える。


 誰かがご丁寧に教えてくれるわけがない。

 しかし、愚弟には、その「テメーでどうにかしろ」の部分がまったく備わっていない。

 愚かで、無知で、クズだった。


 外面ばかり良く、中身が空っぽ。

 実につまらない人間に成長したようだ。


 最初の結婚で二人の子をもうけたが、離婚。

 その後、すぐに今の嫁と再婚した。


 実の子から「パパ寂しいよ」と泣いてすがってきた、幼い我が子。

 しかし愚弟は、その幼子の涙の訴えに耳を傾けることはなかった。


 その後、実の子からは一切の連絡が途絶えた。

 唯一無二の可愛い我が甥には、それを境に二度と会うことがなかった。


 会わせてもらえなかった。

 仕方ない。


 クズでバカな愚弟。

 今では、まったく会う機会もなくなっているのだが、では、なぜここでそんな話をしているのか。

 私とて好んでこんな話をしているわけではない。


 話は至極簡単。遺産相続。


 という避けては通れない、よくある話なわけだ。

 一般庶民のごくありふれた家庭に、骨肉の争いが起きるほどの財産なんてないのだが。


 どうやら世間ではそうではないらしい。

 人は1円でも、タダでもらえるものはもらいたい、という心理が働く。


 そして我が家でも、ご多分に漏れずそうであったようだ……。

 まぁ正確には、愚弟の再婚相手が、金に汚い。


 私は一度もその嫁には会ったことはなく、当然その連れ子も同様である。


 なぜ、赤の他人の嫁とその子供が、我が家の遺産に口出しをしてくるのか。

 クズの嫁はクズ。


 マジで、どいつもこいつも、消えてくれ。頼む。


 親には生前、遺言書を作成してほしいとお願いしていた。

 約束は果たされ、遺言書は残された。

 だが、どこへ保管されたのか。


 謎……。教えといてくれよ、まったく。


 ふぅ……ため息が出る。

 今日は何度ため息を漏らしたことか。


 やれやれ、疲れた。

 発狂しそうだ。


 生前、親とはよく「我が家の1人息子」のクズっぷりを話していた。

 苦々しい思い出話だ。


「あんたの息子で、私の弟はバカでクズだよ」


「困ったものだね」と、親も肯定する。


 私は予測する。

 バカでクズな弟は嫁に踊らされ、たいした財産でもないのに「嫁の分もくれ」とおそらく言ってくるだろう。


 法律上、嫁に相続権はない。しかし、そんなことは関係ない。

 愚弟の相続分だと主張してくるつもりだ。厚かましいことこの上ない。

 実に不愉快だ。


 あいつらマジで、消えてくれないかな。


 ……そっか。自分でやればいいのか。


 乾いた笑いが込み上げる。


 さて、どうしたものか。

 推理小説に出てくる完全犯罪とか、トリックとか、アリバイ工作。

 あんなのみんなどうやって考えてるのだろうか。


 そして必ず、そのトリックを解き明かし犯人を逮捕してしまう。

 お決まりのパターン。


 まぁ、妄想を実行するとなると、シミュレーションも必要か。


 はぁ、やっぱ面倒だなぁ(苦笑)


 ダークウェブで検索する? いやいや、足がつくだろ。

 いっそのこと、ざっくり後ろから不意打ちを狙って、引き渡し条約のない国外逃亡?

 空港で身柄拘束されるのがオチだな。そもそも逃亡資金がない(笑)


 簡単なわけがないか。やれやれ。


 ……まさかの悪魔召喚とか。

 寿命と引き換えに消してくれないかなー、なんてね(笑)


 今日は、新月の夜だった。

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