とりとめのない時間
*
今や吹きさらしの屋上になってしまった北塔最上階は
穴だらけの不安定な床を残すのみだ。
いつ崩れるやもしれない、そんな合間に
霧から薄ら覗く空はどこまでも黒く、雨が降り出しそうだ。
魔女を見るエフェラルは無表情のままだ。
体を縛られてはいるが、口は封じられていないため
喋り出した。
「君はあの魔女じゃない・・・
不思議だ。“核”だけがあの魔女のままで
中身が変わるなんてことがあるのか?
どうやった?魂の円環に入ったのか?
古代の魔術を用いたのか?・・・
それなら“円環”はときを刻むはずだ。
いや、違うな・・・、錬成したなら
合一したと言うべきか、もしくは飽和か」
おいおい、変態さんよ〜。
何言ってんの?ちっともわかんねえって。
ちょっとこわいから黙ってて。
魔女だってほら、あほ面下げてんじゃん。
よだれまで垂れちゃって、まぁ、残念。
「魔女、(薬草の効用のせいで)よだれが出てるぞ。」
おネズミさまのフォローむなしく
「え゛、ら゛らってくひのかんかふがなふて
(意訳:お口が痺れて閉まりませんことよ)」
何言ってんのかわかんないから、まずは口拭けって。
「もう薬草は乾いてる、さっさと拭いて口を閉じろ。」
ラースは肩掛けかばんからハンドタオルを取り出し
魔女に手渡す。
「あ、あひはと〜ぉ。
(意訳:ありがとサンキュー)」
魔女は唇に張り付いた薬草をポロポロと剥がし
ハンドタオルで拭き取った。
「べっ!またちょっと口入っちゃった〜。
これ苦〜ぁい。美味しくな〜い。」
「薬草は食べるものじゃないからな。
飴はもっているだろ?・・・口の苦味は
飴でも舐めれば相殺されるだろう。」
「あ、そうだね。飴食べよ。
ラースも食べる?」
「いや、私はいい」
「あ、そういえば
かばんに入れてた飴とか食べた〜?」
「!お前っ、かばんに
あんな使えないものを入れて!!」
「え?ラース人形のこと?
寂しくならなかったでしょ?へへっ
すんごい頑張って作ったんだから〜。」
「私はあんなんじゃない!!」
「え〜?大きさとかソックリだよ。
重さだって一緒だよ?」
「!!そういう問題じゃない!」
こんなやりとりしてる間も
エフェラルはブツブツ言ってるよ。
誰も聞いてない。
わかってないな〜、変態。
小難しい話は需要ないんだよ。
あ、こっちにも飴ひとつ〜。
だが、変態は続ける。
むしろ体縛られてんのに、膝を立てて
魔女に寄ってくる。
こわっ!
「賢者は魔術を超える力を求め
呪いを解く法を天の都についぞ求めた。
そしてそれを持ち帰るに至るが
さらにナニカも持ち帰った。
魔女、お前はそれが何か知ってるだろう?
そういえばお前、さっきの力はなんだ?
何をしたんだ?」
気付けば魔女とラースの真ん前にいる。
こわっ!目が座ってる。
思わずラースは魔女を盾に、違う、逃げずに
魔女の膝の上で(小さいけど)両手を広げた。
「エフェラル、座れ。
今のお前は魔力切れを起こして
いつ倒れてもおかしくないはずだ。」
それはそう。
だって、(本棚の角に頭ぶつけて)頭から血吹き出してたし。
金的蹴られて(精神的にも)ダメージだってあるはずだ。
今だって(ちょっと気を抜いたら)意識飛びそう。
顔中血まみれで(すんごい)ホラー。
魔女はエフェラルの圧に少しひるんだが
グッと腹に力を入れ、エフェラルに言った。
「座ってください」
エフェラルを見ないようにして
口パンパンのシャルラッハロートに水筒を手渡した。
エフェラルは水筒を手渡すのを見ながら
膝を折り、正座になった。
「難しいことは分かりません。」
魔女は情けなさそうに目線を下に向ける。
「?」
エフェラルは魔女の目線を追う。
魔女の膝にはラースが立っていた。
「ラースも座って」
言われるがままラースは黙って座った。
魔女は自分がいた机の辺りを指さした。
「あれです。」
「?あれ?」
「あの、落ちてる紙、っていうか
書類っぽいやつです。」
「?」
ラースは膝から下り、魔女の指をさした方面に行き
濃紺のインクが沁みた書類を何枚か口に咥えてもってきた。
「これか?」
魔女の膝に乗せる。
「あ〜、・・・えっと〜」
魔女は手に取ると
読んでは何も言わず、次の紙に目を通した。
「?魔女・・・お前、わざと紙を踏んづけたな?」
ラース側から見える紙には
くっきりと魔女のブーツの足跡。
しかもグリグリしたから、はっきりわかんだね。
「!!ちっ違うよ??
事故だよ?!グリグリしてないよ!?
逃げようとしただけだよ!!
あ!見つけたっっこれこれ!!
これを見たから思いついたんですっっ」
言い訳もそこそこに魔女、当該の見出しを見つける。
ギリアウト寄りのセーフ。
『 触媒による可能性の応用技術 』
エフェラルは怪訝な顔をした。
「?ーこれが?
これは触媒を発現させる速度と
その持続時間に関する変哲もない報告書だ。
転用までは書いていない。
それ自体が属性魔法の威力を増大させるだけのものだ。」
魔女は足跡が見えないように隠しつつ
「“核”があればできるかな〜って」
ゲームでもやってたことだが
それっぽく言った。
「(“核”があるからという理由じゃないけど。
だって、魔法スキルにあるんだもん。)」
魔法スキル:炎の業(最上級魔法)
“火をおこす 深淵に熱を
炎の柱を吹き上げるとき
燻くすぶりは今を燃やす”
周囲に幾つもの炎を吹き上げる。
また同時に攻撃時に
異なる触媒を二つ使用可能。
両手剣や盾が望ましい。
もしなければ己の肉体を使え。
お前には両手両足があるだろう。
あのとき、魔女はヤケドするとか
怪我するとか思いもしなかった。
ただ、あの場をなんとかしたい一心だった。
グッジョブぐらい言ってくれてもいいのに
むしろ全然違う方向から説明を求められた。
「?“核”だと?」
エフェラルは眉をひそめた。
「あー、えっと〜ぉ
魔力のある人はみんな、“核”持ってますよね。
”核”って魔力の元みたいだっていうし〜
体を武器にすれば触媒使えるんじゃないかな〜って。」
「?!!」
新しい着眼点に、頭上雷が降ったような衝撃だ。
「た、確かに“核”はその力の元だ。
・・・それを・・・そうか。
具現化させるために触媒を“核”に乗せたんだな」
エフェラル、興奮して膝立ち。
「?の、乗せたっていうか、ち、近っ」
差し迫る変態。
「すごいぞ、魔女!これは発見だ。」
「いや、あの、近い」
ドン引き魔女、のけぞる。
「近いどころではないっ
根幹ではないか!
これこそ回答だ!」
やだ、変態の目がギラギラしてて
めっちゃキモい。鼻息かかりそうだから
もう少し落ち着け変態。
「ちょ、ちょっと座って」
膝を立てたエフェラルの股間も勃ってる。
おい、変態そこもお座りあそばして。
「!?っっや、落ち着いてっ」
魔女、涙目の顔面蒼白。
「落ち着いて座っている場合ではない。
これなら魔力の衰えがあろうと
その“核”を媒体に転用できる。
魔女、やはりお前は私の子をー」
「ひっ!!」
魔女の手を取ろうとしたエフェラル。
「う・・・」
“う”、まで言った後、動かなくなった。
「う?ー・・・?」
ピュー
「あっ頭から血がっ!!」
エフェラル、興奮により血流が良くなりすぎて
あっちこっちに弊害をもたらし
とうとうそのまま倒れた。
見た目だけは褐色肌の理知的なイケメンだ。
気を失ってなお、おっ勃ててる変態なだけ。
「・・・何がしたいんだこいつは・・・」
ラースは倒れているエフェラルを見た。
「どっっどうしようっラース!!
こ、この変態死んじゃった?!
血がいっぱい出てるし、(なんかおっ勃ててるし)
死んじゃったかも!」
「大丈夫だ、(変態だが)死んではいない。
さっきも倒れたが、すぐ意識を取り戻した。
奴は(変態にも関わらず)最上級魔法使いだ。
これぐらいで死ぬような人間ではない。」
「へ?そうなの?(変態だから?)」
ラースに目を向けていた魔女に
暗い影が入り込んだ。
「そうだ。この程度で死ぬわけがない。」
やったー!変態復活ー!!
エフェラルは起き上がり
何事もなかったようにあぐらをかいた。
縛られた両手で額の血を拭いながら話し始めた。
「そして、私はお前をよく知ってる。
・・・ラース。
ラース・ヘルヴェルト・スタイン。」
「ほら見ろ、死んでないだろ」
「!!(よかったけど、よくない)」
魔女の心は複雑だ。
エフェラルは魔女の膝上のラースを無表情で見た。
「将来を有望視された若き魔法の使い手であり
アカデメイアにおける成績は常に首席。
さらに・・・
お前はあのトゥリウスの弟子だったな。」
「え、ら、ラースってお師匠さまいたの?!」
ラースは魔女を見上げ、鼻先で笑った。
「魔法において、師と呼べる者を挙げるなら
その人をおいて他にいない。」
「その弟子が、魔女の使い魔とは
さぞかしトゥリウスも自慢だろう。」
やだ、嫌味じゃん。
ラースは黙っていた。
魔女にだって、これが嫌味だってわかった。
「(ムカつく奴だな〜。イケメンかもしんないけど
こういうこと言う奴って嫌いだ〜。
そんなこと言わなくていいじゃん。)」
そう思った魔女は
「使い魔じゃありませ〜ん。残念でした〜ぁ!
私の自慢の相棒なんです〜っ
しかも助けに来てくれました〜ぁ!」
鼻息荒く言い返した。
エフェラルがジッと魔女の顔を見た。
「(な、何よ。無表情のイケメンのくせに
変態嫌味イケメンめ〜ぇ!!
睨まれたってこわ、こわいけど
こわくないんだからね。)」
ちょっとだけたじろぐ。
エフェラルはあらかた顔の血を拭うと
魔女に微笑んだ。
「君は、ーあぁ、君はあの魔女ではない。
失礼。・・・
ならば、提案をしたい。
私の伴侶となるのは悪い話ではない。
私はこの王国で重責を担う職に就いているし
家柄も申し分なく、三大魔法公に挙げられる。
魔女は一世一代の魔力の譲渡が行われるが
私に任せれば、その力は子に継承も可能だ。
家格と同時に血筋を確かなものにできるだろう。
君はこの王国でその膨大な魔力と
その力を存分に発揮することが可能となり
この世界の、・・・ああ、そうだ
ー 火鑽女だとかいう古びた儀式すら、」
『おい いい加減にしろ 能面ヅラの ど変態』
一粒の光が、空からゆっくり落ちてくると
転送魔法の光と風が巻き上がる中から
トゥリウスがあらわれた。
「黙って聞いてりゃ、ペラペラペラペラ
あ〜、やだやだ。自慢風自己紹介。
知らねえのか?おしゃべりな男は
嫌われんだぞ!(トゥリウス調べ)
おめえはほんっっとーに
情緒ってのがねえ。
言うに事欠いて、火鑽女が古くせえ?
何言ってんだ。
火鑽女がどういう役割か忘れたか?
脳みそ湧いてんのか、湧くわな、100年だもんな。」
「っ??トゥっトゥリウス?!」
それまで一切の表情を排したエフェラルの顔に驚愕の色が見えた。
トゥリウスはエフェラルの襟を掴んだ。
「何をするっ」
「うるせえっ変態。阻害なんかしやがって!
俺は見たぞ!!俺の師匠を
手籠めにしやがって。
殺す。」
エフェラルはトゥリウスをじっと見つめていたかと思うと
笑い出した。
「っく、くくっ、ははははっっ
生きていたのか。素晴らしいな。
だがトゥリウス。
残念だったな、魔女はすでに」
言うか、その瞬間。
エフェラルは殴り倒されていた。
「?!っっ」
トゥリウスはエフェラルにまたがっていた。
「!」
ッッゴっ!!
トゥリウスの拳から血飛沫が上がった。
「師匠に手ぇ出してタダで済むと思うなよ!!
下半身をちょん切って
火鑽に焚べてやらあっ!」
ッッガッ!
この圧倒的、数十秒の速さに起きたドラマに
口をあんぐり開けたままの魔女は、我に返り思わず叫ぶ。
「だっっだされてないっ!!
てってごめられてないからっっ
ちょん切らなくていいからくっくべないでっっ」
よく分かってないけど
全部否定形で言ってみた。
「え」
ピタ。
振り抜こうと挙げられた拳が止まる。
エフェラルは無表情で殴られっぱなしだ。
トゥリウスは魔女の顔を見ないで聞く。
「ー、し、師匠、犯られてないんすか」
「?!(師匠?じゃないけど)う、うん」
「そっそれはつまり、あの、えと、
お、男のアレがじょ、女性のあの
大事な部分に出たり入ったりするっていう」
言うな言うな、説明するな。
「?!?!んなっ?」
ぅおぉっほん!!!
わざとらしい大きな咳払いが魔女の肩から聞こえた。
「師、トゥリウス。
魔女の純潔は保たれている」
ラースだ。
「ま、まじ?」
そろーり、と目線だけトゥリウスは魔女を見た。
魔女も、トゥリウスを見た。
「しょ、しょj」
言葉にするな、やめろ。
トゥリウスが言い切る前に
「わぁーっっ!!
わたしは無事ですううっ
なあんにも出入りしてませええんっっ」
魔女も大概。
トゥリウスの口がポカン、と開いて
目が見開いた。
「?!ししょっっ、え、あ、ーめっっ・・・」
魔女を見つめるトゥリウスの口は、言葉を出せない。
「ししょー・・・魔女?」
「え?・・・あ、はぃ・・・
(魔女だけど師匠ではないんだけど、な)」
みるみるうちにトゥリウスの顔は赤くなり
エフェラルにまたがったまま
両手で顔を覆い、後ろに倒れ右に左に転がり出した。
ゴロンゴロンゴローーっ
「ぅわああ〜〜っっっっ!!」
「?!な、何、ど、どどどうしたの?!」
魔女は目の前に転がりだす男に困惑した。
「だぁっっ!〜〜っあ〜ぁぁあ〜っっ!!」
一人悶えている。
「え、ちょ、ちょっとら、ラース・・・
あ、あれ、なに?・・・ていうか誰・・・」
困惑魔女、ラースに助けを求める。
「放っておいて構わない。
ああなってしまっては
しばらく話しかけても何をしても無駄だ。
彼は・・・ふぅ・・・
非常に心外だが、私の師である
北塔主、最上級魔法使いのトゥリウス氏だ。」
「え?!あ、あの人が?
・・・転がってるよ?大丈夫なの?」
「ああ、発作のようなものだから
ほっとけ。そのうち直る。」
だって転がってんじゃん。
どうなってんの、この国の魔法使い。
変なのしかいないじゃん。
ラースは小さくまた咳払いした。
「それより」
血まみれのエフェラルを見た。
トゥリウスに倒され、そのままマウントポジションで
バッコバコ殴られ
ぐったり、意識もないようである。
「!!っっこっ今度こそ死んじゃう!!」
魔女はエフェラルに走り寄った。
「だっっ大丈夫ですか!えなんとかさん!」
“エ”なんとかさんという
考える気すらない呼び方だが
魔女は怪我した人を放っておくこともできず
とりあえずエフェラルの肩を小刻みに叩く。
「大丈夫ですかーー?!
生きてたら返事してくださーい!
わかりますか〜?!」
「放っておけ ー」
「!シャル・・・」
ずっと黙っておにぎり食べてたシャルラッハロートは
手の中のおにぎりを見つめて言った。
「ダメだよっ!(変態だけど)怪我してるし
頭から血も出てるし、・・・
な、なんかー め、目が変だよ・・・」
シャルラッハロートはちら、とエフェラルを見た。
とうとう変態、白目むいて完全気絶。
両鼻から鼻血を出し
やや口も開き気味で
口の端が切れている。
ちょっと危険な状態の怪我人の様相だ。
骨は折れてない(多分)。
「とっとりあえず薬草をっ」
言いながら、口にも薬草をグイグイとぶっ込んでいた。
エフェラルの口から草が生えているようだ。
「こっこの人、変態だけどっ
この国の三大なんとかなんでしょ?!
死んじゃったら大変じゃんっ
すんごい魔法使いならきっとなんか
誰かの役に立つっていうか変態だけど
イケメンだしすごい人なんでしょ!?」
「(それじゃあ薬草の意味がないんだが・・・)」
ラースは呆れながら見ていた。
「俺の方が 天才っすよ。
弟子だし。」
魔女の真後ろから、声がした。
「ふぇ?」
振り返ると
「ッ!!あっ!こっちっ見ないでっ!
見ないでっっ」
トゥリウスだ。
どうやら正気を取り戻したらしいが
魔女にとってはあんまり状況は変わってない。
相変わらずトゥリウスの顔は真っ赤だ。
「(耳まで赤い・・・照れ屋さんかな?)」
ラースはため息をついたが、簡単な状況説明を試みた。
「師、トゥリウス、ー 魔女は、」
トゥリウスは両手を出して顔を隠そうとしながら
「あっ!あの!!あっ!
こっちは見ないで、そのままで!
俺、じゃない、僕、トゥリウスって言うんすけど!
ま、あ、魔女さんの弟子してますっ!
してるんですけど、そのっし、知らないよね!?
転生したって聞いてさっ心細くないかな〜?って
なんていうかなっ僕、魔女の弟子だし
まずはご挨拶をしようと思ってさ、うん、
こんな可愛い子が、っていうか
“核”はあん時のクソBBA、違う、
前のままだけど、ほら、なんか雰囲気も
見た目も可愛くなっちゃってさ
早く会わなきゃな〜なんて思ってたから
探したんだよ、君のことっ
あ、大丈夫、僕は魔女の弟子だから
引き続き弟子のまんまだよ。
でもびっくりだよ、魔法探知で見つけたら
エフェラルみたいな変態に襲われて
絶対ヤラれてるって思ったから」
ここまで息継ぎなしに喋ってるし
だいぶ正気じゃないらしい。
ラースは深いため息をついた。
「師よ・・・(はじまった)」
ラースは魔女の肩に上り、トゥリウスをマジマジと見た。
トゥリウスはラースを手招きすると
自分の手に乗せ興奮気味だ。
「ッおい、ラース!」
「お久しぶりです」
「挨拶はいいから聞けよっあの魔女」
言いかけて、魔女を気にして小声に微調整した。
「魔法少女じゃねえか!
めっちゃ可愛いだろ。
見ろ、わかるかラース。
あの陰険で邪道な魔女じゃねえ
あれこそ理想の魔女っ子だ。
俺があんな可愛い子の弟子とか
やっべえ、・・・ふ、ふひひひ
マジやる気出てきた。」
ラースは持ち上げられるままに、魔女を見た。
魔女はソワソワこちらを気にしていたが
「?・・・(とりあえず手振っとこ)」
ラースを見て手を振った。
なのになぜか手を振り返すトゥリウス。
「はぁ、師よ。“あの”魔女は、確かに転生してきたが
時々“あの”魔女に戻ることがある。
ー、なぜかはわからないが。」
「?んぁ?んなこたぁ、どーでもいいよ。
めっちゃ可愛いじゃねーか!
なんでもっと早く俺を呼ばねーんだよっ!」
「は?ー あなたは
“核”の修正に入っていたではないか。
出られる状況では ー」
「んなの治しながらだって来れるっつーの。
あーマジかー。
来て良かった〜ぁ。
運命だな〜、こりゃもう、運命だな〜。
可愛いなぁ〜、俺の師匠〜、
どーしよっかな〜。ふ、ふふ、あっ。
なんか上げちゃおっかな〜、魔法のステッキかな〜。
素敵なステッキー、な〜んっつってピンクのがいいな〜。
あ、フリフリミニスカもいいよな〜。」
ドス黒い威圧感のある壁が、トゥリウスの前に立ちはだかる。
“っヒュっ”と、息を飲み込む。
飲み込んだついでに、後退りしながら声が漏れ出た。
「せ、聖獣バロン?!
な、なんで、いやなんでここに」
握られたままのラースは
シャルラッハロートに差し出されている状態だ。
首だけトゥリウスに向いて、言った。
「ー 今は訳あって・・・」
ラースはなんだかすっごく疲れた。
「それはそうと、師よ。
オーゲルはどうしたんですか。」
トゥリウスは魔女にヘラヘラしつつ言った。
「?あれ?
一緒にきたはずなんだけど居ねえな。」
「え?」
その時だ。
穴だらけの不安定な床が崩れると同時に
「ゔぉえっっ!ゲホッっ!!
ングっっっ!お゛ええ゛ッッっ」
部屋の隅でエフェラルがえずいた。
*
オーゲル情報:転送魔法で送ってくれたのはいい。
でもここ、星見塔の扉の入り口前。
つまり“核”ナシは入れない。
トゥリウスあの野郎。
上等だ、登ってやんよ。
トゥリウス情報:今日から俺は
師匠のために生きます!!
全力を尽くします!!!
エフェラル情報:誰にも殴られたことないのに
トゥリウスに初めて殴られた。
気づいたら
口いっぱい薬草詰められてて
初めて死ぬと思った。




