軛の怪物 ①
*
男どもがコソコソ何か喋っているよ。
どうせロクでもないことだろうけど
ちょっと聞き耳立ててみようじゃないか。
?
エロい話をしてるわけでもなさそうだ。
何かもめてるみたいだよ。
聞き耳立てて、そーっとね。
あぁだめだめ、そーっとだよ。
.....
「お、押さないでって!」(必死)
「早く開けろ、アグリッパ」(苛立)
『兄やん、ビビっとるんか』(挑発)
「び、びびるだろ、こんなのっ!」(緊張)
「鍵の向き違うわよ」(苦笑)
「手も震えてるぞ、大丈夫か」(心配)
「僕があけましょうか、アグリッパ君」(“ゾイ”)
「穴、見えとんか?兄やん、そこちゃうて」(妖精)
「見えてるよ!!」(きゅうり)
「こういうの初めて?」(ニヤニヤ祭祀王)
「やっぱり鍵をよこせ、私がやる」(片腕勇者)
「彼に任せよう。緊張してるだけだ」(愛の農業勇者)
「僕、鍵なくても開けられますよ?」(“ゾイ”)
鍵穴ひとつに全集中の男どもの話なんて
聞き耳立てるほどじゃなかったな、諸君。
だが、落胆することはない。
男どもの会話なんて聞くだけ無駄だ。
一生このレベルから変化することはない。
あいつら連むと、精神年齢八歳の子供になっちゃうからな。
そのうちウンコの話で笑い出すかもしれん。
「まだか?!」
見てるだけがもどかしく
「兄やん、きゅうり食べてまずは落ち着こか。」
アグリッパに一言、物申したくもなる。
「あの〜、僕、トイレ行きたいんですけど
もう少しかかりそうですかね。」
「あ、俺も行っとこかな〜」
「ギーズル、お前はタバコ吸いたいだけだろ」
もたつき過ぎで、祭祀王もイライラしちゃって
タバコを所望。
「この国入ってからずっとタバコ我慢してんのよ」
「この国自体が禁煙だろ。我慢しろ」
「僕は純粋にうんこ行きたいです」
『・・・ぶわははははっっっ』
ほらな。
うんこで笑うじゃないか。
「〜〜っちょっ!
ちょっと黙っててっ!!
ミケラ!きゅうりはもう食べたよ!
鍵は自分で開けられますっっ!!
ゾイくんっトイレはさっきも行きましたよね!
二分以内に帰ってきてください!
ギーズルくんっタバコはこの塔を出てから
吸ってくださいっ!ほらっきゅうりあげるから!
タバコの代わりにかじって!!
みんな僕の言うこと聞いて!!
僕はと、年上だから!!」
年上だからという理由だけで
アグリッパ(二十八歳と三ヶ月)は鍵当番へと返り咲き
今、年上だからという使命感だけで
一般人にも関わらず勇者御一行に紛れていた。
「ッふぅ〜〜〜〜〜!!!」
扉を前に深呼吸のためにわざわざ両手を空へピンと伸ばした。
「ー、よし」
アグリッパは鍵の向きもチェックしたし
深呼吸したし
きゅうりも食べたし
鍵穴もしっかり見たし
何より彼らに指示まで出した。
手は震えていたけど鍵を差し込んだ。
これよりしばし前のこと。
イロモノパーティと
魔女宅御一行は、西の星見塔、最上階へ無傷でやってきた。
ここへ来るまで、魔物がワラワラ出てきた。
不死人、インプ、よくわからないキモすぎるやつ。
そりゃもう驚く出現頻度だったが
勇者並びにその他諸々がスッキリ撃退した。
だが特筆すべきは、そのほとんどは我らがジョセフィーヌの白い粘液が活躍したのは言うまでもない。出現する敵を白い粘液で押さえ込むなんて、さすが先輩。
え?扉の前にいないじゃないかって?
・・・なぜならジョセフィーヌってほら、その。
太ましぃ、じゃなくはち切れんばかりに健康的じゃないか。
無意味なデカさだ。
何せ、階段幅からはみ出るデカさだ。
本人さまは頑なに一緒についていくと言う。
舎弟兼、翻訳機アグリッパの切なる申し出にて
今、ジョセフィーヌは塔にいる。
ここにいないだけだ。
そうして、ようやく最上階、扉前へやってきた。
両扉の観音開きの取手には、頼りのない鎖がついただけ。
その先についているのが不安を掻き立てるお安そうな南京錠。
アルファイことアムラン(片腕勇者)は
南京錠を持ち上げるようにして作りを見た。
「(ー、こんなすぐに壊れるようなもの・・・
いっそちぎってしまうか・・・)」
持ち上げた手に力を込めようとした。
「ー、ちぎったらダメよ、ボリっ」
ギーズルはきゅうりをかじり、微笑んで見ていた。
「な?!」
「あぁ、お前にはまだわからないか。
錠、ちゃんと護符だからな。
ちゃっちいからって、力任せにやってみろ。
もう片方の腕も、なくなるぞ」
「!」
「ボリっ」
片腕勇者アルファイ、ギーズルのかじるきゅうり見て
思わず腕を引っ込めた。
綺麗な歯型が鮮やかすぎて
かじられたたきゅうりに自分の腕が重なった。
「(流石に両腕は困る。)」
ギーズルの後ろからゾイは顔を出して、ギーズルを見上げ戒めた。
「あー、もう、ギーズル様、脅しはダメですよ。」
ゾイに気付いたギーズルは残ったきゅうりを
錠に向かってブラブラさせ
「あら、ゾイ。脅しじゃないわよ。
腕一本で済めば良いとこ・・・ってアンタ
また、うんこ行ったの?」
嘘だろ?また、うんこ出たのかよ、という顔をして
またきゅうりをかじった。
ゾイは笑顔のままだ。
「ええ、僕、うんこは刻む派なんで。
魔女さまんちで食べたご飯が良かったんですね。
野菜多かったし・・・」
言うと、ゾイはギーズルがきゅうりに振りかける塩をひとつまみし
錠に振りかけた。
「なっ何をっ!」
うんこ行った手、洗ったんでしょうね?
錠に浮かび上がるのは複雑な魔方陣で
呪文が鎖に巻き付いていた。
「へへ、これなら見えるでしょ?」
「呪護符か・・・?」
アグリッパがアルファイの背後から声をかけてきた。
「それ、古代魔法のひとつなんだって」
「古代魔法?」
錠前、しゃがみ込んだアグリッパは
アルファイを見上げた。
「これはね、アルファイルス君。
エフェラル様が作ったんだよ。
その、中のものを出さないために。
君が、呪いを受けた時に」
「私が呪いを受けたことを知ってたのか」
「あぁ、あの、知ってたのは
エフェラル様だよ。
君が知ってたかはわからないけどその頃は
秘術師の仲間が前後してどんどんいなくなるし
デルゥエ先生もいなくなっちゃって相談できなくて
オラフィス様の姿も見ることがなくなって
どうすればいいのかわからなくて・・・その
・・・だから君を迎えにも行くのが遅くなって
ごめ」
言いかけたアグリッパの言葉は遮られた。
「いい、謝ることじゃない。
何があったかは私にも知るところだ。
・・・だが、私が呪いを受けたのと同時期に
エフェラル様がこの錠を作ったのか?」
「う、うん。」
アルファイには新事実だったと言っていい。
自分が呪いを受けたことを知り、この錠を作ったのが
北塔のあのー 魔女を連れ去った男、エフェラルだったとは ー。
あの時ローブから覗いた顔は、無表情だった。
「(呪いを受けたのは私なのに
連れ去ったのが“魔女”なのはなぜだ・・・
贄が必要じゃないのか?)」
だから余計に目的がよくわからなかった。
「(北塔エフェラル ー、魔法王国の三大魔法公。
本人は元、魔法隊長で大きな魔法を使役する。
だが、あの男はオラフィスによれば
栄誉を捨て研究に没頭しているとか ー
魔法隊長を辞するに至った経緯は
誰も知るところではないが
錠を作る理由が見当たらない。
そもそも彼は秘術師と関わりがないからな。
・・・この国では秘術師は特異な立ち位置なだけに
誰も関わろうとしないものだが。・・・
そんな男がなぜ・・・
・・・まさか魔女が関係してるのか?)」
ふと魔女のことがよぎる。
アルファイにはその点と点の繋がりは、まだわからない。
「それで、あの・・・」
アグリッパは続けた。
「秘術師も互いに疑心暗鬼になってて、だから
僕、その、・・・」
言い淀むアグリッパに、愛の勇者ディオは
「どうした、アグリッパ」
純粋に心配。
「まさか脅されてるのか?!」
疑心暗鬼も極まれりな片腕勇者は
アグリッパが何者かに脅されてる要素を見出し
「やだ、アグリッパ、お前、うんこ行きたいんじゃ・・・」
祭祀王ギーズルはアグリッパの便意を配慮し
「ギーズル様、今はそういうタイミングじゃないです。」
スッキリ従者のゾイはギーズルをたしなめる。
だが
『兄やんっもぉ言うてまえってぇ〜もぉ〜
ホンマだるいわあ〜。』
真実を知るただ一人の妖精ミケラの一言に
アグリッパは意を決したか!?
「あー、もうっ!
わかったよ!!言えばいいんだろ!言えば!!
学徒証の再発行のために北塔に来たついでに!!
エフェラル様に相談したんだよ!!」
うんこじゃなかったんだ。
「え?別の学徒証を持ってたんじゃないのか?」
『いやいや、あんな?
二回目の“学徒証”紛失ですねん。
なくしたんは通算三回!三回ですわ。
なくし過ぎでしょって思ぉたでしょ。
けどうちの兄やんにとっちゃアルアルなんですわ〜。
お母はんも流石にブチギレますわ。
だって三回やで?学徒証に名前書いてんのに
一回目は〜、あばれ馬んとこやろ。
ほんでぇ二回目がぁ、なんやったけ?
あ、星図室や、星図室。あ(そ)こで〜』
「あっ!あれはきゅうりと一緒に忘れただけだから!!」
『せやかて兄やん・・・星図室には
しなしな〜になったきゅうりしか
残ってなかったやん・・・
エフェラル様に学徒証預かってるから
北塔に来い、言われたやんか。』
「!!」
(変態に)脅されてる筋が有力な件。
「とっとにかく、エフェラル様に相談したんだよ!
そしたらエフェラル様が
『鍵を作ってやるからこの星見塔の最上階に
オラフィス様を呼べ』って言うからっ」
「それで?」
冷静にアルファイは問えば
アグリッパはローブの端を握り締めていた。
「っ僕らは、オラフィス様がデルゥエ様と
ああ、あのお二人は一緒に行動してて
夕方五時には祈祷室にこもってしまうのは
知っていたから、その、ー」
いつのまにか両手を組んで、懺悔するような顔になった。
唾を飲み込む音が聞こえた。
アグリッパは下を向いた。
「騙したんだ。・・・お二人を・・・
デルゥエ様とオラフィス様を。」
「騙した?!」
ギーズルは目を丸くした。
「あんた、秘術師でしょ?」
「え、どういうことですか?ギーズル様」
ゾイが不思議そうな顔をした。
ギーズルはきゅうりのヘタをつまみ、アグリッパに向けた。
「秘術師ってのは
隠秘を所有する、秘伝を持つ者だ。
秘術師は”白”の魔法を使役する魔術師でもあるし
自然の脅威より
自然そのものに活動的な力を信仰してる。
そして
彼らは宇宙を観る。
それらはのち、天啓となって
人に、自然に落ちてくる。
人に落ちれば、それは星の名の下に
かくして相対的に自然の変わりゆく様と対になり
神聖なる”神々と人間の交わり”となる。」
イケメンオネエ、祭祀王ギーズルが
珍しく解説してる。
「つまり?」
よくわからなかったゾイは、要約求む。
「つまり・・・神聖なる真実を伝える者は
嘘偽りは御法度ってこと。
伝達者である秘術師が
人、(しかも偉い人)騙しちゃダメでしょって話。」
Oh、アグリッパよ。
罪深ききゅうりだな。
「ッッ〜〜〜〜っっ
あ〜っっもぉ〜ダメだぁっ
祭祀王さまにもばれた〜ぁっ
じいちゃぁ〜ん!
ごめんよぉ〜ぉっ!!」
「アグリッパ、ダメじゃないから早く言え、
どうしたんだ」
『兄やん、せやで、
言ってもうた方がラクなるで』
ジィッとミケラを睨みながら
アグリッパは汚れてもいないローブを払いながら、諦めた。
以下、アグリッパによる解説編。
星見塔の最上階にいる人は、
なぜそこにいるのか、ーだ。
「デルゥエ様に、“星の結晶望遠”が割れたって
言ったんだ。」
「デルゥエ?結晶望遠?」
ディオは首を傾げた。
「あぁ、オラフィスの補佐で、副官みたいなものだ。
“結晶望遠”は、星見の預言に必要な望遠鏡のことで
その名の通り、結晶でできている。
この宇宙を見るのには必要なものだ。
だがアグリッパ。
あれは簡単に壊れるような代物じゃないはずだ。」
「うん、だから、僕らはさ
ー 火鑽女さまが落とす灰を使って
結晶をめっちゃくちゃ汚したんだよ。
灰なら、ほら、礼拝堂で手に入るだろ?
それを水と一緒に混ぜてこねて
結晶望遠にぶっかけたんだ。
ピカピカだったから可哀想だったけど。
でも、それだって
あんまり意味がないことわかってたよ。
あの結晶望遠は音叉が必要だからね。」
「音叉?ー」
ゾイは聞きなれない言葉にアルファイを見た。
ー 完全に解説を当てにした顔だ。
アルファイはめんどくさがるわけでもなく、話だした。
「音叉は固有の振動数を発する金属だ。
結晶望遠を見るためには、特殊な周波数の音で
星の位置を正確に測る必要がある。
周波数が一致すれば見える。」
「うん。だから僕、セルヴィス君と協力してさ。
セルヴィス君って物質の中身を変えるの得意でしょ?
だから、音叉の一部だけ変えてもらったんだよ。
なかなか良い案だと思わない?」
「っなっ?!
まさかお前、音叉の周波数を変えたのか?!」
「うん。音叉だけじゃないよ?
すぐバレちゃうと困るからね。
結晶望遠の結晶を
炭素にしたんだよ!
綺麗でしょ?
見た目だけはバレないよね!!
どっちも綺麗だし。」
アルファイは卒倒しそうだった。
「(あれはこの王国や世界の歴史を
預言し、決定づけてきたものだぞ)」
アグリッパは急にイキイキした。
ちょっと興奮してるのか、早口。
「ただの炭素じゃないんだよ!
あの部屋の結晶だって作り変えたんだから!
セルヴィス君がやったんだけどさ。
星の軌道に準じて変化させるんだ!それに
毎日、結晶の中身が変化するように工夫してさ〜
ふふふったまに普通の炭素になっちゃって
失敗したこともあるけどさ〜
練習代わりになったし良かったよ!」
自分のことじゃないのに自慢風自慢。
「それで、どうしたのよ。すごいじゃん。」
食いついたのは祭祀王だ。
「!あ、ありがとうございます!!
あのでも、それをやったとて子供騙しなので
ぼ、僕のたて笛を・・・」
アグリッパ、トーンダウン。
「は?たて笛ってなに、笛?」
ディオはミケラに聞いていた。
『兄やんご愛用の楽器ですわ。』
アルファイ、ピンと来る。
「まさか・・・」
真顔になった。
「音の干渉に使ったのか?」
「音の干渉って??」
ディオは珍しく難しい考えを放棄していない。
「おそらくアグリッパのたて笛の音と
音叉の音をぶつけて、逆位相、あー、つまり
音が聞こえなくなるようにしたんじゃないの?」
ギーズルは腕を組んで扉に目を向けながら、言った。
「そっそうです!」
アグリッパはこの悪事が祭祀王にバレたことなど忘れたようだ。
「結晶望遠をオラフィス様が見るのは
必ず夜の19時と21時、夜中の0時なんです。
音は正しく鳴るんですよ!けど
結晶望遠で正しい星の通り道を測れないんです!!
僕が笛で邪魔して位置がズレちゃうからね!
だから、その時間だけ僕がたて笛を吹けば
?・・・ーっっあっ?!」
『(ー どうせ忘れたんだろ
たて笛・・・)』
みんな思ったし、そういう目で見た。
「わ、忘れちゃいました・・・笛」
察したか、アグリッパ、小さく頭をかいた。
だが、この幼稚ながらも幾重にも手の込んだイタズラは
秘術師の長、オラフィスと
その補佐であるデルゥエを捕らえるには
十分な時間と、イライラを彼らに与えた。
「デルゥエ先生はすっっごい怒ってましたよ?
オラフィス様も何事かと最上階へ来てくれて。
でも僕、こわくて顔が見れなかったんです。
なんか雰囲気が違うっていうか・・・あぁ
その時に、エフェラル様も星見塔に来てくれて
魔法をかけてー」
「ー、で、オラフィスと
デルゥエはこの中にいる、と ー」
扉を見上げるギーズルの言葉にアグリッパ顔を振った。
「いるのはオラフィス様だけです。
デルゥエ先生はもう・・・いません」
泣きそうな表情は何かを知っているようだった。
だが、誰も“何故”とは聞かなかった。
ある者は単に“死んだ”と思っただろうし
またある者は“不慮の事故”を想定した。
“幸運”にも生きている、とは思わなかった。
アグリッパが唇を噛んだのを見たら
誰も事の顛末を知りたい、とは思わなかった。
こういうとき、示し合わしたかのように
男どもは目を合わせないでいた。
男には、そういう“とき”がある。
彼らなりの礼節を重んじてる節が、ある。
アルファイだけはその理由を知っていたから
わざと質問した。
「いつからだ。」
「?え、っと今日で三日です!」
赤くなった目をしばたたかせたアグリッパは
わざと明るく振るまう。
「(まだ三日か・・・)」
アルファイは頭の中でとある思考に思い当たる。
一方、ギーズルは別の思考だ。
「は?三日??
食べ物ないじゃん。大丈夫なの、それ。」
「あ、それは対策済みです。
僕、きゅうりいっぱい置いといたんで。
とりあえず岩塩袋ときゅうりの箱、五箱です」
『(きゅうりだけで三日・・・
しのげるもんか?岩塩・・・?)』
みんな思う。
きゅうりがあるだけマシだろう、ぐらいには思った。
そもそもオラフィスは、悪事を働いているのだ。
人を呪わば、墓三つと言うが
今んとこ片腕ない勇者がいるから
少しばかりお腹が空いても
きゅうりをかじって、塩で耐えるべきだ。
ギーズルの口が開いた。
「エフェラルってのは、魔術師、よね ー」
「はっはい!
この魔法王国でその、北塔で主に装備とか武器とか作ったり
あ、学徒証とか紋章も作ったりしてるすごい人で
それと、研究棟の責任者で
あー、えと、元々は魔法隊長さんです!」
「へぇ、そんな人がなんで装備作ってんの?」
「トゥリウス様のためです」
「?」
「あ、この話って箝口令敷かれてるんだった!
でも、ま、いっか〜。」
アグリッパは錠に差し込んだ鍵を手に扉を見上げる。
アルファイには身に覚えのある男の名前が出た。
「(師、トゥリウスのため???)
おいっアグリッパ、なんだって?」
「え、君知らないの?!
ほら、エフェラル様の弟のマクシミリアン様がー」
会話を遮断する 咆哮する音 ー。
その音を、誰もが、ーここにいる皆が
音なのか、うめき声なのか、雄叫びは
塔全体の壁を振動させ、未知の何かに反応した。
「?!っ中だ」
反応したのはディオだ。
鍵は勝手に回り出した。
護符の呪文字は落ちながら消えていき
扉を覆った真っ黒な霧が現れ始める。
二度目の咆哮に、辺りの空気が張り詰めた。
*
声は 重油の如く低く粘る
愚かなり 愚かなり
未練にまとう怒りに震え
今、お前は因果と共にあり
穢された 火も
腐り落ちた 誓いも
もはや
昏き闇に
宿痾に溶けた
黄金に輝く流星が天から落ちた
錆びた車輪が運命を動かし
奈落の底の深淵が口を大きく開いた
おお、暁に輝く命の鼓動よ
おお、死を待つ冷たき夜の扉よ
罪にまみれた闇に浴するものらよ
みるがいい
お前たちを分かつものが
お前たちが信じるものが
きくがいい
神はとうに大地を去ったのだ
岸辺から聞こえる慟哭は
今や誰の耳にも届かない
しるがいい
シク・ナム・ワカ
ー 神は 死ぬ か
ムバ! ムバ! チェ!! チェ!!!
ー そんなことはない、あっては ならぬ
オーダ! オーダ!
ー 口に しては いけない
口に しては いけない
ー シク・ナム・ワカ
ー 神は 死んだ のだ
首につながれるは 因果の鎖
名も無き虚ろに 彷徨う落とし仔
その者を 軛の怪物という
*
オーゲル情報:やべ、うんこいきてえ。
トゥリウス情報:ぶえっっくしょいっっ!!
誰か俺の話してるな。
美女かな〜?
ラース情報:シャルラッハロート!!
お前が向かってるのは南だ!
シャルラッハロート情報:ちゃんと耳を強く引っ張れ
エフェラル情報:星見塔の鍵?
あぁ、確かに作ったな。




