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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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83/86

無知、既知、熟知





*






一方、先を急ぐ

イロモノパーティーとその他、は・・・


「え?鍵?」

アグリッパはアルファイの問いかけに、身を固くした。

だって鍵、持ってねえもの。

学徒証はある。

それときゅうりもあるし、飴もまだある。


でも鍵は、ー ないんだな、これが。


アルファイはアグリッパの前に立ち

鍵を取り出し

「・・・これは星見の塔の鍵だ。」

謝ろうと思うが、話の切り口が見つからない。

ごめんちゃい、と言えたらどんなに簡単か

そんなことはわかっている。

このまま素知らぬフリで星見の塔へ行き

しれっと鍵を使うことのできない実直さと

アグリッパへの申し訳なさが、アルファイの心を押した。


けどその先は、アルファイが紡ぐもの。

ごめんちゃ〜いって言っちゃえよ〜。

ほら〜、イケメンだし片腕しかねえから

アグリッパなら許してくれるって〜。


だが、アルファイは鍵を持つ手を見つめたままだった。

鍵のことよりも先に謝らなければならない事由が

アルファイの口を重くした。

あ、こいつアグリッパの首を

スリーパーホールドかけてたんだったわ〜。

あ〜、そりゃ言えねえわ〜。

なんか色々言いにくいわ〜。


ーのを、


「あ、アルファイルス君!

 鍵、持っててくれたんだね!!

 ありがとう!

 僕、なくしちゃったかと思ってたんだよ〜」

一瞬アグリッパは目を丸くしてアルファイを見た。

次にはそばかすの頬が持ち上がって

嬉しそうな声を出し、鍵を受け取った。

まるではじめからそうであったような態度だった。

「え」

アルファイは困惑した。

「(そんなはずはない。)

 アグリッパ、この鍵はっ私がお前から ー」

今、ここで言わないときっと後悔する、と

アルファイが声を大きくすれば

「アルファイルス君がっっ!!

 昨日の鍵当番だったよね?!」

アグリッパはより大声で、かぶせ気味に言う。


まるで、最初から

アルファイが鍵を持ってた、と言わんばかりに。


アルファイは何とも言えない気持ちになった。

アグリッパが、研究棟で聖獣バロンが暴れてるときに

死んだフリしつつ、飴玉を頬張っていたのを見た。

その飴玉こそ、気絶させたアグリッパへの罪悪感を

紛らわすために、ポケットに忍ばせた飴玉だったのだ。

その飴玉がなんでか増えてて

『魔女さまに貰ったんだ〜』

そのとき、アグリッパは小声で言ったのだ。

『あの、君の腕が無くなってるなんて知らなくってさ

 仲間なのに、迎えに行けなくってごめん。

 不便だっただろ。』

アグリッパの笑顔に、アルファイは下を向いてしまった。


ミケラがアルファイの肩に止まり、耳打ちだ。

『あんなぁ、勇者はん。兄やんのこと

 首絞めてぇ落としたぁ思とるみたいやけど

 全っ然、落ちてへんかったで?

 しぃっかり起きとりましたわ、兄やん。

 しぃっかり勇者はんやって、わかっとりましたわ。

 せやから、気にせんでええっちゅーことですわ。

 ホンマホンマ。気にせんこっちゃ。

 兄やんにしてみりゃ、勇者はんの技なんて

 技ちゃうで、子供の遊びや遊び。

 あんなん、乙女の憧れバックハグ(後ろからギュウ)や。

 うちの兄やんがときめいて意識してまうわ〜。

 勇者はんは罪な男やで、ほんま。

 兄やん惚れさせても貰えんのはきゅうりだけや。

 え?もぉ貰たん?ほえ〜、ホンマに惚れたんかいな。

 うちの兄やん、よろしゅうたのんます、ってか、な?

 勇者はんの技、あのかけ方甘いねん。

 もぉっと肘、ッグっと引かなあきまへんわ。

 それやと姉(・)や(・)ん(・)の方が、技のかけ方エグいねん。

 胴体四(・)の(・)字(・)決めての首、捻り上げやで?

 殺しにかかってますもん。

 まぁワイの目が黒い間は、兄やんは死にまへ〜ん。

 守護妖精の役割、知っとりますやろ?

 ワイのおかげやねん。ぜ〜んぶ。

 けどぉ〜

 兄やん、ええかっこしいやんか。

 なんかぁ勇者はんにぃ、恩返しっちゅーか

 助けてもろたお返しっちゅーかぁ?

 ここはひとつぅ〜、

 兄やんに花持たせたってくれへん?

 兄やんて、ああ見えてな?

 漢(・)気(・)、あんねん。』

アルファイが顔を上げると

アグリッパは恥ずかしそうに頭をかいた。

ミケラはアルファイの肩から離れながら

『ま、兄やんは

 逆立ちしたって勇者はんに勝てへんけどな。

 ニシシっ』


アルファイもまた、困ったように笑い

アグリッパに近づいて

手を出し、言った。

「・・・ありがとう、アグリッパ」

「!」


アグリッパは、“ごめん”と言われるより

”ありがとう”と言われたことが

何よりも嬉しかった。だから

アルファイに言った。


「ぼ、僕こそっありがとう!!」

差し出されたアルファイの手を握り返す。

「(僕を助けてくれた手だ・・・。

  “ありがとう”って言われた。

  ・・・僕に、僕に言ってくれたんだ。)」


だってその言葉こそ、アグリッパが

アルファイに一番、言いたかったことだからだ。

「あ(・)り(・)が(・)と(・)う(・)、アルファイルス君」


よかったね、きゅうり。


アグリッパは興奮して、きゅうりを取り出した。

ミケラはアグリッパの肩に止まると

『・・・やっぱ惚れてもうたん?』

「っっばっっ、ちっ違うよ!!」


そうなの?きゅうり。


「ボリっっ!」




*



とか、そんなこと全く知らない連中らは

『たかだか“鍵”ごときで

 “ありがとう”を言い合って何?

 そんで良い雰囲気なの、怖ぇ。』

と、うっすら思わなくもないが

アルファイは気持ちを切り替えていた。


「アグリッパ。ここから先は危険だ。

 お前は仲間の秘術師(マグス)たちと

 王城内へ実体で向かえ ー だから

 先ほど渡した鍵は、一旦私が、」

律儀な男、勇者アルファイは

返した鍵をもう一度返してもらおうと手を出した。


「(最初から渡さなきゃよかったじゃん。)」

と、もう一人の勇者ディオは思ったし

「(・・・めんどくせえやつ。)」

と、ギーズルはジョセフィーヌを警戒しつつ思うし

「鍵の担当って、今日もアル(ファイ)じゃダメなの?」

と、口に出して言っていた。


「だっっだめだよっ!

 今日は僕が担当なんだっっ!決まりだよ!!」

アグリッパは鍵をポケットにナイナイだ。

渡さないもんね〜だ、という意思表示に反し

無理やり突っ込んだポケットから飴玉がこぼれ落ちた。


アルファイは落ちた飴玉を拾いあげ

「アグリッパ、無駄な時間はないんだ、早く鍵を」

手の中に収め、言った。

「でもっ星見の塔は僕がそのっ」

アグリッパは、魔女が連れ去られた際の

見(・)え(・)な(・)い(・)影(・)に関することを口にするかどうか、言い淀む。


・・・変態(エフェラル)のことだぞ、諸君。


「ねえ、ねえ、ちょっと〜。」

ギーズルがアグリッパの後ろから顔を出した。

「?」

「その鍵って、星見の塔のどこの鍵よ?」

「え、えと最上階の、」

答える間もなくアルファイはアグリッパに言う。

「鍵をよこせ、アグリッパ。」

「だ、だめ。これは僕が当番だから」

「終わったら返す。」

「お、終わったらって、何が!?

 だってアルファイルス君、次の鍵当番の人の名前

 知らないだろ?!」

「じゃあ、そいつの名前を教えろ。

 終わったらそいつに渡す。」

「ダメだよ!当番日記に日報書かなきゃいけないし

 部屋の掃除もしないといけないんだっ」

「ーっそ、それも私がするから鍵を渡せ」

「・・・アルファイルス君、君・・・

 黄道を通る星の正確な通過時刻と高度角を

 ちゃんと望遠鏡で合わせられる?」

「!っ相対間隔のことか?」

「あ〜、あの望遠鏡ってさ〜

 最近ちょっとガタが来たみたいで〜

 僕が調整しないとダメで〜」

「!なっ、屁理屈をこねるな!」

「ええ?!だって僕が鍵当番だものっ!」

とか言い合いをはじめた。


『(・・・さっきまで良い雰囲気だったじゃん。

  “ありがとう”って言ってたじゃん。

  こいつらに何があったんだよ・・・?)』

ほんとそれ。

ギーズルはそのやり取りを見て、腕を組んで言った。


「“亀の甲より年の功”じゃね?」


亀の甲より年の功とは:年長者は長年経験を積んでいるだけに

           若者には及ばない知恵や技能がある。

            さすが年長者、すげえ。


この場合、年齢のみについて言っていると思われる。


「どういうことです、ギーズル様」

ゾイはギーズルに覗き込むように見上げた。

ギーズルは腕を組み

アルファイとアグリッパを見比べて

その後、自分たちを見回して言った。

「リーダーを決めて、その人の言う通りにしましょう。

 じゃんけんでも良いけど

 運の要素を考えたら年功序列ね。

 ここで一番年上の人の言うことを聞く。

 ってのはどう?」

ギーズルは自信があった。


「(ディオは18歳・・・。

  ゾイは年上だけど

  俺の従者だし1000%言うことを聞く。

  アグリッパなんて15、6ぐらいでしょ?

  きのこ頭のきゅうり好きな秘術師(マグス)。

  アムランは・・・せいぜい20代半ばぐらい。

  ゾイとも仲が良さげだったし

  こっちが何か言えば言うこと聞くでしょ。

  ・・・渡さなくていい鍵返した律儀な男だし)」


ギーズルが年齢順の提案をしたのは

勇者アルファイと一般人アグリッパへの気遣いだ。


これから戦うのだ。

アグリッパを連れて行くのは心情的にやめておきたいという

アルファイの気持ちがわかった上で、この発言をした。


「良いですね」

ゾイが答えた。

「・・・俺はどっちでもいいよ。」

ディオは正直どっちでもいい。

「・・・」

アルファイは無意味な言い争いをしたくなくて無言だった。

「っそ、それは、」

アグリッパは周りの反応を見ていた。


「よし、決まりね。ーじゃあ」

ギーズルはディオに向いた。

「ディオ、アンタ年は?」

「十八だ」

勇者は答えるが、ギーズルを見ない。


「ゾイは?」

「えへへ、二十四です。」

お、意外にお兄さんだわ。


「で、アタシは十九、ピチピチでごめんね〜。」

イケメンオネエ、ピチピチ。

喫煙してるけどこの世界では

未成年じゃない。成年です。


「アルファイは?

 (ゾイと同じか、少し上・・・

  聞くまでもないけど〜)」

と、いうギーズルの思いは


「・・・十七。」


裏切られ

その答えは

はるか斜め上を行くものだった。


「?!?!?!」

みんなが一斉にアルファイを見る。

「え?」

「うそだろ」

ゾイはあからさまに首を傾げ

ディオは困惑しながら、もう一度声に出す。

「じゅ、十七・・・???え?

 に、二十七ぐらいじゃ、なくて?」


アルファイはムスッとした。

老け顔だと自覚はあるが

勇者仲間のディオのマジで驚いてる顔が

なんだかマジで驚いてるから

より一層、傷付いた。


「(二十七・・・は言い過ぎだと思う)」

そう感じたゾイはアルファイの横に行き

「アルはさ〜、苦労してるから

 顔が老けたんだよ、きっとそうだよ。

 だって腕ないじゃん。すごいストレスだよね。

 あれ?何か顔色いいね、体力戻ったの?

 その装備、黒くてかっこいいね!

 後ろの鎌にリボンついてるけどこれ何?

 それ、ん?魔女さまが名前を?へ、へえ〜。

 鎌(・)っ(・)て(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)っていうんだ、へ、へえ・・・。

 リボンつけ、あ、それも魔女さまが、へ、へえ・・・。

 あ、腕は・・まだ治ってないんだ。

 でもアルは、イケメンじゃん?

 勇者だし今、彼女いないだろ?

 これからめちゃくちゃモテモテだよ!

 老け顔の人って、年取っても老けないから

 ずっとその顔だし良いよね!」

と、褒められているのか貶されているのか

よくわからないことを言った。


しかし、ゾイの話を聞きながら

目をキラキラとさせていたのは ー


「うわ〜!アルファイルス君、

 君、僕より年下だったんだね〜!」

アグリッパだ。

アルファイはアグリッパに向いた。

「?ー、アグリッパ、お前、幾つなんだ?」

アグリッパはニコニコしながら答える。


「僕、今年で二(・)十(・)八(・)だよ!」


は?

おいおい、冗談はきのこ頭だけにしてくれよ。

全員、表情をなくした。


ギーズルなんて

見た目だけで判断したことに

頭に隕石が落ちたかと思うほどの衝撃を受けた。

「(に、二十八??あれが?!)」

そうみたいだよ、オネエ。

「(あと二年したら、あれ、

  三十だぜ。・・・三十路??

  あれが????

  おいおい、まじかよ〜。)」

しかもゾイより年上。


「(ぼ、僕より年上で

  あの肌ツヤ・・・

  絶対、苦労してないんだ。)」

ゾイはアグリッパの肌がツヤツヤしてることに心がざわつく。


「(じいちゃん。

  アルファイは十七だよ。

  俺なんかよりしっかりしてるよ。

  武器(鎌)もかっこいいし

  しかも魔女さまに名前もつけてもらってるし)」

ディオはアグリッパのことなんて頭になかった。


「(ーっ二十八?!童顔か)」

アルファイはちょびっとアグリッパが羨ましくなった。

だが、見た目と年齢のギャップで

いつも驚かれるアルファイは

アグリッパにも幾ばくかの同情をもたらしたため

実際にはさして驚いた風にも見えなかった。

「(それより鍵を・・・

  ラースに遅れをとるわけにはいかない。)」

そんなこと思っていた。


『聞いて〜な〜ぁ、わいはな〜ぁ

 “永遠のぉ〜十五歳〜”』

ミケラが何か言ったが、誰も耳を貸さない。

するとジョセフィーヌがミケラに向かってゆらゆらと触覚を揺らす。

『?!あん?ジョセはん!

 そら、あんたが大将っ最年長ですわぁ。

 よっ最高齢!!

 あんさん超えるやつなんておらんっ!

 神様もびっくりやがな〜〜ぁ。

 あれ?何か忘れとる、?ま、ええか〜!!』


ギーズルが仕切る。

「あー、あの、人外(おまえら)は黙って。

 対象外。」

ギーズルはとりあえず話を戻そうとした。

だが、アグリッパは嬉しそうだ。

「へへっ、僕が一番年上だね!」

信じたくない状況だが、事実だ。

アグリッパは頭を撫で付けながら、照れつつも

胸を張る。


「えっと、じゃあ鍵は僕が持って行くし

 一緒に星見塔の最上階へ行くよ。」


どうした、アグリッパ。

なんかやる気出してきた。


「(僕がこのメンバーの中で、一番年上なんだ。

  そっか。じいちゃんが言ってたのは

  このことなんだな。

  “年(・)長(・)者(・)は今までの経験で得た知識と

  知恵を下(・)の(・)も(・)の(・)に与え、助けるのだ”って。

  よし! みんなを助けなきゃ!!

  僕はこの中で誰よりも星見の塔のことを

  知ってるし、あの最上階のことだって・・・)」

謎の使命感があふれちゃった。


また、アルファイ以下ディオ以外は皆 ー

「(どうすんだよ。

  一般人(コイツ)連れて行って大丈夫?

  戦えんの?・・・)」

そんな思いが去来した。


ただのきゅうりだと思うなよ。

ミケラ(妖精)もいるから一般人、ではない。

ミケラはアグリッパのまわりを飛びながら

思う。

『(ノ(・)ー(・)マ(・)ー(・)ク(・)だからこそできること

  あんねんで。な?兄やん。)』

アグリッパは喉の奥が渇くのを感じながら

歩き出していた。

「(・・・エフェラル様、どうして・・・)」


一行は星見塔へ急ぐ。




*





ディオ情報:あんなクールな勇者、かっこいい。

      装備とか武器とかもかっこいいし

      いいな〜。鎌ってちゃんとか。

      自分の剣にも名前を付けたい。

      試しに“無敵剣”と呟いた。

      ギーズルが窒息死するかのように

      大笑いしたからやめた。


ギーズル情報:ディオの剣の名前の例を出してやった。

       “聖剣ビュンビュン丸”。どう?


ゾイ情報:ギーズルさま、やめてください。

     大やけどです。

     


アルファイ情報:ディオがチラチラ見てくる。

        ディオは良いやつだ。

        こんなまっすぐな勇者、かっこいい。

        でも名付けレベルは魔女と同等かそれ以下。

        “無敵ソードマックス”はひどい。

        全力で止めた。やべ、学徒証返してない。


アグリッパ情報:ディオが剣の名前で悩んでいたから一言助言。

        『貰った人に名付けてもらうのが一番!』

        問題は解決だ!

        早速、いい仕事した。誇らしい。






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