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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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過去と今が出会うとき





*



ラースがシャルラッハロートに乗り

颯爽と現れたのは、必然かはたまた偶然か。

それとも

偶然という名を弄ぶ奇跡のイタズラか?


いやいや、諸君。

物語は時にドラマチックなものだが

詰まるところ、“とき”が動くタイミングは

考えもつかぬところで発生する事象だ。

たとえそれが

魔女(百五十三歳)のおパンツがもはや見え、違う

危機的状況(乙女のSOS)であったとしても、だ。


その”とき”が訪れたのは

魔女が連れ去られるそれよりちょっと前。


「コロンっ(・・・これ以上は

  牢にいても仕方ないか。)」

ラースは最後の飴を口に放り込んだ。


それに至るまでの思考も

アルファイを先んじて魔女の元へ行かせたのも

このドノヴァッテン魔法王国に伝わる伝説の考察も

ラースにとって必(・)要(・)な(・)時(・)間(・)で

作(・)戦(・)だった。


「アルファイ、・・・その羅針盤を

 星見の塔のとあるところに置いてきてくれ。」

「?魔女を助けに行かなくて良いのか?」

「あぁ、大丈夫だ。

 ・・・星見の塔へは行って帰ってくればいい」

「?」

アルファイを送り出したラースは

自分が入っている牢の壁にそっと触れた。

「(この壁の一部を押せば

  床に階段が出現して

  外へ出られる仕様になっているなんて

  ・・・思い出さなきゃ気付かないだろうな。)」

アルファイの遠のく足音を聞いた後

そっと壁を元通りにした。


以下はラース(おネズミさま)の考察だ。

「(さて・・・。

  オーゲルの言動と私の処遇を整理すれば

  魔女は東塔で”第一物質(プリマ・マテリアル)” を入手したと

  考えて・・・良いのか?いいだろう。

  翔煙隊がここにいるのが答えだ。

  彼らは、秘(・)匿(・)の(・)番(・)人(・)だ。

  本来なら”深淵”を守る彼らが

  わざわざ全員揃って牢にいるということは

  この王国の“呪い”ともいえる姫君と伝説・・・

  ・・・護符(ペンタクル)に関することだろう。

  いや、それも仮定の話だ。

  考え得るそれらしさだけなのが

  なんとも心許ないな・・・。

  使い魔になってからというもの、ドノヴァッテンには近付かなかった。

  そして情報源はあの頃の記憶頼りだ。

  だが、引っかかる。

  どうして”今”なんだ?・・・

  使い魔になってから100年間、なんの動きもなかったのに

  ドノヴァッテンの王はなぜ私を呼んだのか。

  禁書を盗んだ罪を問うにしては

  いささか拍子抜けと手抜き感が否めない。

  あの計(・)算(・)高(・)い(・)王の手法とは思えない。

  エラムはもっと用意周到だ。

  待てよ・・・

  そもそも、あの魔女が

  なぜ“第一物質(プリマ・マテリアル)”を入手する必要があったのか。

  ・・・あの魔女が“第一物質(プリマ・マテリアル)”なんてものを

  何に使うつもりなんだ・・・

  あいつ、使い方を知ってるのか??・・・)」

ラースは思考する脳内を落ち着かせるために

一度深呼吸して、牢の外を見た。

相変わらず暗い廊下を仄暗い蝋燭の光が揺れた。


「お〜い、ちゃんといるか〜?」

不意に声をかけられた。翔煙隊の隊員だ。

「ああ、いる。」

「オッケー、じゃあまた後でな〜」

雑な確認をすると、気配は消えた。

「(罪人だぞ?・・・ゆる過ぎだろう・・・)」

この不可思議な待遇に、ラースは今一度天を仰ぐ。

そして気づく。

蝋燭の光が天井のお(・)う(・)と(・)つ(・)を照らし出していた。


  『“1” は“全” なり。それによって”全” であり

   ・・・それにたいして”全” であり・・・』


「!!(これはっー)」


その文字を取り囲むようにして

蛇が自分の尾を飲み込もうとしており

「(古代語か?・・金(ヌブ)?・・・?

  記号?何を意味してる?血脈のことか?

  ・・・なんだ?なんて書いて・・・)」

二重の魔法陣が描かれていた。

「(この魔法陣も初めて見る・・・?いや、違う。

  見たことがある?この感覚はなんだ?

  ・・・何が、っあ)」

妙な既視感(デジャヴュ)を覚えた。

それより気になったのは ー

「(この装置のようなものに

  見覚えがあるのがなんとも・・・)」

見覚えあり過ぎて、思考を邪魔する思いを手放したくなった。

「(あぁ、そうか。・・・、魔女。

  “約束”を果たしに来いと

  あなたは言うのだな。)」

せっかく人間に戻れた手を見た。

「(魔女め・・・。

  こんな手の込んだことをするのは

  あの魔女しかいない。)」

妙な確信が、ラースを行動に移させた。

「(ふん・・・、思惑通りか。

  つまり今こそ、そういうことなのだろう。)」


ラースは、ため息をついて

「(ああ、いいさ。やってやろう)」

アイスクラピウスから受け取った袋を開いた。


ボヤ〜〜ン。

人間だったラースは

おネズミさまに戻り、自嘲気味に手を見る。

「(はぁ、元通りか。)」

ちっちゃいお手てだねぇ、ドンマイ。

また人間になれるって!しかも今なら

全裸(マッパ)でも恥ずかしくないじゃん。

ラースは鼻をヒクヒク、とさせ

肩掛けかばん(小)の紐を握りしめた。

「(行くか)」

鉄格子をすり抜けたラースは壁伝いに走り抜ける。

「(この姿になって良いことは鼻が利くことだな。

  わずかな振動や気配にも敏感になれる。そろそろ

  牢にいないのがバレて翔煙隊が動き出す頃だ)」

カーブを描いた牢の通路の先には、階段があるー、

何人かの足音が聞こえた。

「(誰だ?・・・足音がでかい。

  翔煙隊じゃないのが混ざっている。)」

ラースは足を止めた。


「ー本当にここにいるのだろうな?!」

「あぁ。こちらで監視をしている。問題ない」

「ちょ、ちょっとだけでも ー」

「駄目だ、ローリ様の許可なしにここを通すことはできない」

どうやら秘術師(マグス)と翔煙隊が話をしているらしい。


ラースは聞き耳を立てた。

「(ローリだと?

  一向に姿を見ないが本当にいるのか?

  ・・・秘術師(マグス)はなんで地下牢(ここ)に、)」

肩掛けかばんがよりによって牢の鉄格子に引っかかり

歪な音を鳴らす。


「?!っなんだ?!

 何の音だ、い、異常があったんじゃないのか?!」

「ー、確認をー」

翔煙隊の誰かがこちらへ向かってくるような足音を聞く。


「(まずい。)」

金色ネズミ、暗い通路で目立っちゃう。

幸運なのは暗いから場所特定まではできないぐらい。

「(くそっど、どうする)」

咄嗟の判断だった。おネズミさまは

「チューッ・・・」

ネズミの真似しながら

ついでに地面に手をついて

パタパタとわざと埃を立てるような音を出した。


秘術師(マグス)は急いで隠れるおネズミさまを見かけたが

「ー、何だ、ネズミか」

とだけ言って、立ち去った。

ラースは頭を隠し、尻だけはみ出つつ

「(不名誉だ、・・・しかも二回目の。)」

引っかかった肩掛けかばんに蹴りを入れた。

ポスンっ。


実際、“今ネズミだから”、という言い訳を心内でした。

よくないけど、ネズミなのは間違いない。

のだが、ーいや、良くない。

さっきまでドノヴァッテンを代表するイケメンだったはずだ。

アグリッパだってお墨付きだ。

全裸(マッパ)だけど風紀的にふんどしだってしてた。

ラースはネズミになって”二度目”の

ネズミの真似をした。


しかも一回目より、ちょっと上手に。

「(ネズミなのに

  ネズミの真似をするのもおかしな話だ。

  ・・・矜持は捨ててない。)」

ラースは思いながら階段を上がることに成功する。

「おい」

階段途中、下から声をかけてきたのはオーゲルだった。

「(やはり来たか)」

ラースはオーゲルに向いた。


オーゲルはニコニコしている。

口を開いたのは、ラースだった。

「おかしいと思っていた、英雄騎士オーゲル。

 あなたほどの人が、なぜここにいるのか。

 私を監視するには、ずいぶん手(・)厚(・)い(・)も(・)て(・)な(・)し(・)だ。

 さらにあなたまでもが“罪(・)人(・)”だと?

 それもおかしな話なのだ。

 翔煙隊の者は誰1人、その話を信じていない。

 また、他の誰もあなたを捕まえには来ない。

 あなたの右腕とも言われるローリ上級騎士すら

 姿を見ていない。・・・なぜだ。」

「さあね。

 ローリならその辺にいるんじゃないか?

 俺ぁ、罪人さ。・・・はは。

 ずっとずっと昔っからな。」

オーゲルはおどけるように周りを見渡した。

ラースは続ける。

「ひとつの仮定を立てた。

 それが正しければ

 私は即刻ここから出なければならない。

 ・・・英雄騎士オーゲル。・・・」

「俺は英雄なんかじゃねえよ。」

オーゲルはニコニコして腕を組んだまま、壁に寄りかかっている。

ラースは立ち上がった。

「この騒ぎを起こしたのは、あなただな?

 これがもし、仕組まれたもので

 偶発的な呪いをも巻き込んでいたら、だ。

 魔女がこのドノヴァッテンに現れるとき・・・

 あなたはこのときを待っていた、とも言えるだろう。

 なぜならこの王国の護符は魔女が張ったもので

 それが破られようとしてるんだ。

 破られるタイミング・・・、つまり力が弱まるとき

 それは 火鑽(ひきり)女である、

 火の炉の聖女ー、

 フィリアノール王女の“力”が、

 もう、火を起こせないんじゃないのか?ー 」

ラースはオーゲルに背を向けた。

オーゲルの顔を見ることはない。

すべては仮定だ。

答え合わせする気もない。

ー 言うべきことを言っただけだ。


「(だから、私を牢(ここ)に

  入れたのだろう?ー 師よ ー)」

ラースを守るために、牢に入れたであろうその人を

ラースは思い出していた。

「(古代魔法に精通していたもんな。

  ・・・天才と呼ばれた彼に

  古代文字を学ばなければ

  ”魔(・)女(・)の(・)大(・)鍋(・)”に気付けなかった)」

だからこそ、ラースは魔女の元へ行かなければならなかった。


肩掛けかばんの紐を握っていた。

「また繰り返すつもりなら、もう終わりだ。

 私がいうことでは無いかもしれないが ー。

 だが、オーゲル、それは愚かなことだ。

 ー あなたはその・・・

 嘘の犠牲を繰り返す必要なんて ないのだ。

 嘘の被害者になど、なる必要は ー」

ラースの言葉を遮ったオーゲルの声が低い。


「ラース。次はお前を使う。」

オーゲルは剣に手をかけていた。

ラースはそれも気付いていた、剣を抜かれれば

多分、死ぬだろう。

ー それもわかっている。しかし ー。


「そうだろうな。

 次の”繰り返し”には私がうってつけだろう。

 だが、

 勇者アムランはあの”鎌”を持って現れた。 

 あなたにとってみたら、それは計算外だっただろう。」

オーゲルは一点を見つめたままつぶやく。

「魔女か・・・、だが、あの魔女ではない」

ラースは答えない。

「 ー 」

急な変調だ。

オーゲルのあっけらかんとした声がした。

「なぁおい、ラース。

 あの魔女は、俺の知っている魔女じゃない。

 なんなんだよ、あの魔女は」

ちょっと迷惑なんですけど、という感じの声で

緊張感が緩む。

「・・・以(・)前(・)の(・)魔(・)女(・)な(・)ら(・)ば

 ここまで騒ぎも起こさずに

 あなたの思惑通りだったかも、しれない。

 あなたのやることを止めなかっただろうな。

 以(・)前(・)の(・)魔(・)女(・)な(・)ら(・)。

 ー だが、今の魔女は・・・

 どうも人を巻き込む癖のあるようだ。

 魔法も使えないし、使っても意味不明で

 行く先々で何かしら拾うし

 行く先々で問題しか起こさない。

 実際のところ、私にもよくわからない。

 行動自体が理解不能なんだ。

 一言で言うなら、最(・)悪(・)な(・)魔(・)女(・)だ。」

「お前、あの魔女の使い魔だろ・・・」

「ああ。契約上は。」

「?・・・主従関係がそんなんで良いのかよ。」

「相(・)棒(・)だからな」

「はっ舐められたもんだな!」

オーゲルは嘲笑の眼差しをラースの背に送った。

「魔女があれじゃあ、この王国はままならん ー

 そうだろ?頼りねえよ。

 護符は残り何枚だと思ってる?

 あの魔女に何ができんだ。」

「・・・」

オーゲルはラースの毛並みを美しいと思った。


「恨むんなら、恨んでくれてかまわねえよ」

つぶやくと同時に

剣を抜く金属音の擦れる音。

オーゲルの気配が瞬間消えた。


「(ここまでか)」

振り落とされる剣の気配に

ラースは静かに目を閉じた。


っっガギィィンッッッ!!


「間に合った〜ぁ〜、やべーやべー。」

巻き起こる風の中

剣を防ぐ影はラースを覆った。


勢いよく降る剣の風にラースは目を開け、天を仰ぐ。

「っっ師?!」

「おー、おー、何やってんだよお前ら。」

「ート(・)ゥ(・)リ(・)ウ(・)ス(・)・・・」

オーゲルは目を見開いていた。


「おー、久しぶりだなぁ〜。

 オーゲル。?あれ、老けた?

 おっさんじゃん!!何その顔。」

「おっお、お前、ー 生きてたのか?」

「まあね、おかげさまで〜。

 懐かしい話は後にしようぜ。

 ラース、お前の、お(・)仕(・)置(・)き(・)タ(・)イ(・)ム(・)は終わり」

「っ師よ、(お仕置きタイム?)」


ラースに向けられた静かな眼差しは

有無を言わさず小さく微笑んだ。

「魔女は北塔だ。

 エフェラルに捕まってる。

 聖獣(バロン)がさっき空から降ってきた。

 さあ、行け。

 俺はちょ〜っと話があんだ。

 ーな?、オーゲル」

言いながら、オーゲルの剣を弾き返した。

「!っ」

弾き返された剣はオーゲルと一緒に

壁に押しやった。

「ーっぐ、トゥリウス、てめぇっ」

「なっつかし〜なぁ、オーゲル〜、

 お前やっぱ老けたな〜ぁ。

 独身なの?お前、独り身??

 孤(・)独(・)な(・)自(・)家(・)発(・)電(・)は人を老けさせんの?

 俺の秘薬、飲む?お前脳筋だかんな〜。

 効くかな〜。

 精力剤もあるけどお前に必要ねえだろ。

 使う相手いねえって!ヒャハハハっっ

 あ、お前、薬草アレルギーなんだったっけ?

 脳筋のくせにアレルギーなんて繊細な神経してねえだろ!!」

モテない男、トゥリウスは

なぜかオーゲルに的を絞り、言いたい放題。

「あん?」

オーゲルの額になんか血管浮かんでるよ?

大丈夫?・・・

自家発電・・・?え、何を?・・・。

脳筋だってアレルギーぐらいあると思うの。


ラースは見上げた。

トゥリウスはウィンクした。

「いけ、ラース。目(・)的(・)を(・)往(・)け(・)」

「ッ!ありがとうございますッ」

言いながら走り出していた。


「あっちょっと覚えとけよ〜〜!!!」

後ろから叫ぶように声が聞こえた。



「手段はそこそこ選べよ〜ぉ!!」



ラースは何度も頷いた。



*






ふぅ、と息を吐いて

男は振り返った。

「ヨォ、な(・)ん(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)て(・)英(・)雄(・)のオーゲルくん。久しぶり〜」

「ーっ、ミリアンに刺された腹は治ったのか?ト(・)ゥ(・)リ(・)ウ(・)ス(・)。」




オーゲルの額には、青筋が綺麗に出ていた。

トゥリウスは、ヘラっと笑いながら片手を宙にあげ、握る。ー 

もう片方の手は握った手から平行にスライドさせた。

「俺ってば、これ用意すんのに手間取っちゃってよ〜

 やべえわ〜、全然魔力が衰えてねえわ〜。」

出現したのは、魔法の剣、ー 聖魔の黒剣だ。


「能書き垂れてねえでさっさと来いよ

 万年発情期が。」

オーゲルもまた、剣を真正面に構えた。

「ー な(・)ん(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)て(・)じゃない、勝手に名付けられただけだ」

「お?わかってんじゃねーか、オーゲル。

 おめーは英雄とは天と地ぐらい離れてら」

オーゲルはトゥリウスの胸元を見た。

「エフェラルはミリアンに短剣ではなく

 絶命の剣を渡すべきだったな。

 ー 俺が代わりに引導を渡そう。」

「おー、穏やかじゃないねぇ、絶命の剣とか。

 俺が作ったやつじゃん。・・・

 俺だってこんなとこ戻りたくなかったぜ」

「お前のことだ、どうせ魔女が怖いんだろうが」


トゥリウスは瞬間、きょとんとしたが

「魔女がこわくて

 魔法使いなんかやってられっかよ。」

ニカっと笑う。


「ー この死に損ないが」

「お前にゃ言われたくねぇ。

 嘘っぱちの誓約つなげた英雄にはな ー」


トゥリウスの黒剣は、真っ青な炎をあげた。




*




「っっはあっはあっはあっっつっはあっはっはっ」


ネズミの姿だと人間の一歩が

自分にとっては大変な労力であったことを思い出す。


「(北塔に魔女がいると師は仰った。

  ー なぜだ。あのバカ

  なぜ北塔へ行く必要がある、

  ー 霊廟へ行けと言ったのに ー!)」

心のどこかでは、こうも思っている。

「(あのお花畑のことだ、

  またきっと何かに巻き込まれたか

  世間話でもして遠回りしてるか

  何か拾い食いしたか

  ・・・にしてもエフェラルだと?!

  何やってんだっあの大バカめっ!!)」

「ラース!!!」


研究棟のエントランスを抜けた先 ー

アイスクラピウスは手を振ってラースを呼んだ。

「!おいっ、なんだ?どうなってる!

 他の奴らはどうしたッッ」

「説明は後だ。魔女を迎えにーっ

 いや、違うな。ははは

 とりあえず助けに行ってくれ。」

「なんだって?た、助けだと?」

「魔女は勇者(アルファイ)と途中までは一緒にいたが

 エフェラルに誘拐された、と言えば正解か。」

「は?!誘拐だと!?エフェラルに??」

「そうだ、あのエフェラルだ。

 ー 魔(・)女(・)に大層ご執心の ー。」

「っっぶっっ(ごっご執心だと?!)」

ラースはまたしても吹き出した。


「ーそれよりもアレ、何とかしてくれ。」

「?“アレ”?」

「そう、あれだ。あれ」

アイスクラピウスが指差す先には ー 


「え・・・」


アグリッパ(きゅうり)とミケラ(妖精)

アルファイ(勇者)、ジョセフィーヌ(粘液)の

イロモノパーティと

ディオ(勇者)、ギーズル(祭祀王)、ゾイ(従者)が

壁に横に並び、聖獣バロンの暴走を

生あたたかく(手出しできず)見守っていた。


あれ?聖獣バロン・・・。

先に行くって言ってなかった・・・?

どうしちゃったのよ。


 バターッッン!ガシャーッン!!

地下牢で見かけた秘術師が、聖獣バロンを

どうにか鎮めようとしている。

「で、伝説の聖獣様があっ暴れてらっしゃるぞ!!!」

「せっ聖獣様がっっ!」

「ぎゃーっっ!」ドッガーン!

「だっ誰か、聖獣様を、お、お止めしろっ!!」

どーーーんっっっ

「無理だって、あれ」(諦めディオ)

「聖獣様!こ、ここは暴れる場所では」

 ドデッッ!「あ、(アグリッパが)こけた」

「に、逃げっ」(必死なきゅうり)

ゴスッッッ!!! 

「あ、また(アグリッパがまた)こけた」(冷静ゾイ)

ッドォーーッッン!

「あ〜、あの銅像、首もげた」(見学ディオ)

「あれ、3代目の王様の首・・・」(知ってるギーズル)

「(銅像が)痛そう」(ゾイ)

バイーン(魔法も呪力も無効音)

「何をしてるッッ」

「い、祈りを捧げるのだっ!」

『無理やって、なぁ、勇者はん』(ミケラ)

ガシャーンっっ!パリーンっ!!

「よけろ!アグリッパ!」(アルファイ叫ぶ)

「こけてた方が安全じゃね?」(ディオ突っ込む)

ドシーッンっ!(やっぱりコケるきゅうり)

「聖獣様にな、何か供物を!!」

「い、祈れ!祈りが先だ!!」 

「ディオ、アンタ止めて来なさいよ」(祭祀王の慈悲)

「それは無理だな。

 だってあれバーサクモードだもん。

 ずっとバーサクモードじゃん。

 無理。」(君子危うきな空気察知ディオ)

ゴイ〜ンっっ        

バイ〜ン(失敗音)

「アル、その鎌かっこいいね!」(気軽なゾイ)

「!こ、これは」(助けに行きたいアルファイ)

ベギッッ!!

『あ〜、兄(にい)やん・・・

 死んだフリしてますわ・・・

 あ、どうも、ミケラ言いますぅ。』(唐突な自己紹介)

「死んだフリ(それ)、意外に有効じゃない?

 あ、ギーズルよ。よろしくね、妖精さん。」(祭祀王の笑顔)

ビリリリぃッッッッ!

「あぁ!王国旗がぁっ!」

「祈りが足らん!!祈れぇっっ!」

「そういう根性論、よくないわぁ」(祭祀王の真理)

ドガッッッ!!バイーン

「魔法効かないって知らないのかな

 彼ら」(従者ゾイのつぶやき)

「藁にもすがるってやつだろ」(勇者ディオ、高みの見物)

バイーン(無慈悲な無効)                  

バイーン(どこまでも無効)


大きくなるジョセフィーヌよろしく、なぜか暴れる

聖獣バロン(シャルラッハロート)。

やや離れて秘術師(マグス)やら、魔術師らが慌てたり

祈りがどうだとか言って聖獣バロンをどうにかなだめようとしていた。

ー の周りを、隠れるように魔法陣に入って無傷の御一行さま。

(ジョセフィーヌは外で待機)

アグリッパだけは鈍臭さのため

またもや逃げ遅れ地面に這いつくばっている。

訂正、 死んだふりをしている。


「ー 何だあれは・・・」

ラースは目の前の惨状を見て唖然とした。

「あー、あれはな、魔女不足によるストレスだ」

「?ストレス?」

「修行中、ヤツなりに我慢してたのが

 ここにきてブチギレ中、というわけさ

 おにぎりはもうないからな。打つ手なし。」

「は?」

アイスクラピウスは微笑んだ。


「だから、お前はさっさと聖獣(アレ)を連れて北塔へ行ってくれ。

 魔女を奪還したら、お前たちは西の星見塔へ。」

「わかった、だがお前はどうするつもりだ?

 ア(・)イ(・)ス(・)ク(・)ラ(・)ピ(・)ウ(・)ス(・)、ー お前はこの王国の医(・)神(・)だろう?」



アイスクラピウスは、小首を傾げた。


「なに、医(・)者(・)がすることは決まってる。

 ー 患者の治療さ ー」


ラースはまたため息をついた。


「地下牢で、オーゲルとトゥリウス師匠が暴れてる」

「はは。あいつらも相変わらずだ。」

イタズラに微笑むアイスクラピウスは、ラースを見た後

階下に目を向けた。



「我々にはどうすることもできなかった過去だ。

 あの魔女なら・・・お前たちになら ー」

呟く声は聖獣(バロン)の大暴れにかき消されていた。

「?」

「はは、何でもない、独り言さ。

 あそこでボケーっとしてる若造らに

 先に星見塔へ行くように伝えてくれ。」

「だが」

「大丈夫だ、ー 任せていい。

 そのために鍛えた。」



アイスクラピウスは階下に向かって歩き出す。

ラースはその背に向かって声をかけた。

「ケ(・)ト(・)ル(・)!

 懐かしいからって、話し込んで遅くなるなよ!!」


肩越しから手をヒラヒラさせながら、

アイスクラピウスは階段を降りて行った。



「(まったく・・・)」

ラースはその背を見送ったあと、息を吸い込み大声を張り上げた。


「シャルラッハロート!!

 魔女のチョコチップクッキーを食いたくないのか!!」


「なぬ?」

ピタ、と止んだ。


すかさずラースはその背に走り飛び

耳と耳の間に陣取った。

「私とシャルラッハロートで

 魔女の元へ向かうっ!

 お前らっ!お前らはアムラン先導の元、

 先に西の星見塔へ行け!

 頼んだぞ!アムランっ!」


アルファイは頷いた。

「(星見の塔に印だけつけておいた。

  ラースの言う通りなら

  ・・・意味があるはずだ。)」

アルファイの視線の先に

ラースとシャルラッハロートが

風通しのよくなった壁から外へ出た。


「我々は 北塔へ。・・・おい

 そっちは南だ、シャルラッハロート。」


耳を引っ張った。

ぐい〜ん。




*





ラース情報:青い小袋を開けるのにだって勇気がいた。

      でもネズミって小回りきいてラク。


ディオ情報:アルファイがかっこよくなってて

      ちょっとワクワクする。

      鎌にリボンついてる、絶対魔女がしたと思う。


ゾイ情報:アルファイにすんなり声をかけられる貴重な人材。

     ミケラを見て、手に乗せたくなる。


ギーズル情報:ジョセフィーヌの衝撃(見た目)で

       心ここにあらず。

       あんなでっかいの、無理。

       アレが研究棟の中に入ってこれなくて安心。


アグリッパ情報:知らない人ばっかりで緊張。

        きゅうりないので飴玉3個同時舐め。

        死んだフリしながらモゴモゴ。


アルファイ情報:行ったり戻ったり。

        なんでだ。


ミケラ情報:興奮。もう超興奮。

      勇者が二人もッ!すげ〜!

      日替わりでこっ交換せえへん?






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