北塔、エフェラル
*
ー その瞬間は、いつだって どうしようもなく
ただ見送るだけなんだ。 ー
*
マンイーターは最期のとき
私の手をぎゅうって握って
“助けてほしい”って
そう、言ったの。
私は
自分のことを、助けてって言ってるって思った。
自分をこんな姿にした、オラフィスを倒してくれって
そんなことだと、勝手に思った。
だって、ゲームでは
何も言ってなかったし
マンイーターは倒せばそれで、話は終わり。
でも、目の前のマンイーターは言ったんだ。
『どうかオラフィス様を 助けてほしい』
なんで?
マンイーター(後発)が
私を助けた瞬間、言った言葉だ。
“デルゥェ・ヴァンクラッド”
ゲーム上に出現する、サブイベントのキャラだ。
このゲームの中で主人公は
お姫さまを助けるために
時間軸の異なる同じ空間を旅する。
旅は決して楽しいものではなく
そこで出会う”人” の “心” の“澱み” を知り
ときには、利用され、裏切られる。
そのほとんどが、後味の悪いものばかりだ。
デルゥェ・ヴァンクラッドは、主人公を裏切る。
”気高き命の生贄” が必要だから
『深淵の底には
大いなる尊き外の神を呼び覚ます力が眠る。
その力を手に入れ
すべてを焼き溶かすとき
呪いを断ち切れよう』
そう言って、主人公を深淵に行かせるけど
お決まりの初見殺しで
サブイベントのクリアは容易じゃない。
人の良さそうな顔をして
主人公を唆す。
何度も死にながら、クリアして
デルゥェの元へ行くと
そこにはもう、姿はなく・・・
マンイーターになって、戦闘ってオチ。
それがゲームでの話。
なのに
『どうかオラフィス様を 助けてほしい』
そんな姿にまでなって
ソイツ救う意味、あんの?
わかんないよ、ゲームになかったし
どうするのが正解なのか
何をすれば助けられるのか
わかんなかった。
しかも、私を助けるって
なんで?
マンイーターは、星の弓矢一本では死なない。
本来は6本ある弓矢のうち、最低でも3本は当てないと死なない。
しかも、触媒をエンチャントした上で。
それは、ゲームの中でもそうだった。
私は多分、焦っていたんだと思う。
アグリッパ君もミケラ君も頑張ってくれたのに
自分は何にもしてない。
何かしなきゃいけないのに
何にもできない。
頭が痛くて、動けない。
耳鳴りがしたんだ。
『私の名を教えてくれ』
頭の中に
『魔女、名前を呼んでくれ』
聞こえる声に
無いはずの記憶が蘇る。
『デルゥェ・ヴァンクラッド。
お前の神は死んだのさ。
ひひひ、深淵にいるのは
希望じゃない。澱みに蝕まれた絶望の塊さ』
あの魔女の声が重なる。
『そして
お前が名を呼ばれるとき
その分岐がやってくる。
・・・死して、その道を遺すがいい。
星を従え、運ぶだろう。
かつて賢者がその魂で奇跡を生み出し
“威厳”と“清浄”を否定したように。』
目の前が開くような感覚に
マンイーターの名前を叫んでいた。
「デルゥエさんっっっっ!!」
私の声に反応したマンイーターの目が
一瞬、ひとの目に戻る。
アグリッパ君とミケラ君の放つ
星の弓矢が、マンイーターを貫いた。
一体は消えたけどもう一体のマンイーターが
私の目にはデルゥエさんに映った。
「(どうしようっすぐ回復をっ)」
デルゥエさんは首を振る。
小さな声で
『魔女、ー ここは暗い。
星が、星が見えぬのだ。ー 魔女
手を ー』
手を握った。
私の手を握る黒い爪が、ほんの少しだけ、動いた。
『遅くなって、・・・ごめんなさい』
『契約は果たされた。星を見せてくれ・・・』
サブイベントで
星見の塔の外、大きな望遠鏡の
まわりを真鍮の星がキラキラ光り舞う中での
マンイーターとの戦闘を
私はその光景を思い出していた。
『ーあぁ、星だ、私の上に降る、あまたの星 ー
お前が連れてきた星だ・・・
・・・見せてくれたのだな・・・
魔女よ、このままいかせてくれ・・・』
人差し指を空へ向けた。
もう助かることのない人を
想いを遺すことを選んだ人を
私に止めることはできない。
なのに、どうしてこんなに
悲しいのだろう。
ゲームでしか知らなかったキャラなのに
知ってしまった事実と記憶に
やるせなさと、無力さに
涙があふれた。
『このときを 待っていた・・・』
声は見た目とは似つかわしくない
理性的で、静かな声で
私に聞いてきた。
『・・・
教えてくれ ー。
私の神は死に
源流は業によって
ー、我々は 呪われていたのか?』
私は ー、
返す言葉さえ見失って
ただ見送るだけだった。
*
「じょ・・・魔女 ー」
「ーっっは!」
目覚めた魔女は
すんごく良く寝た、じゃない、目を見開いた。
誰か立っている。
魔女は二つ折りのまま魔法かけられて
眠らされたのだ。
チョロい!チョロすぎる!!
「ー?だれ!!」
魔女を見下ろす人に向かって言った。
光の逆光で顔がよく見えないが
「(こんな人、ゲームにいたっけ?
見たことないんですけどー、って・・・ん?
あれ、こいつさっき私を)」
じわじわ思い出したら、腹立ってきた魔女は
噛み付かんばかりに言う。
噛みついてやれ〜!!
「あー!!!連れ去り魔だっ!!!
ちょっと!何!!なんのーっ」
キックぐらいかましてやろうとすると
ジャラッ
「え?(足、重っ)
鎖?ー 」
キックかます前に、自分が何かにかまされてる。
見れば両手両足、独立した鎖で繋がれてる。
ピンチじゃん。
うわ、不自由〜。
「ちょっとなんですかっ!これ、取って!!」
「・・・うるさいな」
「う、うるさい?
はあ?!連れ去り魔のくせにすんごい横柄!
いきなり連れ去っておいて
うるさいとかありえなくないですか!?
こっこんな手錠とか鎖とかしてっ
(っは!私は魔女だっ
こ、ここでラースの言う威厳とやらを
示す良い機会なのでは?!)」
捕まってるのに、威厳を示そうとするの
なんか違くね?・・・ちょっと様子見ようか。
「わ、私が誰かわかって、
こんなことをし、してるんでしょうね?!
わたっ私にはそのっ(今はいないけど)
相棒のラースとか
仲間がいるしっ(多分)
あ、仲間かどうかまだわかんないけどっ
すぐに助けに来るんだからねっ!(多分)」
足をバタつかせれば、ジャラジャラと鎖が音を立てる。
魔女、初の(威厳はないけど)偉そうな物言い。
しかし若干、いやものすごく自信がないようだ。
確認のために申し上げておく。
魔女は連れ去られ、両手両足を拘束されている。
ここで見せたのは”威厳”じゃない、
前かけに隠れたパンツじゃないのか?
仲間かどうかわかんない、は切ない。
いいじゃん、いいじゃん。
言ったれよ〜、ジョセフィーヌ(粘液)とか
ミケラ(妖精)とか、きゅうり(アグリッパ)とか。
おネズミさま加えたって、イロモノであるには違いない。
魔女のまわりにまともなのいなくて
ちょっとかわいそうになってきた。
あ、でも勇者いるじゃん。
勇者のアルファイは正味、助けに来るっていうか
なんとなくラースに言われたから
来てやった、と言うかもしれない可能性もあるが
鎌ってちゃんなら・・・どうだろう・・・。
自信がなくなってきたが
ローブの男に、魔女の“威厳”は通じるか? ー
パンツ見えてたらちょっとはなんか、ねえ・・・。
ちょっと盛り上がりそうだけども。
「・・・ふむ・・・」
青と黒銀のローブの男は
目深にかぶったフードを後ろへ送った。
「気付いてないのか」
長い髪に、青い瞳ー。
褐色の肌。整った顔に富士額で
片耳に光る赤い貴石が印象的だと魔女は思う。
傲慢な眼差しに表情筋は死んでいるようだ。
「へ?・・・」
男はおよそ傲慢な眼差しに似つかわしくなく
「あぁ、よく存じ上げているよ、
唯一無二の魔女 ー。」
うやうやしく、礼を執った。
魔女、ポカ~ン。
お?威厳が効いたか?
「あなたはこの王国の要だ。
そして、ー とうとうこのときがきた ー」
無表情の男は、くるりと踵を返し
部屋の机に向かって行った。
机の引き出しを開け、小さな箱を取り出した。
その小さな箱を持って、また魔女へ向かってくる。
「?ーな、何を」
「あなたの膨大な魔力と、その力は
オラクルを可能とし最強の名を欲しいままに
この世界の頂点となった。
愚かな奴らはその力を脅威と捉えた。
だが、私の考えは違う。」
魔女の前に片膝を付き、ー 魔女を見上げる。
「私と”子” を成そう。」
「は?(なんつった、こいつ)」
パンツ、効きすぎじゃね?
チラ見なのかモロ見えなのかはわからんが
魔女を見る無表情の男は
満面の笑みを浮かべた。
なぜだか魔女の全身は総毛立つ。ゾワっ。
「約束しただろう、魔女。
あなたを捕まえることができたなら
その願いを叶えると ー」
「し、してません、けど?!
(してないしてないしてない。
ーあ、前の魔女がしたの?!うそっっ
何してくれてんの、もう!
捕まえるって、私を??)」
やすやすと捕まる、とまではいかないが
さらりと捕まってしまったからチョロいのに変わりない。
二つ折りにされてからは、暴れもしたが
チョロいことに魔法までかけられ眠らされた。
捕まる寸前の、昇降機でその影だけは感じていた。
だが、誰か分かる前に捕まった。
「(殺気がなかった。)」
それが自分に害を及ぼそうとするものか
何も感じなかったのだ。
捕まってしまった理由を挙げよ、と言われたら
そんな程度だ。
「私の願いは、あなただ、魔女。」
男は笑みをこぼし
「は?」
目を細め魔女をまじまじと見る。
なぜだろう、何も嬉しくない。
「トゥリウスにはしてやられたが
好機は訪れるものだな。
・・・アグリッパがなぜ原初といたのか
謎は残るがこうしてあなたを・・・」
男は魔女を爪先から頭で舐めるように見た後
眉をひそめた。
「ん?・・・あなたはー、あの魔女ではないな?
誰だ、お前は。
似て非なるものだな。」
男はまた無表情になり、立ち上がった。
顔を斜め下に背け
顎に握り拳を置き独り言を言い出す。
「・・・考えようによっては
こちらの方が楽か?いや、だが・・・」
ブツブツ何か呟いている。
ー 止んだ。
また、片膝をついた。
そして、真顔だ。
真顔で、魔女に言った。
「やっぱり私の子を産んでほしい。
それが手っ取り早い」
変わってねえよ。
なんだよ、やっぱりって。
パンツ、効きすぎだろう。
「?!な、え?
てっ、手っ取り早いって何が!?
っていうか、のっこ、
子供ってなにそれー!?」
喪女で処女なんですけど。
色々吹っ飛ばしてませんか。
こちらの言っていることなんてお構いなしだ。
ローブの男は立ち上がり、魔女へ近付いてくる。
「私とあなたの子なら叶うだろう」
「なっっなにがッッ!」
一応、魔女は暴れた。
無情にも鎖がジャラジャラいうだけだ。
「あぁ、魔女。
ははは、気付かなかったのか?
お前ともあろう者が情けないな。」
「?何がよ!」
魔女はイライラが募る。
そりゃ鎖に繋がれてイライラするし、めっちゃ焦る。
だって、知らねー男だぜ?
イケメンであっても知らない人にいきなり
『お嬢さん、子作りしましょう』
って言われて
『ウェ〜イ』
そうはならんやろ。
(同意の上の婚前交渉は除く)
どんな異世界物語よ、異世界が過ぎる。
男は腕を組んで、魔女を見下ろす。
「私があなたを捕えるために仕掛けた罠に
気付かなかったのか?」
「ーえ、」
「あの魔法はもともとあなたの手管だろう?
あなたが私に教えてくださったではないか。
様子見していたが、それにも気付かなかったのだな。」
「ど、どこで?」
「星見の塔に入ってすぐだ」
「(気づかなかった、ーっそういえば
アグリッパ君のきゅうり食べたけど
魔法は三分も、もたなかった・・・。)」
ずずい、と男が魔女に近付いた。
「“魔封じ”だよ、魔女。
あなたほどの使い手であろう方が
この罠を見抜けなかったとは
思いたくもないが、あの魔女ではないなら仕方ない。
あなたに近づくために、姿隠しのローブを羽織っていて
正解だった。・・・奴らに姿はバレたが問題ない。
あそこには原初もいた。
どうやって封印を解いて手懐けたんだ?
あれを従えるだけの力はまだ、あるようだな。
ん?・・・古代の術式を使ったのか?
見たことのない術式だな・・・
アイスクラピウスと何を誓約した?
あいつは今どこにいる。
何を隠した?いや、封印か?違うな。
護符か?何を狙ってる?」
何か言われているようだが
魔女の耳には何にも入ってこない。
だって、コワイ。
逃げ出したい。
「おっと・・・」
男は逃げるような魔女の素振りにも気を止めずに
「質問は後にしよう」
微笑みを漏らし、魔女の髪をひと束掬うと
匂いを嗅いだ。
やだ、きも〜い。
「あなたを手に入れるのに
相当な時間を要したのだ。
・・・いつもうまく躱わされ
逃げられていたからな。・・・」
多分、そういうキモさがあるから
前の魔女も逃げたと思われ。
男は魔女の髪を堪能していたが、パッと手を離した。
「・・・もう来たか。早いな。
さぁ、余計なお喋りは止めて
邪魔が入る前に、片付けたい。」
「(何を?!)」
まさか、こやつ
イロモノパーティーが助けに来る前に
(なんかいかがわしいことを)
やっちまおうって思ってる?
え?・・・え、できんの?
そんな最速ってあるの?
男は一歩、大きく踏み出してきた。
魔女は男から視線を外さずに
後退りし、後ろの机に腰をぶつけた。
「いだっ」
両手だけは鎖を張り続け集中して男の動向を見ていたので
後ろの机には気付かなかった。
「!!」
ぶつかった机の上から本が何冊かと、書類らしきものが落ちた。
バサバサとまるで雪崩でも起こし
「わっ」
それらが魔女と男の間に落ちていく。
そのうちの中に、インク壺まで一緒に落としたらしい。
バシャっ
床に広がる濃紺のインク。
男は落ちたものには目もくれず
魔女に近寄る。
若干、男のローブの股間辺りが気になる。
ローブがテント張ってるってね・・・。
「(ひっひぃっなっなんか
もっもりあがってるんですけどっっ)」
盛り上がってんのは気持ちだけじゃなかった。
おいおい、いつでも準備万端かよ。
最速目指すだけあって
そっちの盛り上がりも勝手に最高潮。
魔女は男のローブの盛り上がりを気にしつつも
落ちて行った書類にチラと目をやってすぐに、男の顔を見る。
「フゥー。待った甲斐があったよ、魔女。
長かったが、ハァー。
あぁ、その力も、フゥーっ
あなたも手に入ると思うと ハァっハァっ」
ちょっと息荒くて、一人で興奮してて
ほんと、きもい。
深呼吸して、股間も鼻息も整えてください。
「!!!(なっ何を)」
男は身震いした。 ー
「ああっ!
たまらないな。
・・・こんなに興奮するなんて
何年ぶりか・・・」
張り詰めた鎖を指先で撫で伝いながら
魔女へ近付く。
男はゆったりと自分の指先を見つめた。
「魔女・・・、」
指先に触れる、魔女の太ももから
男と目が合う。
「(やばい。この人、変なひとだあっ
おしっこ我慢して身震いしたんじゃない。
その顔はなんかやばい。こわいヨォ
目がイッちゃってるよぅっ
こ、このひと今
キモいし、こっ股間もキモいっ
こっこういうのなんて言ったっけ
不純異性交遊?ちがっ
ふ、不同意なんとkっ)
こっこっち、来ないでえええッッ!!」
魔女、貞操の危機。
*
「へ、へ、変態ぃぃっ!!!!!」
とりあえず、声を上げたつもりだ。
嬉しそうに、さらに微笑んだのは男だ。
「最上の褒め言葉と受け取ろう」
「褒めてないですけどッッ!」
男は両手の鎖を引き寄せた。
すでに血がにじんだ鎖と、力一杯引きちぎろうとする
魔女の両手両足は赤く腫れ上がっていた。
「!!っっいっ」
魔女はそのまま男にぶつかるように倒れ込む。
魔女は意図せず
男にお姫さま抱っこされ
魔女を机の上に座らせられた。
「?!なっ何すんのよ!!」
机から降りようとする魔女の両足を
「すぐに終わる」
男の両手が軽々と押さえ込み
反動で、男の肩に顔をぶつけてしまった。
「ッッぶっっ」
“すぐ終わる”というパワーワードは
いずれにせよ、不幸を招く。
男は死んだ表情筋のまま、魔女の両手に繋がる鎖を持ち上げた。
「おとなしくしていろ。」
魔女は今、見た目的には強制的にバンザイさせられている。
「いやっっやめてっっっ!!
ばかっっやめてってばっ!!!」
そのまま後ろへ鎖を引っ張りながら、
男は片手で魔女の後頭部に手を添え、押し倒した。
「これ以上傷つきたくないだろう」
やってることはゲスなのに 意外に紳士的。
男の片手が魔女の腰を撫で下ろした。
「ひゃっ(やばいやばい何か、
なんかあの、時間稼ぎを ー!!)」
魔女の脳内は、脅威の爆音アラートだ。
魔封じされているなら、魔法の類は使えない。
事実、今こうしてピンチ中のピンチだ。
心臓バックンバックン。
「(どうしよう、どうしよう、
ー なんか なんか!!)」
魔女は男を見た。
「あっっあのぉッ!」
「ー」
「(ガン無視かよ、変態!!)
そのっえっと!あのー!
えっとせめて、な、なまえっ
名前を教えてくださいっっ」
全身全霊をかけて閉じている両足に
割り入ろうとする男の片足が止まる。
男の股間の熱が、魔女の太ももに当たった。
「(ヒイイッッなんか当たったっ
キモいよキモいよ、うわーーーんっ)」
男は魔女を見る。
「そうか、あなたは前の魔女ではないのだったな。
純潔を渡す相手の名も知らぬのは
酷というものだ。
ー よかろう。」
男は無表情から一転、優しい目になった。
「我が名は、エフェラル。
エフェラル・レガナ・メドゥグーラ。
魔女、・・・
あなたから純潔を与えられる栄誉ある男の名だ。」
「はああっ?(与えませんけどぉぉ??)」
その眼差しに、隙を見た。
魔女は割り込んだ男の足に
あえて自分の両足を入れ、広げてやった。
鎖で繋がれている不自由さから
大股とはいかないが、それでも
広げられる限界のちょっと先を目指し
目一杯広げるように足を払う。
男には魔女が(子作りに)積極的に映ったのだろう。
「何だ?ー 気が向いたか?」
ちょっと期待するような顔やめろ。
「それも悪くない」
魔女がニコっと笑ったから
男は足をおっぴろげたまま魔女に覆い被さろうと ー
「このサイコ野朗」
小さくつぶやき
息を思いっきり吸い込んだ。
「?!っ」
思いっきりその息を吐き
足を思いっっっっきり
「しねえええッッ
おぉぉりゃああああっっっ!!」
天に向かって蹴り上げた。
天を衝く声と足が
引き連れた鎖の音をも連れて行く。
どこに、 ー
男の金的に クリティカルヒット!
ー ザ “金的(コカン)” ハ イカーン! ー
「ゔっっっ ーーーっぐッッッ!!!」
変態、悶える。
魔女の両足の間に崩れ落ちた。
「(長ったらしい名前、
覚えてたまるかっってんの!)」
魔女は息を切らしながらも
エフェラルを両手でどかした。
「っはあっはあっはあっ!」
男は声も出さずに(出せないだろうが)
しゃがみ込んだ。
魔女はすかさず部屋の中を見渡す。
鎖に繋がれた両手首がズキズキ痛む。
見てはいないが、足だってそうだろう。
だが、今は一刻も早くこの場から逃げる必要がある。
魔女の息があがる。
緊張と不安と、ー それから 恐怖だ。
「(こっここに扉がないっ
どこの部屋だろう?!
えっと、な、何かヒントがあれば)」
扉らしきものは見当たらない。
こんな時に紋章旗も見当たらない。
それもそのはずだ。
この北塔はゲームでは
重要イベントアイテムのひとつ、
“白のマルドゥクの犬刃”がないと
開けられない秘密の扉が存在する。
それがこの北塔最上階の、この部屋の扉 ー。
だが混乱する魔女に
今、冷静な判断はできない。
「(見たことのある部屋なのに
どこの部屋なのかわからないっ
どうしよう!!)」
魔女はキョロキョロした。
この部屋にある、
ひとつだけの開けっ放しの大きな出窓は
鎖に繋がれた手を最大限伸ばしても届きそうにはない。
ーが
気配を感じた。
魔女が振り返る前だった。
「・・・そういう趣向があるのか」
「!」
エフェラルは今、完全に無表情で魔女の後ろに立っていた。
表情筋は死んでいるし、それ以外にも
色々死んだと思うが
使い物になるのかと思いきや
股間、打撃にもかかわらずご立派。
「なかなかに良い蹴りだった。
この件に関して話し合いは必要だが
いずれ別に行うこととしよう。
今は時間が惜しい。
今回ばかりは痛み分けといこうじゃないか」
うまいこと言っているが、男の目は笑っていなかった。
「だっ誰があんたなんかと!」
魔女は振り返りつつも、次の隙を伺うが
エフェラルの指先は薄い青の光を集めていた。
「あまり暴れられると、こちらも困る ー
そういうのは好みじゃないのでね。」
光は魔女に向かって投げられた。
魔女は両手をあげて
顔を覆ったが光は魔女を包み込む。
そのまま、魔女は動けなくなった。
「?!」
「意識まで失われると、
それは味気ないものだろう?ー
体の機能だけ、縛らせてもらう。」
エフェラルは動けない魔女の額に張り付いた前髪をどかし
鼻歌を歌いながら抱き上げた。
「後で、風呂に入れてやろう。
新しいローブと・・・
両手両足の怪我も治してやる。」
「(声も出ない?!
ーこれ、本格的にまずいんじゃ)」
魔女の瞳に恐怖と狼狽がありありと浮かんだ。
「(どうしよう ー!
なんか、何を、ど、どうすれば)」
気付けばまた、あの机の上に寝かせられた。
先ほどと違う点を申し上げるならー、
エフェラルは完全に魔女の両足に割っていた。
Leg Opner
エフェラルの手が魔女の膝を撫でる。
「あなたを追い続けて
トゥリウスなんかの尻拭いをさせられて
この塔に居続けたが、・・・
まあ、悪くない。」
その手が、魔女の前かけをたくし上げた。
いやん、おパンツとか丸見えちゃう!!!
「〜〜〜っっっっ!!!!」
絶望感と心拍数が比例して、魔女の体を駆け巡る。
理不尽だとか
不条理だとか
そんなことを考える余裕もない。
だが無意識に叫んでいた。
「ラーーースぅぅッッ〜〜〜ぅ
たあああすけええてえええっっっ!!!」
っドゴォッッッーッッン!!
「ッ魔女ぉっっ!!!!」
その聞き覚えのある声の主が
煙とあふれる涙で見えなかった。
*
アルファイ情報:い、いけるのか?
このメンバーで・・・
アグリッパ情報:いや〜、嬉しいなあ!
アルファイルス君と一緒なら
どこでもいける気がする!
ミケラ情報:あっあの兄やんが
勇者にきゅうりあげとる!
明日は大荒れやで。
ジョセフィーヌ情報:魔女の危機を察知。
急げ〜〜。




